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笑顔を守るために

作業場で再度検品を行い時間をつぶしていた私は

ルカとソエル、村の子供たちの事を考えていた。


絵文字板は村中に広がる目途が立って

文字の読み書きの向上が見込める…


でも玩具と言えるのか。

そればかり考えていた。

私の常識や知識を押し付けていないか、

今はそればかりで頭がいっぱいだった。


木工素材を手に取ったまま考え込んでいると、

ルカとソエルとメリイが返ってきた。


「「ただいまー」」


「ミノリ今戻った…ってどうした、

木材なんか持って、何か作るのか?」


それを聞いていたルカとソエルが


「え?何か作るのミノリおにいちゃん?」


ソエル「ミノリにい、何か作るの?」


その言葉にハッとして木材をテーブルの上に置いた。


「違うよ。ちょっと考え事をしていたんだ。」


メリイ「そうか?まあいい。

今日はルカに案内してもらって

石工場と木工場を案内してもらって

ソエルと私の挨拶をしてきた。

今後長い付き合いになりそうだからな。」


ソエル「私も私も。

他の木工場の人の奥さんに合って

挨拶した!」


と手を挙げて私に教えてくれる。

メリイが挨拶ね…

最初の頃の警戒心はだいぶ薄れてくれたようだ。

二人の言葉に安心して、

私は自分の疑問をルカとソエルに話しかける。


「ねえ、ルカ、ソエル。

絵文字板の事どう思う?」


「「絵文字板?」」


ルカ「楽しいよ!

冬にお家でゆっくり遊べるんだよ。

すっごく楽しみ。

今まではお手伝いが終われば

外に出れない日は

走り回れないし退屈だよ」


ソエル「そうだよ。絵文字板があるから

今度の冬は退屈しないよね。

マローネねえに読んでもらってー

ルカやメリイねえと一緒に遊ぶの楽しみなんだー。」


二人とも満面の笑みを浮かべて答えてくれた。


「そうか…私も家族みんなで遊ぶのが楽しみだよ。」


そう笑顔を向けて伝えると、

二人は手を取ってぶんぶんと上下に振って

嬉しい気持ちを伝えてくる。


ルカ「一緒だー!」

ソエル「一緒だねー!」


二人の声が重なる。

二人の笑顔を見て私は決心する。

笑顔になってくれるなら

私の疑問は置いていく。

笑顔を守るために…

改めて決意した。


四人で絵文字板やソエル印の小物類を前に

交易市でどんなものを交換するのかと

盛り上がっていた。


「ただいまー。」


とマローネさんの声が聞こえてきたので

外に出るとマローネさんとガラムさんが居た。


「「おかえりなさい。」」


ルカとソエルの声が重なる。

その様子を見ていたガラムさんは少し驚いていた。

ガラムさんは塞ぎ込んでいたソエルしか知らないはず。

驚くのは当然か…

そう思っていると

ガラムさんが話しかける。


ガラム「ルカ君、お久しぶりですね。

お元気でしたか?」


ルカ「うん。元気だよ!」


ガラム「初めまして、お嬢さん。

私はガラムと言います。

宜しくお願いします。」


そう話しかけると


ソエル「え? ……初めてじゃないよね?

メリイねえと一緒に馬車に乗せてくれた人……だよね?」


油断した…先に考えておくべきだった…

私は顔が険しくなるのを感じつつも

ガラムさんに小声で話しかける


「お願いします。

今は合わせて下さい。」


私の険しい顔を見て驚いたガラムさんは無言で頷いてくれた。


ガラム「それは失礼しました。

お久しぶりですね。お嬢さん。

そしてメリイザザさん。」


ソエル「メリイザザ?

メリイねえを知ってるの?」


私はあわててメリイに声をかける。


「メリイ、すまないが一度ソエルとルカを連れて

家に戻っていてくれ。

これは私の失敗だ…

私は少しガラムさんと話がしたい」


何かを察したメリイは了承の意思を伝える。


「わかった…」


メリイ「ソエル、一回家に戻ろう。

大人のお話みたいだから。

ルカも一緒に一旦家に戻ろうか」


ルカ「うん。」


ソエル「わかった。」


ルカとソエルはガラムさんに挨拶して家に戻っていった。

二人を見送った後

ガラムさんに向き直す。


「ガラムさん、すみません。

先に伝えるべきでした。

ソエルは……

まだ過去を受け止められる状態じゃないんです。

今はようやく笑えるようになったところなんです。」


ガラム「そうだったのですか?

