四章 八話 外伝 トトの一週間(1)
トト視点
西へ三十分ほど歩けば川があり、
魚も取れる静かな良い川じゃった。
そこから上流へ一時間ほど進むと採石場があり、
壁には横紋の断層が走っとった。
川底の砂利にはごく少量の鉄が混じっとるが、
村の鉄を賄うほどではない。
さらに三十分ほど上流へ進むと滝があり、
空気が澄んでいて気持ちの良い場所じゃった。
(ここの空気はココが元気になったら
一緒に感じたいのう……)
このあたりの地形を見て、
ワシの工房は採石場近くに作ろうかと思うた。
「さて戻ろうかの……」
(うまい具合に北から南へと流れておった。
これなら水路を引けばうまく流れてくれそうじゃ。)
石工に戻り、村の外にワシの作業場を作ることを伝えた。
ロクは「村の事を気にしすぎだ」と言ったが、
ワシが嫌だと説明すると、しぶしぶ納得した。
翌日、ロクと一緒に村長の元へ行き、
本格的に木材を集めてもらう様に伝えると、
喜んで木工場へ話をすると言った。
「では、すまんがよろしく頼む。」
村長「こちらこそ、村の事を思っていただき感謝します。」
「ワシと話す時は気軽にしていいぞ?
ロクもじゃ。
ワシの立場はメルカティスだけのものじゃ。
この村では新参者。
そう気を使う必要はないぞ?」
村長「いや、そう言うわけには…
いや、わかった。
今後村人と話すようにしようかの。」
ロク「俺もそうさせてもらう。」
「そうしてくれ。
その方がワシも気が楽で良いしのう。
それに同じ年長者としても、
村長とは仲良うしたい。
もちろんロクも。」
村長「それは嬉しいのう。
ワシら位の歳の者は畑をやっとる夫婦くらいじゃ。
トトさんが村に来てくれてワシは嬉しいぞ。」
ロク「村人皆にも伝えておく。
トトさんはかしこまられるのは苦手だとな。」
「それは助かるのう。
これで気楽に村を歩けるわい。」
ロク「そりゃよかった。」
村長とロクとワシは「わはははは」「がはははは」と
三人で笑いあっていた。
しばらく話した後は子供たちの話になった。
村長「それでのう、ルカとソエルが
二人で作ったという台車を引いてきてのう。
嬉しそうに冬服を乗せて運んだんじゃよ。
いやー可愛かったのう。
ソエルはワシの事をじーじと呼んでくれての。
その言葉でソエルもワシの孫になった。」
「それは良いのう。
ワシはトトじいと呼んでくれたぞ?
ルカも愛いがソエルもまた愛い。
この村の子はみなそうなのかのう?」
村長「皆、聞き分けが良いし、
よく働いてくれる。
本当にいい子共たちばかりじゃよ。」
「他の子と話すのも楽しみじゃのう。
ココが治った後もこれなら安心じゃ。」
村長「早く良くなると良いのう、トトさん。」
「そうじゃのう。
昔は憂い子じゃったんじゃが、
最近いたずらばかりじゃった。」
ロク「子供は悪戯するのは良くあるだろう。」
「そうなんじゃが…」
村長「今子供の事を心配してもどうしようもない。
その子が村に到着したらワシも見てみる。
ワシは薬師のスキルを持っとる。
何か役に立てそうならすぐにでも動くから安心するんじゃ。
子供が村に着くまでは、
少し息抜きもかねてやりたい事でもやっとればいい。
ワシはワシで出来るだけ薬草を集めておく。」
「感謝する。
ではワシは暫くやる事も無い。
そこでのう。
村を見て回って気が付いたことがあった。
畑と川の距離が少し空いていて
水を撒くのも大変じゃろう?
そこでじゃ、今冬は鉄も打てんしやる事もない。
ココが来るまで何もせんのは性に合わんのでな。
水路を作ろうと思うとる。」
村長「水路?」
「そうじゃ。
西側にある畑を見た。
立派な畑じゃった。
じゃが水路が見えなんだ。」
村長「この村に土スキルや、
土魔術を使えるものがおらんでのう。
大変なんじゃが水は川から運んでおる。」
「そうじゃろう?
そこでじゃ。
木材を集めてもらう代わりに、
ワシが水路を引こうと思っとる。」
村長「そこまでしてもらうのは申し訳ない。」
「気にするな。
ワシがやりたいんじゃ。
それに水路が出来れば人も楽になろう。
ワシも水を気楽に使えるのは便利になるしのう。」
村長「わかった。
では村の者にも声をかけて
手のすいたものは手を貸すように伝えておこう。
ロクもよろしく頼むぞ。」
ロク「任せておいてくれ。」
「それは助かる。
ではよろしく頼む。」
こうして村に引く水路計画が動き出した。




