二度目の交易市当日(後編)
部屋を出て改めてガラムさんへお礼を言って
大広間へ戻ってきた。
「セリアさん、アニスさん。
今日は本当にありがとうございました。
私が至らないばっかりに
ご迷惑おかけしました。」
セリア「いつまで言ってるのよ。
あなたのやっている事は、
この村の為になっているのよ。
反省はその辺にして
少しは自信を持ちなさい。」
アニス「そうね。
セリアの言う通りよ。
それに何か間違えても
訂正して行動すれば良いだけだわ。」
「はい。」
セリア「じゃあ交渉はこれで安心かしら。」
アニス「そうね。村での扱いは自由。
これを認めてくれたのは本当にありがたいわ。」
セリア「ええそうね。
私達はこれから村長へ報告して、
今後の相談をしてくるわ。
じゃあミノリさん、ルカ君、ソエルちゃん、
メリイさんお疲れ様。」
そういって二人は集会所を出ていった。
暫く佇んでいるとルカとソエルが
手をとって話しかけてきた。
ルカ「おにいちゃん、おつかれさま。」
ソエル「ミノリにい。おつかれさまー。」
「ルカもソエルもお疲れ様。
メリイもありがとうございます。」
メリイ「気にするな。
私はソエルと一緒に居たいだけだ。」
そうメリイが答えると
ソエルが嬉しそうに私から離れて
メリイの手を取って笑顔を見せていた。
メリイも嬉しそうに手を握り返している。
「それじゃあ、私たちの最後の仕事。
作業場での受け渡しの確認の為に
家に戻りましょうか。」
三人が頷き集会所を後にした。
メリイはミノリに向けられた視線に気が付いていた。
だが、その視線には敵意や警戒ではなく、
興味や驚きに近いものを感じたため、
そのままソエルの手を引き歩き続けた。
作業場に戻った私たちは
交渉時の話をしながら
商隊の人の到着を待っていた。
「疲れた…」
作業場の椅子に座って
ようやく解放された気持ちになり
そう呟いていた。
メリイ「本当にな。
交渉は何度経験しても
そんなものだぞ。」
そう教えてくれるメリイに聞いてみる。
「メリイも経験があるのか?」
メリイ「直接ではない。
ただ護衛を受けたときは
何時もそんな感じだった。」
「そうなのか…
冒険者も意外に心労が付きまとうんだな。」
メリイ「当然だ。
貴族の護衛とか最悪だぞ。
がちがちに規約で縛られて
自由な時間はほぼないに等しい。」
「それは…
私は絶対経験しなくないな。
そんな事をするくらいなら
ルカやソエルと遊んでいたいよ。」
そういってルカとソエルを見て笑顔で伝える。
ルカ「ボクもミノリおにいちゃんと遊ぶ!」
ソエル「あー!私も遊ぶー!
メリイねえも一緒に遊ぼう。」
そう言って家の方へ走って行った。
暫くするとソエルが自分の絵文字板を
持ってきた。
ソエル「やろう!
ミノリにいお願い!」
そういって私に渡してくる。
私は絵文字板と笑顔で受け取り、
テーブルに並べていく。
遊びながら待っていると
外から馬車の音が聞こえてきた。
メリイは板をテーブルに置いて
すぐに入口の傍で控える。
私達も絵文字板を片付け入り口前で
馬車を迎え入れる。
番頭さんだろうか
以前見たことのある綺麗な服装の人が
挨拶してくれた。
「お初にお目にかかります。
トルヴェール商会、ガラム様の商隊で番頭をしておりますヨハンです。
本日は予定していた交易品の引き取りに伺いました。
どうぞよろしくお願いいたします」
「はじめまして。私はミノリと言います。
本日は宜しくお願いします。
此方が交易品になります。」
そういって絵文字板や小物などが入った箱の前へ
案内した。
詰められた箱から交易品の小箱を一つ出して
確認していく。
ヨハン「おや…これはなんでしょうか?」
そういってソエルの彫ったソエル印の事を
聞いてきた。
「それはサウロ木工場の製品を表す
印ですね。
今後小物にはこの印が刻まれる事になると思います。」
ヨハン「商会印の様なものですか。
これは良いですね。
シエ産の中でも判別化出来て良いと思います。」
その言葉を聞いてソエルはルカと一緒に喜んでいる。
「ありがとうございます。
その印はそこにいる少女の発想なんですよ。」
ソエルを見て笑顔になり話しかける
ヨハン「素晴らしい発想です。
マローネさんの小物は人気があるので
そこへ印が付くとなると
その印がマローネさんの作る小物の証となり、
さらにサウロ木工場の品質を示す印になります。
商人としては、
作り手が分かる商品というのは非常に価値があります。」
ソエル「私の印がマローネねえの印になる?」
ヨハン「ええ、そうです。
ただマローネさんの、ではなく
シエ村のサウロ木工場を示す家印という感じですね。」
ソエル「ミノリにい!
