四章 三話 飛人
「飛人ですか…」
トト「外の世界からこの世界へ跳び込んだ人の事じゃ」
「……そうですか」
私は少し考え込んだ。
そんな言葉がこの世界にあること自体、知らなかった。
「…トトさん。
私はこの事を誰にも言っていません。
その上で聞きたいですか?」
トト「いや、話さんでもいいぞ。
確認しただけじゃ。
それにワシには正直どうでも良い。
ココを救えるのならの…」
「ココですか…
それはトトさんのお子さんの事ですか?」
トト「そうじゃワシの一番下の子じゃ。
病にかかり治癒術師に病気は直してもらったが、
心が死んだような状況じゃ……
一応メシは食うてくれるし、話もする。
じゃがそれだけじゃ。
ワシは子が好きじゃ。
それなのにワシの子が…」
その言葉を聞いて私は決意する。
「分かりました。
ただそれには私の家族の力添えが必要になります。
その上で質問があります。
会ったばかりの私を信じて預ける事が出来ますか?」
トト「愚問じゃ。
おぬしの形は少し見ただけですぐにわかるわ。
汚い人はどんなに着飾っても分かる。
お前にはそれがないからのう。
だてに三百は生きとらんわ。」
「三百!?ドワーフはそんなに長命なのですか?」
トト「その常識すら知らんとはの…
ワシらドワーフは平均四百、長いと五百は生きるぞ。
しかしこれで確定じゃな……
おぬしが何者なのかは分かった。
……ならば飛人のお前に頼みがある。
ワシの子を治してくれんかの?」
「直せるか正直分かりません。
ですが預かる事は出来ます。
そして私に出来る限りの事はします。
この事を家族にも相談します。
ただ私にも少し事情があるんです。」
トト「事情?」
「はい……
子供の感受性は…相手の気持ちを感じ取る力と言いますか、
そういう力が非常に優れています。
その為に悪い方向へ引っ張られることもあるんです。
ソエルは治ったばかりです。
その懸念がある以上、簡単には受けることも出来ないのです。
ただ…私自身知ってしまった以上そのままにはしておけないです。
私が家を出てその子と一緒に暮らすことも考えます。」
トト「な!?家を出るだと?」
「ええ。それ位の覚悟は持って面倒を見ますよ。
子供は世界の宝です。
私は出来る範囲でやれることはやるつもりですよ。
その上で確認です。
必ず治るとは言えません。
それでも預けるおつもりですか?」
トト「今の話を聞いてワシの心も決まりじゃ。
お前を信じる。
宜しく頼む……」
「分かりました。
私の方でも考えてみます。」
トト「一つワシからの提案じゃ。
聞いたうえでどうするかはお前がきめるんじゃ。
ガラムにお前の事情を包み隠さずに話し
お前の側に引き込むんじゃ。
ワシと同じで理解し協力してくれると思うぞ?
遅かれ早かれお前が子を助け続けるなら、
いずれ世にお前の事は広まる。
ならその前に壁を作るんじゃよ。」
「……それを聞くとガラムさんとトトさんを
都合のいいように使っているようで、
良い気がしないのですが…」
トト「お互い様じゃのう。
ワシは子を治すためにお前を利用する。
ガラムは商会を大きくするために利用する。
お前はワシらを外からの壁として利用する。
お互い様じゃ。」
「わかりました。
その事も考えておきます。
どんな答えが出たとしても、
ココさんは私が責任をもって預かりますよ。」
トト「感謝じゃ…」
「では私はこれで失礼しますね。」
トト「わしはもう少しここで風にでも当たっていようかの。」
私は無言でうなずいて門に向かって歩き出した。
トトさんのお子さんを預かる。
私には荷が重いかもしれない。
でも知ってしまった以上出来る限りは…
そう決意をして家への道を進んだ。
― トト視点
ワシはこの村に来てその雰囲気をすぐに気に入った。
静かな気配にうまい空気。
子の楽しそうな声にのどかな人の雰囲気。
日が明るいうちは子の楽しそうな声が響き渡る。
人は子を常に見守り続け子は元気に走り回る。
みな町の人ほど裕福とはいえん。
が、みな他の国でも見ないほど目が輝き幸せそうじゃ。
ワシの若い頃、初めて旅に出、
すぐについた村の温かい雰囲気。
一目で気に入った記憶に残る良い村と同じじゃ。
そう思えるほど、この村は良い村じゃ。
ココの為に来たが
ワシは生涯の居場所を見つけたのかもしれんのう…
そうなるとワシの活動は少しこの村の雰囲気を壊すかもしれん。
石の音は自然の音じゃ。
じゃが鉄の音は自然ではありえん音…
鉄の音でこの村の雰囲気を壊したくないのう…
少し考えてみるとするかの…
それにしてもミノリという男。
考え方がどの種族ともおうとらん。
世界の常識であるドワーフが、
長命種だという事も知らん。
それなのにどの種族より子に詳しい。
物作りの発想も持ち合わせとる…
世界を跳び越えて訪れた存在。
不思議じゃのう、飛人というのは…
エルフが羨ましくなるのう……




