三章 二十一話 臨時便
日が落ちるのが早くなってきた。
私たちはメイズを抜いた後の畑を整地して、
他の畑同様に冬は寝かせることにした。
そしていつもの日常が続いた。
メイズを抜いて八日、
シエの村ののどかな雰囲気が少し、
慌ただしくなっていた。
ガラムさんが直接臨時便を率いて戻ってきたのだ。
私たちは作業終わりにその話を聞いて
翌朝は休んで、
サウロ家皆で集会所へ向かう事になった。
そして朝、
サウロ家皆で向かうという話だったけど、
サウロさんが
「今回の臨時便はミノリとルカとソエルの仕事だと思う。
だからお前たちだけで行ってきてくれ。
俺たちはいつもの仕事をしながら楽しみにしておく。
正直俺は交渉みたいなものは苦手なんだ。」
マローネ「ごめんね。
良く考えてみたら、
折角のルカとソエルの頑張りが認められたんだもの。
私たちは仕事をしながらのんびり待つことにするわ。」
ルカとソエルを笑顔で見ながら、そう言ってきた。
ルカは少し寂しそうにしながら、
「一緒に行きたかったけど、
お父さんとお母さんがそういうならわかった。
ボクとソエルで頑張ってくる!」
と元気に返事をしていた。
ソエル「うん。
私たちだけでも大丈夫。
頑張ってくるね。」
と笑顔でサウロさんマローネさんに答えていた。
「分かりました。
では私とルカとソエルとメリイで
向かう事にします。」
話しをした後いつもより早めの朝食をとり
集会所へと向かった。
集会所の前に付くと驚いた。
馬車が三台止まっていた。
臨時便という事で一台で来るものと思っていたからだ。
そして今まで見たことのない人物が居る事に気が付いた。
ドワーフだ…
小さい体だけど
どっしりと大地に根を張ったような
そんな感覚を受けるどっしりとした体。
小さいのにどこか威圧感があった…
朝早くから子供連れが来たのが不思議だったのか、
ドワーフは鋭い視線を向けてきた。
けれど悪意は感じなかったので、
私は軽く会釈をして集会所へ入った。
中に入ると受付にヨハンさんが居た。
ヨハンさんは私たちに気が付くと、
歩み寄ってきて丁寧に挨拶をしてくれる。
ヨハン「朝早くにご足労頂き、
ありがとうございます。
奥でガラム様がお待ちです。
ご案内いたします。」
丁寧に迎えてくれた。
私は「お願いします。」と伝えると
ルカとソエルも「「お願いします。」」と
元気に答えた。
その子供たちを見て笑顔になり、
二人にも大人と同じように手を差し向け
「ではこちらです。」
と大人と同じような対応を見せてくれた。
中に入るとガラムさんが書類を前に座っていて
セリアさんとアニスさんと話をしていた。
私たちを見たガラムさんが声をかけてくれる。
ガラム「お久しぶりです、ミノリさん。
ルカくん。ソエルちゃん。メリイさん。」
とそれぞれの名前を丁寧に呼んで頭を下げた。
さらに続ける。
ガラム「今回は大事な契約も一緒にしてしまおうと思い、
私自身が来てしまいました。
シエの空気が好きなのもあるんですけどね。」
そう言い凄くいい笑顔を見せて話した。
「わざわざ、ありがとうございます。」
と私が言うとルカとソエルもお礼を言っていた。
ガラム「ではお座りください。
契約書の確認をして頂き、
署名をお願いします。
それではセリアさん、お願いします。」
そう言って契約書を差し出してきた。
セリア「分かりました。
ではミノリさん。
契約書の確認をお願いしますね。
私の方でも確認をしましたので、
問題ないと判断しています。
目を通して何か気になればおっしゃって下さい。」
そう言って契約書を読み上げてくれる。
――「絵文字板」および「竹とんぼ」について、
当商会は独占的な製作・販売権を有する。
ただし、シエ村内に限り、自由に製作し、
村内交易品として使用できるものとする。
納品
シエ村は当商会が指定する数量・品質に従い、
絵文字板および竹とんぼを製作し納品する。
支払い内容
当商会はシエ村に対し、以下の物品を対価として提供する。
冬服(村全体分)
生活用品
食料
その他、シエ村が必要とする物品
継続取引
本契約は継続的な交易を前提とし、
数量・対価は交易ごとに協議して決定する。
二枚目の契約書
ソエル印および製作した協力に対する返礼契約書
トルヴェール商会/ソエル
評価内容
当商会はソエルの製作した「ソエル印」および
絵文字板制作への協力を高く評価し、
その働きに対して返礼品を提供するものとする。
返礼品
当商会はソエルに対し、返礼品を提供する。
制作道具
これはソエル印を考案した功績への返礼品として
ソエル個人への提供とする
以上です。
前回の話でソエルの事を評価していたのは知ってたけど、
個人的に返礼品を出すほど認めてくれたんだ…
私はその事実がすごくうれしくて
つい横にいるソエルの頭を撫でていた。
ソエルも嬉しそうにその話を聞いて
嬉しそうだった。
なによりソエルの後ろに控えているメリイが
人前だというのに嬉しそうな感情を
隠すことなく見せているのも印象に残った。
「前回同様、シエ村の事を考えて頂き、
また子供たちの事も同じように丁寧に対応して頂き、
