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三章 十六話 もこもこ

ルカとソエルの台車に服を乗せて、

その台車を今はソエルがニコニコで引いている。

服だけじゃなく、箱もそのままなので、

結構重いと思うんだけど、

家族の服を運んでいるのが嬉しいのか、

嫌な顔一つせず楽しそうに引いている。


子供たちが台車を引いているのに、

私たちが後ろから何も持たずに歩いているのを見て

最初は顔をしかめていた人も居たけど、

ルカとソエルの楽しそうな笑顔と挨拶を聞いて、

子供の望んでいることだと理解をしてくれた様子だった。

その後は笑顔で挨拶を返してくれる。


家の近くまで来ると、

台車を引いていたルカが「ソエル最後は一緒にはこぼ!」と

ソエルに声をかけていた。


その言葉を聞いて花が咲いたような満面の笑顔を浮かべて

「うん、一緒にはこぶー。最後がいっしょ!」

と二人で引いて家へと到着した。


大きい箱は流石に危ないので私が。

小さい方はルカとソエルが一個づつ家へと運び入れた。

台車は入口のその側すぐ横に止められた。


ルカ「おにいちゃん、ソエル。おつかれさま。

メリイおねえちゃんもありがとう。」


その言葉を聞きソエルも

「ミノリにい、メリイねえ、ありがとう。」

と可愛いお礼が返ってきた。


それを聞いたメリイはソエルの頭を撫でながら

「ソエルこそ、お疲れ様。

立派だったぞ」

とほめていた。


私は私で二人に声をかける。

「ルカ、ソエル。

二人ともありがとう。

お陰で服を安全に運べたよ。

凄く良い物を作ってくれたね。」

と伝えると二人は顔を見合わせて

大喜びしていた。


そしていよいよ冬服を見ることになる。

運んでいる時も常に箱が気になっていたソエルと、

その様子を嬉しそうに見ていたルカも、

箱を目の前にわくわくしている。


「それじゃあソエル、ルカ開けて貰えるかな?」

その言葉を聞いて二人とも元気に返事をして、

小さい方の箱をそれぞれゆっくりと開けていく。


小さい箱に入っていたのは、私とルカの服。

もう一つの小さい箱には、メリイとソエルの服が収められていた。


私とメリイの大きめの服の上には、

綺麗にたたまれたルカとソエルの小さな服が重ねられている。


私とルカの服は、少し緑を帯びた草原を思わせる色合い。

メリイとソエルの服は、白に夕陽の色を少し溶かしたような、

温かみのある色をしていた。


四人とも羊毛の厚手の帽子が添えられ、

防寒用の上着とズボンが二組ずつ用意されていた。

さらにソエルとメリイの箱には、

厚手のワンピースも丁寧にたたまれて入っていた。


「ルカ、私の部屋で試しに着て

大きさを確認してみようか。

ソエルとメリイも、

大きさを見るために一度着てみてくれるかな?」


その言葉を聞いたルカとソエルは「わーい」と

大喜び。

メリイも「わかった」

と言ってソエルの部屋に入って行った。


私とルカは私の部屋で試着をしている。

ルカの服はいつもとは違って足首まですっぽり入る、

長めのズボンに厚めの上着を着ていた。


ズボンにはちゃんと尻尾の穴も開けられている。

羊毛のあしらわれた上着に、

ピンと伸びた耳がよく似合っている。

これは可愛い…

と心で思ってつい見入ってしまった。


ルカはすんなり着替える事が出来たけど

私はこれほど重く硬い服は初めての経験で

着るまでに少し時間がかかった。


ルカが「固くて着にくいでしょ?」

と言ってくれてたのが、

分かってくれるんだなと思った。


最後に帽子を被ってみる。

思った以上に重い。

それに少し羊毛が肌に触れてくすぐったい。

(これは慣れるのに苦労するな)

と思いながらも着替えを終えた。


私が着るのに時間がかかっていると部屋の外から、

「ミノリにい、ルカー。

もうきがえたー?」と

元気な声が聞こえてくる。


私達も部屋をでて

「ちょうど終わったよ。

私が着なれてないから時間がかかったよ。」

と正直に伝えると


ソエルが「慣れるまで大変かもね。

私もメリイねえに手伝って貰わなかったら

着るの大変だったかも。」

とソエルも苦手だったようだ。


私はソエルとメリイを見て

「なるほど、こういう着方なんだね。」

と素直な言葉をかけた。


メリイ「ミノリ、防寒着は見たことなかったのか?」

と聞いてきたので、

私も素直に答える。


「私が住んでいた所は、

暖かい南国の様な場所だったから。

雪は降らないし、

防寒着というような分厚い服は

必要なかったんだ。」


ソエル「暖かいんだ。

行ってみたいなー。」


「その分夏の暑さは厳しいけどね。」


ルカ「ボクは暑いのは苦手だから

ミノリおにいちゃんと一緒が良いけど、

暑いところはちょっと…」

と帽子をいじりながら正直な事を話してくれた。


私は嬉しくなってルカの頭を撫でて、

「大丈夫だよ。

私の今の居る場所はここだから

他の国に行くつもりはないよ。」


その言葉を聞いたルカとソエルは

すごく嬉しそうにうなずいていた。


ルカは帽子をいじっているのを見て、

ソエルが「帽子ももこもこであったかくて良いよね。」

とルカに声をかけていた。

するとルカは「うん…あったかくて良いんだけど

耳がぺったんこでムズムズする。」

と帽子をいじりながらそう言っている。

ソエルが心配して「大丈夫?」と聞いていたけど、

ルカは「穴をあけると折角の帽子が駄目になっちゃうから」

と仕方がないというような感じでそう答えていた。


ソエル「でも可愛いよ。

帽子のはじっこのもこもこも、

服のもこもこもルカに似合ってて可愛い!」

その言葉を聞いてルカは帽子をいじりながらも

笑顔になって「ソエルも似合っててかわいい。」

と二人でほめあっていた。

(ほんと可愛いよな…)

と私自身もその言葉に同意していた。


ソエルは相当気に入ったようで

ルカの帽子や服をあっちこっち触りながら

かわいいなーとルカの服を触り

自分の同じ部分を比べるように交互に見ていた。


二人の様子をほほえましく眺めていると、

視線の先でメリイが何やら気に入らない様子。


「メリイ、何か気に入らないのか?」

と直接聞いてみると、

納得の良く言葉が返ってきた。


メリイ「いや可愛いとは思うし

ソエルとおそろいだ。

良いとは思うけど、

好みの問題じゃない。

これじゃ動けないんだ。

これなら寒さには確かに強そうだけど、

それは普通の人の場合だ。

冒険者用の防寒着とは少し違うんだよ。」


その言葉を聞いて納得してしまった。

何度か見たあの驚異的な速度で動くのに、

普通の防寒着では動きにくいのは納得だ。

そう考えこんでいると、

メリイがさらに言葉を続ける。


メリイ「まー気にするな。

普段着としては十分だし、

ソエルと同じ服だ。

喜んで着るよ。

ただ森とかに行く場合は、

外套だけになるかもしれないな。」

その言葉を聞いていたソエルは嬉しそうに

メリイの腕に抱き着いていた。

ただ少し不安になったのか、

「メリイねえは寒くない?」と聞いていたけど

メリイは笑顔で「大丈夫だよ」と答えていた。


折角新しい防寒着を準備してもらったのに、

このままでは勿体ないな。


(ルカの帽子とメリイの服。

もっとうまく出来ないかな……)

そう考えながら、

ソエルとメリイの仲睦まじい様子を

眺めていた。


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