申し訳ありません。

私のせいで…」


「いえ、これは完全に私の油断です。

先ほどお会いした時にお話ししておくべきでした…

申し訳ありません。

あとソエルの前では

メリイザザと呼ばないでほしい。

ソエルの覚えていることと

違う事はなるべく避けたいので…

申し訳ありませんがお願いします。」


そういって頭を下げる


ガラム「私は構いませんよ。」

メリイザザさんのお名前の理由も

東の国関連なのは商人として知っていますので。

ソエルさんの前では今後、気を付けるようにします。」


「すみませんが、宜しくお願いします。」


そういって再び頭を下げる。


マローネ「ごめんね、ミノリさん。

私がもう少し気を使っていれば…」


「いえお気になさらずに、

今回の件はすべて私の責任です。」


マローネ「違うわ、これはあなた一人のせいじゃない。

私たち家族の問題なの。

けして、あなた一人の責任じゃないわ。」


「ありがとう、ございます……」


マローネ「ほら、これからルカとソエルちゃんも交えて

交易品を検品してもらうのよ?

元気出して。」


「そうですね。

ガラムさん。改めて宜しくお願いします。

私はメリイ達を呼んできます。」


そういって一人作業場を出る。


空に顔を向けて

反省と今の気持ちを落ち着かせるために

目を閉じて暫く立ちつくす。


家の扉の前で深呼吸をして

中に入る。


「お待たせ、ルカ、ソエル、メリイ。

改めて作業場へ行こうか。」


気持ちを切り替えてルカ達に声をかける。


ルカが黙って手をつないできた。

覗き込むように私の顔を見ると、

安心させるように笑ってくれた。


それを見たソエルがメリイの手を取って一緒に

作業場へ戻る。


「お待たせしました。ガラムさん。

マローネさんもすみません。」


ガラム「お気になさらずに。

それでは皆さん揃ったようなので

今回の交易品の確認をさせて頂きますね。」


そういってマローネさんに声をかけて

準備されていた組み立て式のテーブルと椅子。

そして小箱等の小物類と絵文字板を確認していった。


「テーブルに椅子、小箱等はいつも通り

素晴らしい出来ですな…

ただ気になったのは内蓋の印ですが、

木に六本の線ですか?

これは一体?」


マローネ「それはね、ウチの製品の証みたいなものよ。

ソエルが考えて彫ってくれたの。

サウロ家のしるしね。」


ガラム「サウロ家のしるしですか…

これは良いですな。

商会印いんの様な物ですか。

分かりやすくて良いですな。

この印は今後も続けられるので?」


マローネ「ええ、そのつもりよ。

ねえ、ソエル?」


ソエル「うん。私の印、家族の印つけたい。」


マローネ「そういう事です。」


ガラム「分かりました。

では今後も期待させて頂きます。」


マローネ「ええ。その期待に応えて見せますよ。」


ガラム「では今回も家具と小箱は

いつも通りに交換を行いたいと思います。

ただ絵文字板の分はルカさんとソエルさんの

要望を受けて冬服という事でよろしいでしょうか?」


マローネ「ええ、ルカとソエルがそれを望むのなら

それでお願いします。」


ガラム「分かりました。

ではそのように取り計らいます。

ただ今回は冬服の量が十分ではないので、

一度メルカティスまで行って

冬服を準備して

早馬車を使って届けさせます。」


マローネ「え!?

そんなことまでして貰えるのですか?」


ガラム「当然です。

絵文字板、これは素晴らしいものですよ。

その権利との引き換えとなると

今回だけでは足りないほどです。

売り上げが続く限り、

来年以降の冬にも防寒着を準備させて頂きます。」


マローネはその言葉に感動して

思わず口元を押さえた。


マローネ「……ありがとうございます…」


ガラム「今まで本でしか覚えられなかった文字が

子供同士で遊びながら覚えられるのです。

むしろこちらの方がお礼を述べさせて頂きたい。」


そう言いルカとソエルに向き直した


ガラム「ルカさん。ソエルさん。

素晴らしい商品の権利を譲って頂き

ありがとうございます。」


そういって頭を下げて感謝を伝えた。


それを見ていたルカとソエルは

笑顔になりそのお礼に感謝を伝えた


「「ありがとうございます!」」


二人の嬉しそうな元気な声が作業場に響き渡った。


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