私の印がお家の印になるの!?」
「そうだね。
きっとマローネさんとサウロさんも
喜ぶと思うよ。
今褒められた事を後で
サウロさんとマローネさんに教えてあげないとね。」
そういわれた喜びでルカの手を取って
上下に振り回して、
ルカも一緒に喜んでいた。
ヨハン「かわいらしいご家族ですね。
品質は問題なさそうなので、
馬車へ積み込んでいきますね。
返礼品の鉄と作業用具等は
このままここへ運び入れても
よろしいでしょうか?」
「ええ、よろしくお願いします。」
ヨハン「分かりました。では私は指示出しがあるので、
これで失礼します。
今回も素晴らしい商品をありがとうございました。」
丁寧にお礼を伝え頭を下げて馬車へと戻っていく。
そして部下へ指示を出して
積み込んでいた鉄や作業道具を
おろしていく。
ルカとソエルはその様子を楽しそうに眺めて
ルカ「わー新しい斧だー。きれーい。」
ソエル「すごいね。新品できれい。」
と普段は見ない新品の道具に
嬉しい気持ちが抑えきれないのか
ずっと喜んでいる。
ヨハン「そして、こちらが種になります。
しかしメイズは本当によろしかったのでしょうか?
見たところ木工場に家畜は見えないのですが…」
「いえいえ。これは私達が食べるんですよ。
私が思う通りの物なら
焼いても茹でてもおいしくなると思います。」
ヨハン「メイズがですか…
別大陸から流れてきた植物で、
南の地域では飼料として一般的です。
ですが、メイズを人が食べるというのは、
まだ聞いた事がありません。」
「たぶん大丈夫だと思います。」
ヨハン「分かりました。
交易相手が望むなら答えるのが商人です。
ではこちらを…」
そういって名前を教えてくれながら
袋に入った種を手渡してくれた。
「ありがとうございます。」
そして積み込みを終えたヨハンさんが
最後にお礼を言って戻って行った。
ソエル「綺麗なお鍋、
マローネねえ喜んでくれるかな?」
「きっと喜んでくれるよ。
ルカが頑張ったおかげだからね。
今はまだソエルの物は届いていないけど、
今度はソエルの頑張った事で
洋服や道具などは届くと思う。
次の楽しみだね。」
そういうとソエルはうれしそうに
「うん、たのしみ」と笑顔で答えてくれた。
ルカとソエルが楽しそうに話をしていると
マローネさんとサウロさんが戻ってきた。
サウロ「ただいま。
ミノリお疲れ様。
無事に搬入出来たようだな。」
「おかえりなさい。
ええ、鉄やルカ君が交渉して手に入れた
道具も無事届きましたよ。」
そう言われて、二人が木箱を覗きこむと、
伐採斧
良質な鋸
ノミ(平・丸)
砥石
料理用ナイフ
鉄製鍋
裁縫針・糸のセット
丈夫な革のエプロン
作業用の手袋
小型の作業斧
子供用作業ナイフ
革の道具袋
子供用手袋
がぎっしりと詰まっていた。
サウロさんが斧を手に取り感触を確かめている
マローネさんは鍋を手にとり
驚いたような顔をしている。
それを嬉しそうな目で見つめるルカ。
新しいエプロンを手に取り、
しばらく眺めた後、
マローネさんがミノリに声をかける。
マローネ「ミノリさん…
これは……」
「これはルカ君が肩たたきの権利を使って
家族の為に自分で考えて頂いた報酬ですよ。
喜んで受け取ってあげて下さい。」
そう聞くと二人の目から涙があふれ、
ルカを抱きしめていた。
私はその様子をただただ
黙って見守っていた…
サウロさんとマローネさんが落ち着きを
取り戻し、家へと皆で戻る。
マローネさんは早速新しいエプロンに袖を通し
新しい鍋でスープを作ってくれた。
ルカ「おかあさんきれい。」
ソエル「うん。マローネねえきれい!」
マローネ「ありがとう二人とも。」
今日の夕食はいつも以上に賑やかな食事となっていた。




