四章 十九話 ココちゃんの一歩
自分の考えをまとめた私は、
まだ空を見上げていた。
扉の開く音が聞こえてその方向へ目を向けると、
メリイが出てきた。
「なんだミノリ。珍しく早いな。」
「メリイこそ。いつもこんなに早いのか?」
「そうだな。ソエルとルカが起きている時は、
出来るだけ傍にいたいからな。
朝は早く起きて少しでも腕を磨きたいからな。」
「そうか…流石だなメリイ。尊敬するよ。」
「どうした?珍しいな。」
「純粋な感想だよ。」
「そうか……では私は少し走ってくる。」
「ああ。いってらっしゃい。」
そう言って送り出そうとしたけど、
メリイはすぐに走り去らずに、声をかけてきた。
「なあ、ココは大丈夫だろうか?」
「絶望的ではないと思う。」
「お前がそういうなら、そうなんだろうな。」
「どうなんだろうな。私自身専門家ではないから、
間違えているかもしれない。
それでも少しでも早く治るように、
努力してみせるよ。
ルカとソエルと一緒に遊ぶ姿が見たいから。」
「お前らしいな。その分なら大丈夫そうだ。
じゃあ行ってくる。」
そう言ってものすごい速さでこの場を去った。
「ほんと、どんな身体能力なんだか…」
誰に聞かせるでもなくそう呟いていた。
メリイの走り去った後も、
私はしばらくその場で空を見上げていた……
―――
朝、皆が起きてきて朝食の準備をしている頃に、
ココちゃんに話しかけてみることにした。
「ココちゃん。寒くなかった?」
フルフル……
無言で首を振っている。
「そうか。よかった。
寒い時はちゃんと言ってね。」
コクン…と無言で首を縦に振った。
言葉で答えないココちゃんに、
カカさんが何か言おうとするのを、手で静止して止めた。
「初めて会った人の家で過ごすから不安だよね。
ココちゃんは不安かもしれないけど、
私たちは皆、ココちゃんの味方だから。
何かあったら遠慮なく言うんだよ?」
笑顔でそう語りかけた。
ココ「……うん……」
と確かに返事をしてくれた。
ソエル「ココ。何か好きなことある?
私はねー、マローネねえと一緒に木でね、
ものつくりするのが大好きなんだよ!」
ルカ「ボクはねー、おとうさんとお仕事するのが好き。
あと、おにいちゃんと一緒に何か作るのも楽しかった。」
ココ「……分からない。」
ココのその言葉を聞いて無言になってしまうソエルとルカ。
ルカ「じゃあボクたちと一緒に色々やろう。
きっと楽しい事見つかるよ!」
ソエル「うん!私も一緒に探す。」
ココ「ダメ…武具作らないと…でも……」
その一言を聞いて確信した。
間違いない、ココちゃんは親の期待に応えようとして、
無理をしていたんだ…
こんな状況でも武具を作ろうとするなんて…
私は胸が締め付けられるような気がした。
ソエル「それは駄目だよ。
この村では武具は作れないもん。
それに武具じゃなくても作るものはたくさんあるんだよ?」
ココ「……それじゃあ父の……」
そういって黙ってしまった。
ソエル「大丈夫!武具だけが作るものじゃないんだよ。
武具は確かに大事なものだけど、
他にももっと大事な物もあるんだよ!」
ココ「…私は知らない……」
ソエル「私が教えてあげる。」
ルカ「ボクも教えるよ。一緒に作ればいいんだよ!」
その言葉に返事は返ってこなかった。
ルカとソエルはそれでも一生懸命に話しかけていた。
三十分ほど時間がたつと、
マローネさんが食事の準備を終え、
食卓に食事を並べてくれた。
その直後、メリイも戻ってきたので、
ココちゃんとカカさんも一緒に食事をとり、
今日の相談をする事にした。
「朝方は少し雪が降ってましたけど、
今日はどうしましょうか?」
メリイ「雪はもう降っていなかったぞ。
積もってもいなかったし、
ため池を掘るなら出来ると思うぞ。」
と教えてくれた。
その言葉を聞いて、
「カカさん。今私たちは村のため池を作るために、
穴を掘っています。
もしカカさんとココちゃんも良ければ、
一緒に行きますか?」
カカ「ココ…ここはどうする?」
ココ「母…任せる……」
そう呟いた……
私はまた胸が締め付けられる思いがした。
それでもココちゃんの為に声をかける。
「外は寒いかもしれないけど、
ココちゃんが嫌じゃなければ、皆で一緒に外に出てみない?
穴を掘れとは言わないよ。
ただ見てるだけでもいいし、話してくれても良いんだ。
ココちゃんが来てくれたらルカとソエルも、
きっと嬉しいと思うから。」
そう言うとルカとソエルも「「うん」」と
元気に返事をしてくれた。
ココ「…行く……」
小声だけど確かにそう言ってくれた。
サウロ「それじゃあ、
今日はカカさんとココちゃんも一緒に作業に行くか。
でもココちゃん、無理は禁物だぞ?
どうしても嫌だったらすぐに言うんだ。
良いね?」
ココは無言でうなずいた。
「それじゃあ今日は皆でため池の場所に行きましょうか。」
そう言って皆で出かけることになった。




