四章 六話 快諾
ソエルの言葉で決意をした私は
トトさんの子供を受け入れる決意を新たに固めた。
「ではトトさんのお子さんを家で預かる事を
お伝えしても良いですか?」
サウロ「おお、いいぞ。
お前の思うとおりにやれ。
お前の子供を救おうとする気持ちは分かる。
俺たちも同じだからな。」
マローネさんも微笑んで頷いている。
「では私はこれからトトさんのもとへ向かって
この事を伝えてきます。」
そして出かける前にソエルに向き直り、
「ソエル行ってくるね。
トトさんのお子さんが来るまで、
しばらくかかると思うけど、
私が戻ったらその子の部屋の準備をしようね。」
ソエルは「うん!」と元気に返事をしてくれた。
「では改めて…行ってきます。」
サウロ「俺たちは作業に戻っているから、
ゆっくり話を詰めてきな。」
「わかりました。」
暫く歩いた後足を止め空を仰いだ。
さっきまでは色など見る余裕すらなかったのに、
今は寒空でも青く澄んだ綺麗な色を見る事が出来た。
青空を見上げ目を閉じる…
私の悩みはソエルのやさしさによって解消された。
私は家族みんなに感謝して空を見上げた。
家族に助けて貰えました。
そうして再び歩き出しまずは石工場へ向かう事にした。
日が昇ったからか
少し暖かい日差しがある為か、
子供が走り回っていた。
私に元気に挨拶をして広場に向かって行く子供達。
手には竹トンボや絵文字板を持っている子供もいた。
(外で絵文字板を遊ぶためのテーブルを作るのも面白そうだ。
ソエルに絵文字板を入れるための箱を、
作ってもらうのも良いかも。
大きさも統一してシエの絵文字板を正式にする。)
子供たちが遊ぶ姿を想像して少し先が楽しみになった。
あの中にトトさんの子供も中に入れると良いな。
そう思っているとふと疑問に思った。
(トトさんの子供って歳はいくつ何だろう…
トトさんの年齢は三百を超えてると、
言ってたから知っているけど、
子供の歳は聞いていなかったな…)
そう考えながら歩いていると石工へ着いた。
中に入り作業場を覗くと
トトさんとロクさんが、
何やら角材を前にして話し込んでいた。
トト「カマや包丁などは刃の角度は二回に分けるのが良いんじゃ。
逆にオノやクワなどは角度を複数回つけると、
刃が丈夫になり長持ちしやすい。
包丁などは逆で一回や二回にすることで切れ味が増すんじゃよ。」
ロク「刃物は角度でそんなに変わるもんなのか。
勉強になる。
流石だ、トトさん。」
トト「なに、ワシは長い事鉄を扱っておった。
お前はこれからだ。
それに技術は持っている。
すぐに角度のコツも覚えるじゃろう」
ロク「そりゃたのしみだ。
おかあがよろこぶぞ。」
トト「良い事じゃ…っておお、ミノリ。
今は刃の角度を教えとったところじゃ。」
「こんにちは。トトさん、ロクさん。
久しぶりに聞きましたね。
包丁の角度を二回ですか?
私もよくそういう研ぎ方をしていましたよ。」
トト「なんじゃと!?
少し詳しく教えんか。」
「えっと、あくまで私の研ぎ方ですけど、
私の片刃の角度の付け方なんですが、
右側は二段で研いで
左側は一段のごく薄く角度をつけてましたね。」
トト「お前…その研ぎ方は、
一部の料理人のやる研ぎ方じゃぞ?」
「そうなのですか?」
トト「それすら知らんか…」
ロク「ミノリお前包丁を研げるのか?」
「えっと…まあ、はい。
国では料理の仕事をしていました。
あと大工の真似事も少々…」
トト「どんな職を経験しとるんじゃお前は…」
「私の事は良いんですよ。
それより真面目なお話があります。」
トト「……そうか分かった。
すまんがロクよ。
少しミノリと離れる。」
ロク「わかった。また教えてくれ。
ミノリもまたな。」
話の途中だったのに快諾してくれた。
トト「では昨日の場所にでも行こうかの。」
そう言って先を歩いて行く。
私もその後を追いかけて歩いた。
門を出て少し歩き、
開けた場所で話をする。
トト「それで家での話はどうなった?」
「はい。家族は皆快諾してくれました。
私の家で預かることになりました。」
トト「家じゃと?
それはルカやソエルの居る家か?
ソエルはどうするんじゃ?」
「それなんですが…」
私はソエルとの事をトトさんに伝えた。
トト「そうか…
あの小さな子がワシの子の為にの…
有難い事じゃ……」
「ソエルのおかげで私の懸念はなくなりました。
私は貴方の子供を、ココさんでしたか。
その子を預かることにしました。」
トト「助かるのう…
有難い事じゃ…お前の家族に感謝を。」
「お伝えしておきます。
それで私はどうすれば良いのでしょうか?
まだトトさんのお子さんの事は名前しか知らないです。」
トト「おおそうじゃったか?
ココの歳は十三、女じゃ。」
「ドワーフのお子さんの事は何も分からないのですが、
何か食べたらまずいものなどありますか?」
トト「なにを心配しとるのか知らんが、
何を食べても平気のはずじゃ。
好き嫌いはない子じゃ。」
「そうですか。
ココさんの事を、このままお聞きしても?」
トト「もちろん構わんぞ。
何でも答えてやるわい。」
「ありがとうございます。
ココさんは十三という事ですが
ドワーフの成長速度ってどうなっているのでしょうか?」
トト「変な事を聞くのう。
成長の仕方は、人とそう変わらんはずじゃ。
ただ、身長は人ほど伸びんの。
ココはワシより少し低い位じゃ。
ワシらは元は洞窟暮らしの長い種族じゃ。
そういう生き物になっておる。
逆にエルフ等は細くて長いのう…」
「そうですか…
何か種族的に、口にしてはいけないものや、
やってはいけない事などはありませんか?」
トト「ないのう。
人は酒がどうこうと、うるさいのも多いがの。
ワシらはそんな小難しい事は気にせん。」
「分かりました。
では人の子供と同じように接しても、
問題ないんですね?」
トト「そうじゃ。
その辺はお前さんに任せる。
ココを助けてやってくれ。」
そういって頭を下げてきた。
「頭を上げて下さい。
この村の為に来てくれた人の子供が困っているんです。
助けるために協力をするのは当たり前なんですから。」
トト「そう言ってくれて助かる。」
「では私の方で預かる事はトトさんも
了承して頂けるのですね?」
トト「そうじゃ。
宜しく頼む。」
「ええ引き受けます。
それでココさんはいつ頃来られるのですか?」
トト「それはじゃな、
ガラムが明日村を立つはずじゃ。
メルカティスで数日過ごし、
北にある国ゼニスに戻るはずじゃ。
その時にお前さんに渡す予定の物を、
運ぶと言うとった。
その馬車に乗せてもらおうかと思っとる。」
「分かりました。
どれくらいで到着するのでしょうか?」
トト「ワシが来るときにかかったのは
十三日じゃった。
往復を考えると一か月位かのう。
それ位で戻るはずじゃ。」
「少し日数的には余裕がありますね。
では受け入れる場所の準備をしつつ、
ココさんをお待ちしてます。」
トト「すまんのう…
ワシはこのままこの村に残る。
ワシに出来る事があればゆうてくれ。
ココのこと宜しく頼む。」
「精一杯やってみます。」
そういって握手を交わした。