ありがとうございます。」
ガラム「いえいえ、
私共にも素晴らしい成果が見込めますし、
既にその成果も出ています。
お気になさらずに。
あと今回新しい冬服も準備しておりますので、
此方はセリアさんとアニスさんにお預けしておきますね。
なにやらすでに冬服はご準備為されているようですし…」
そう言って私達を見たガラムさんが話してくれた。
そして、ルカとソエルの頭を特に注視している。
私とメリイは、被っていないけど、
ルカとソエルはそのままだったからな…
ガラム「ところで、ルカ君とソエルちゃんの
被っている帽子なのですが、
かわいらしい耳が付いていますね。
これはどなたが加工をなさったのですか?」
「私ですね。
ルカが普通の帽子だと耳が押さえられて
むずむずするそうで…
私たちの帽子にも似たようなものが付いていますよ。」
と私が上着の内側に入れておいた帽子を見せると
興味深そうに眺めていた。
それを見たアニスさんとメリアさんも同様に
興味深そうにしている。
とくにアニスさんは少し怒ったような感じがした…
それを見て理解した。
これまた何か言われるなと…
契約を終えた私たちは、
セリアさんとアニスさんも一緒に部屋を出た。
部屋を出た後ルカが嬉しそうにソエルに話しかけた。
ルカ「凄いよソエル。
ソエルの印が認められて
道具貰っちゃうんだもん。」
ソエル「ありがとう。
私の印が認められてすごくうれしい!」
と上機嫌で話し出した。
ルカ「すごいなー。」
ルカは本当に驚いてる様子で、
何度も驚きを声に出していた。
外に出ると馬車はまだ止まっていたけど、
ドワーフの姿は見えなくなっていた。
私は懐から帽子を出してかぶった。
そこまで寒いとは感じないけど
ソエルとルカが嬉しそうにするから
私は外では被るようにしているからだ。
それを無言で見ていたアニスさんが、
声をかけてきた。
アニス「それで…
その帽子はどうしたのですか?」
笑顔だけど少し顔が怖い……
「さきほど話をした通りですね。
ルカの耳が窮屈そうだったので作りました。」
アニス「それが何故
ミノリさんやメリイさんまで耳付き帽子を…
ってソエルちゃんですか。」
ソエルの笑顔を見て理解したようだ。
「そうですね。
最初はソエルが欲しがったんですけど、
どうせなら皆同じが良いかなと思って。」
アニス「相変わらずですか…
その帽子も次の交易品になりそうなら、
交渉をするお気持ちはありますか?」
「ルカとソエルがいいなら私は構いません。
私はルカとソエルの為に作りましたけど、
他の人の為に作るのは、
毎日の作業が遅れる事にもなりますので、
私が作る余裕はないです。
私が作るのはあくまで我が家だけの物です。
交易品にするのなら、全部お任せしますよ。
裁縫師さんなら作れるでしょうし。
裁縫師さんの負担にならなければですけど…」
アニス「ありがとうございます。
正直裁縫師のお宅は、
布などの入手が限られている状況なので、
ほんの少し手を加えるだけで価値が上がる
交易品が増えるのは寧ろ助かると思います。」
「それなら、私の方は問題はないです。
ルカ、ソエルはどう思う?
もし二人が良いなら他の家に回して
作っても良いかな?」
ルカ「ミミ帽子が増えるの?
ボクは良いよ!」
ソエル「私も良いよ。
可愛い帽子は皆欲しがると思うから、
他の子供達も喜んでくれるなら私は何でもいい。」
アニス「ありがとう。
子供達も喜ぶと思うわよ。
それじゃあ、ミミ帽子も私の方で、
話を進めておくわね。
何か欲しいものとかある?」
ソエル「ルカは何かほしいものある?」
ルカ「うーん。
欲しいもの全部手に入っちゃったよ?」
ソエル「だよね。どうしようか?」
ルカ「それじゃあ
あつい時用の服も新しくしてもらう?」
ソエル「良いね。
寒い時のお洋服を新しくして、
暑い時の服も新しくしてもらおうよ!
あとは村で他にも欲しいものとか?」
ルカ「うん、そうしよう。
アニスさん、良いですか?」
と頭をコテンと傾けながら
上目遣いに聞いている。
アニスさんはその可愛い様子に笑顔になりながら
「ええ、もちろんよ。
それじゃあ夏服を条件にしましょうか。
あとは村で必要な物で良いのね?」
ルカとソエルは笑顔で「「はい」」と
声が揃って可愛い返事をしていた。
メリイ「ミノリ、ソエルもルカも立派だな。
村の事を第一に考えてるぞ?」
「そうだな。
凄いよ、二人とも…」
セリアさんも無言でルカとソエルの様子を伺いながら、
感心したような顔をして頷いていた。
アニス「それじゃあセリア。
帽子の事も許可が貰えたし、
もう一度ガラムさんの所へ戻りましょうか。
交渉が成立したら、
村長への報告をお願いね。」
セリア「ええ、分かったわ。
また村長のお仕事が増えそうね。」
二人は私達へ「それじゃあまたね。」と声をかけて
にこやかに中へ戻って行った。
中に入っていくのを確認した後
思ったより早く終わったので、
それぞれの作業に戻る事にした。
私たちはソエルをマローネさんの元へ
送り届けてから、
ルカとメリイと一緒に森方へ向かった。
そして森の入り口で、
声をかけられたのだった……




