三章 三話 サウロ家の家庭菜園
拡張したばかりの畑を前に三人横並びで
楽しく話をしていたら、
メリイが帰ってきた。
メリイ「今、戻った。」
「おかえり、メリイ」
「おかえりなさい。メリイおねえちゃん」
「おかえりー。メリイねえ。」
三人の声が重なる。
メリイ「新しい場所だけじゃなく
収穫あとの畑も綺麗になったな。」
「ええ。これでいつでも種を植える事が出来る。」
メリイ「それで、何を植えるんだ?」
と私に聞いてきたけど、
私が答える前に
ソエルが言葉を返してくれる。
ソエル「ミノリにいのところ以外はまだ決めてない。
新しい種を植えるか、
マローネねえに相談して決めることにした。
ミノリにいが耕した場所はメイズを植えて
前からある場所は時期が分からないから、
聞いてから決めるんだって。」
メリイに会って嬉しさが抑えきれなかったのか、
私より先に全部説明してくれた。
メリイ「ミノリ……
お前、本当に知らなかったのか?」
「残念ながら。
まだまだ知らないことばかりだ。
鉄の件でも見通しの甘さを痛感したし。」
ルカ「大丈夫だよ。
ミノリおにいちゃんは優しいし
今のままがいいよ。」
ソエル「私も今のほうが良い。
一緒にいて楽しいから!」
メリイ「良かったな。
正直、お前が羨ましい。」
「子供に好かれるのは大歓迎なんだけどな。
でも失敗は反省して少しずつ直していかないと…
私の判断が子供を傷つけることになったら
一生後悔する…」
メリイ「そうだな……
まー今のお前なら大丈夫だろ?
お前が子供をどうこうするとは、
思えないからな。」
「そうだと良いな。」
自分の事を反省しつつ、
折角そろっているので、四人で会話を楽しむことにした。
楽しそうに話をしている内に
ルカとソエルの手にしている手袋を目にして、
メリイが聞いてくる。
メリイ「ソエル、その手袋はどうしたの?
嬉しそうに抱えているけど、
朝はなかったよね?」
ソエル「ミノリにいに、作ってもらった。」
そう言ってメリイに見せてくる。
メリイはその手袋を見て
「少し見せてほしい。」そう言って受け取っていた。
メリイ(以前見た、ルカとソエルの作業台もそうだったが、
本職のスキル持ちが作るような丈夫さと精密さ…
これで確信した。
ミノリは職人のスキルかそれに似たようなスキルを持っている。)
暫く無言で見つめた後ソエルに
「ありがとう。」そう言ってソエルに手袋を返していた。
メリイ「良い出来だ。
ソエルも良かったね。
可愛い印もついているし、
ルカのも可愛く作られている。」
ルカ「そうでしょー。
もうボクの宝物だよ。」
ソエル「私も!
大事にするんだー。」
メリイはその言葉に微笑みながら
「そうか」そう声をかけながらソエルを撫でていた。
「そういえば、メリイ。
サウロさんとマローネさんはどこに?
二人とも朝から姿が見えなかったけど
何か知っているか?」
メリイ「ああ。
あの二人はお前たちが畑の拡張をすると知って、
今日は森に土を取りに行ってるぞ。」
「土を?どういう事だろう…」
メリイ「なんでも普段踏みつぶされた地面では
栄養が足りなかったりして、
畑には適さないらしい。
だから栄養豊富な土を持ってきて、
混ぜると良いらしいんだ。
ミノリの事だから知らずに
拡張しようとしてるかもってな。」
「あーなるほど…
ここでも私の知識の偏りが出ていたか…」
と反省をしているとメリイが声をかけてくる。
メリイ「まー、そう悲観する事もない。
お前が子供の為に頑張っているのは知っているし、
事実、村の為になる物を作ってもいるんだ。
自信は持て。
でも慢心だけはするな。」
ルカ「大丈夫だよ、ミノリおにいちゃん。
分からないなら覚えて行けばいいんだよ?
ボクも一緒に覚えていくから
一緒においしい野菜を作ろう!」
ソエル「私も手伝う!
大丈夫だよ、ミノリにい。」
三人の言葉に胸が熱くなるのを感じながら
「ありがとう。」と
三人に素直にお礼を言った。
日が傾き始めたころにサウロさんとマローネさんが、
一緒に帰ってきた。
台車を引いて…
サウロ「ただいま。」
マローネ「ただいま。」
二人の声を聴いてルカがサウロさんに
ソエルがマローネさんの元へ駆けていく。
ルカ「おかえりなさい。おとうさん、おかあさん。」
と二人に声をかけてサウロさんの足にしがみ付く。
ソエル「おかえりなさい。サウロおじさん、マローネねえ。」
とソエルはマローネさんに抱き着いていた。
サウロさんとマローネさんは、
駆け寄ってきた子供たちを疲れた様子も見せず、
笑顔で受け止めていた。
私の失敗を責めることなく、
先回りして土を取りに行ってくれた二人。
その二人を温かく迎え入れる子供達。
私の失敗を指摘しつつも
優しく諭してくれるメリイ。
私はこの家族に支えられているんだな。
と心の底から感謝をする。
戻ってきた二人は拡張したばかりの畑を見て
サウロ「ほう…
初めてにしては綺麗に仕上がっているな。」
マローネ「本当ね。
綺麗に石も取り除かれているし、
土も綺麗にほぐされているわ。」
二人は初めてなのに綺麗に整っていると、
褒めてくれる。
「ルカとソエルが手伝ってくれたからですよ。
私だけだったら、
こんなに綺麗に仕上がっていないと思います。」
そういってルカとソエルを見て笑顔を見せる。
ルカは「何度かおかあさんと一緒にいじったことあるから」
と言い、
ソエルは「えへん」と胸を張り、
サウロさんとマローネさんに笑顔を見せていた。
二人の子供の反応を嬉しそうに見ながら「そうか。」
とサウロさんは頷いている。
マローネ「そうなのね。
ルカ、ソエルちゃん。お疲れ様。」
ルカ「楽しかったー。」と元気に言って、
ソエルは「私も楽しかった。
ミノリにいに、新しい手袋も貰ったんだよ!」
と言いながら手袋を手に二人に見せていた。
サウロ「そうか。
可愛い手袋を貰ったなー。
良かったな、ルカ、ソエル。」
マローネ「良かったわね、二人とも。」
と二人に言われてルカとソエルは上機嫌で
二人で笑いあっていた。
サウロ「さて。
折角家族そろっているんだ。
皆で手分けして畑に土をかぶせるぞ。
もうすぐ日も暮れてくる。
混ぜるのは明日にして、
とりあえず今は土の移動だけするぞ。
マローネはどうする?」
マローネ「せっかくだし私も土運びを手伝ってから
ゴハンを作るわ。
ソエルちゃんに手伝って貰いたいしね。」
そう言いながらソエルに抱き着いていた。
ソエルも嬉しそうに目を細めて「私もいっしょがいい!」
と笑顔で抱き着いていた。
サウロ「そうだな。
家族皆で畑に土をかぶせていくか!」
私とソエルは無言でうなずき
ルカとソエルは元気に「「おー!」」と手を挙げて答えていた。
私は家族という言葉と子供のその様子を見ながら
嬉しい気持ちを感じながら、
皆と一緒に土を運ぶ。
サウロさんとマローネさんが持ってきてくれた土は
皆で移動させたので
すぐにその作業も終わった。
台車を作業場に移動させて、
皆で井戸に行き手を洗い流し、
今日のご飯の為の水も一緒に運び込んだ。




