三章 八話 四人そろって
種植えが終わり、
いよいよだと喜んでいた二人だった。
けれど、
すぐに遊ぼうとはしなかった。
「どうしたの?二人とも。
もう作業は終わったよ?」
ソエル「メリイねえがまだ帰ってきてない。」
ルカ「うん…メリイおねえちゃんも一緒に遊びたい。」
と意見が一致していた。
(メリイはしっかり子供たちの心を
捕まえていたんだな…)
二人の言葉を聞き私は嬉しくなった。
私は膝をつき、
ルカとソエルの目線に合わせて
覗き込むように声をかける。
「二人の言うとおりだね。
それじゃあもう少し待っていようか。
遊ぶのも楽しいけど、
三人で待ちながらの会話も楽しいからね。」
二人は元気に「「うん」」と声をそろえて
笑顔を見せてくれる。
「よしじゃあ少し待ってる間、
一緒に話をしながら絵でもかいてみようか?」
ルカ「絵を描くの?」
ソエル「あー、私も絵をかくー!」
「それじゃあちょっと待っててね。」
そう言って作業場へ行き、
棒を三本取ってきて
ルカとソエルに渡した。
「折角だから待っている間に
メイズがどんな形なのか
描いてみるね。」
そう伝えるとルカとソエルも、
好きな野菜を描くと言い出して、
三人並んで地面に絵を描いていた。
ルカとソエルはニンジンを描いているみたいだ。
本当に好きなんだな…
ルカは丁寧にゆっくり書いているけど、
ソエルはすいすいと棒を動かして、
あっという間にニンジンを描き上げていた。
(ほんと器用だな…)と思いながら、
私は子供に教える目的もあるので、
葉をはがす前の髭付きの絵と、
葉をむいた後の粒々の実をしっかり描いていく。
ソエルがニンジンの横に、
ダイコンとかキャベツのような
丸い野菜も描いていた。
しばらくすると、ルカも描き終わって、
次は何を書くのかな?と思っていると、
私の絵を眺めながら話しかけてくれる。
ルカ「ミノリおにいちゃん。
その髪みたいなのが生えているのがメイズ?」
そう聞いてくる。
それを聞いて一気に興味がわいたのか
ソエルも絵を描くのをやめて私の絵を見てくる。
ソエル「ほんとだ、髪がある!
おもしろーい!」
絵を見た二人は大はしゃぎした。
ルカとソエルが頭の髪を上に伸ばして
メイズの髭の真似をして、
話をしている所にメリイが戻ってきた。
メリイ「髪を引っ張って何をしているんだ?」
「「メイズのまね!」」
二人の声が重なる。
その言葉を聞いてキョトンとしたメリイが
「ミノリ…どういう事?」
と私に声をかけてくる。
「ああ。
それはメイズの実は
こういう形なんだよって
絵を描いて教えていたんだ。」
そう言って地面に描いた絵を見せた。
その絵を見て少し頬を引きつって
メリイ「メイズってこんな形なのか?
髪があるじゃないか。
こんな変な物がおいしいのか?」
と信じられないという様な顔で
私に聞いてきた。
「私の国では普通に食していたよ。
甘くておいしかった。
ただ同じ物とは言い切れないから、
正直私にも分からない。
でも試す価値があると思う。
メイズが私のいう物だったら、
捨てる場所がないほど万能な野菜なんだよ。」
メリイ「捨てる所がない?」
「そう。頭にある髭……じゃなくて髪は乾燥させれば
火を小さい枝に移しやすくなるし、
髪を多めに確保できれば、
家畜の寝床代わりになったりもする。
葉っぱは魚や肉を包み込んで
焼いたり蒸したりすると、
少しいい香りがするようになるし、
数が増えれば敷物にもなる。
真ん中にある芯は
スープの出汁にも使える。
乾燥させて粉にすれば肥料にもなるし
家畜の餌にもなる。」
メリイ「それは便利な野菜なんだな。」
「そうだな…
私の国でも捨てる所のない物と
重宝されていたよ。」
二人で真面目な話をしていたら
ルカとソエルが待ちきれなかったのか
話しかけてくる。
ルカ「ミノリおにいちゃん。
大人の話はおしまい。
四人一緒に遊ぶの!」
ソエル「そうだよ!
やっと揃ったんだから、
早く一緒に遊ぼうよ。」
いつもは聞き分けの良い子供が
遊びたい一心で声を上げるのって
何か本当に心を開いてくれている…
そんな気持ちで嬉しくなる。
「ごめんね、ルカ、ソエル。
それじゃあメリイも来たし、
一緒に竹とんぼを飛ばそうか。」
その言葉で一気に感情がはじけた二人は
お互いの手をもって飛び跳ねて喜んでいる。
その様子を見ていた私とメリイも、
笑顔になりそれぞれ手を繋いで
家に竹とんぼを取りに戻った。
子供たちと遊ぶために作っておいた
私とメリイの竹とんぼも準備して
四つの竹とんぼを交互に飛ばしていく。
ソエル「わー!
ルカの竹とんぼすっごいとんだー!」
青空に吸い込まれるように飛んでいった
ルカの竹とんぼを見てソエルが驚いていた。
ルカ「今度の羽は良く飛ぶようになったんだよ。
この間遊んでいたら羽が壊れちゃって、
作り直したんだ。
そしたら前より飛ぶようになってたよ。」
ソエル「良いなー。
私のももっと飛ばしたいなー。」
ルカ「それじゃあ今度休みの時に
一緒に作る?」
ソエル「良いの!?」
ルカ「もちろんだよ。
じゃあ今度のお休みは一緒に
竹とんぼの羽を作ろう。
おとうさんに言って、
良い木をもらおうよ。」
ソエル「でも良いのかな?
良い木は交換に使うでしょ?」
ルカ「大丈夫だよ。
それに何か作ると
端っこの方が余るし、
それを使えばいいんだよ!」
ソエル「それは分かるけど、
勝手に使うと怒られないかなー?
マローネねえに嫌われたくないよ。」
ルカ「おかあさんなら大丈夫だよ。」
メリイ「マローネが怒るわけないだろ。」
ルカとメリイのその言葉を聞いたソエルは、
私の方を見て声をかけてきた。
ソエル「ミノリにいも、
一緒に聞いてくれる?」
「もちろんだよ。」
その言葉でソエルは笑顔を
見せてくれた。
遊んでいるうちに元気を取り戻した
ソエルはメリイと手をつないで羽を追いかけたりと、
楽しそうに走り回っていた。
何度も竹とんぼを飛ばして、
走り回るルカとソエルの
笑い声が庭いっぱいに響いた。




