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家族の印

明日、商隊が到着する。

いよいよ私にとって、二度目の正念場だ。


冬支度に商隊を迎え入れる準備で

村全体で準備をしてきた。

今回の目玉になりえそうな

絵文字板も他の木工場の方々も手伝ってくれて

かなりの数を準備できた。


そしてサウロ家の目玉になる

ソエル印の小物の数々。

ソエルは絵文字板の交渉を

済ませた後、一生懸命に

彫り続けていた。

そして今日その印の初お披露目でもある。


「ではお見せします!」


といつもと違う感じで話し出したソエル。

言いたいのを必死に我慢していたから

この日が嬉しいようだ。


「これが私の印だよ!」


そうして見せてくれたのは

木の絵。

でも木の幹の部分に六つの横線が彫られている。


サウロ「ソエル、この横線はなんだ?」


ソエル「これはね、この家の大事な木と

私達六人の背比べをした線。

一番上がサウロおじさんで、

二番目がマローネねえ。

三番目がメリイねえで

四番目がミノリにい。

五番目が私で

六番目がルカだよ。」


サウロ「背比べか…」


マローネ「ソエルがね、

どうしても六人の印を入れたいと言ってね。

悩んで悩んで考えて作った印よ…」


ソエル「そう!

私の大事な家族六人。

いつまでも一緒!」


その言葉で皆涙目になっていた。


メリイ「ソエル…

ありがとう…」


ソエル「ありがとうは、私の方だよ!

いつも守ってくれてた。

ありがとう、メリイねえ!」


そういってメリイに抱き着いた。

メリイも優しく受け止めて

ソエルを大事そうに抱きかかえていた。


サウロ「ありがとうな、ソエル。」

マローネ「ありがとう。ソエルちゃん。」

ルカ「ありがとう!ソエル!」


サウロさんとマローネさんが

涙を浮かべながらソエルにお礼を言った。


ルカはメリイさんの隣で飛び跳ねながら

ソエルに感謝を伝えていた。


ミノリ「ソエルありがとう。」


抱きかかえられたままの、

ソエルの頭をなでて感謝を伝えた。


皆が落ち着いた後

朝食を取り、

それぞれの行動に移る。


サウロさんはシオンさんと一緒に木吊り台の移動や他の家への力作業へ。

マローネさんは集会所で明日の為の準備と相談。

メリイは明日の広場や村の状況などを

門に居る人へ話を聞きに行くことになった。


そして私とルカとソエルは

我が家の交易品の確認と

明日運ぶ広場の場所と集会所への

家具の補充の確認をすることになった。


作業場で小物の確認をしていると

内蓋の印が目に入った…


「何度見てもソエルが考えた印は素敵だね。

これが明日村の外へ旅立つ人のもとに届く…

素直にうれしい。


私は村を出るつもりはないけど、

家族が作ったものが

ソエルが刻んだ印が外の世界へ羽ばたくんだ…

明日はしっかりしないとな…」


ソエル「そっか。

私の印が外に行くんだよね?

喜んでくれると嬉しいなー。」


ルカ「大丈夫だよソエル。

おとうさんとミノリおにいちゃんと僕が

とってきた木でおかあさんとソエルが作った箱に

ソエルが一生懸命考えた印。

絶対喜んでくれるよ!」


ソエル「そうだとうれしいなー。」


ミノリ「大丈夫だよ、きっとそうなる…」


そういって二人の頭をなでる。

そのまま膝をつき目線を合わせて


ミノリ「その為にも、

今日はしっかり確認をしていこうね。」


そう伝えると、二人とも元気に返事をしてくれた。

台車に集会所に運ぶ組み立て式の椅子と長テーブルを

運べるように載せて、小箱なども

慎重に箱へ詰めていく。

この小箱はソエルの大事な気持ちが籠っている。

慎重に慎重にまとめていく。


そして明日小物や組み立て式の木吊り台

などの交易品を商隊の人が確認しやすい様に

集める広場の確認に向かう事にした。


ソエル「初めての事で緊張するー。」


少し緊張しているのか落ち着かない様子

それに対してルカは


ルカ「ぼくは慣れちゃったよ」


と慣れた様子だった。


「私もそうだったよ。」


それを聞いたソエルが


ソエル「ミノリにいもそうだったんだ。」


そういうとソエルの緊張が少し溶けたのか

歩く足がわずかに跳ねていた。

ルカがソエルと手をつないで

案内するように歩いている様子を見ながら後を追う。

その光景が、なんだか嬉しかった。


広場で明日検品するための場所を確認して

他の村人と言葉を交わして、

今度は集会所へ向かう。


向かう途中村の静けさが一種の緊張感を

漂わせていた。

いつも聞こえる子供の声

石工や木工宅の石や木を叩く音、

今日はそれらが無くなっていて本当に静かだった。


集会所で村長やセリアさんやアニスさんに挨拶をする為に中に入る。

明日は宜しくお願いします。

と伝えると、アニスさんが微笑みながら口を開いた。


アニス「他の工房の皆さんも頑張ってくれたわよ。」


「え?」


アニス「他の二軒も、それぞれ十セットずつ作ってくれたの。」


「そんなに?」


アニス「ええ。それに動物も十種類まで増えたから、

学べる数も広がったわ。」


「絵文字板なら冬服くらい狙えるって、

みんな張り切っちゃって。」


その話を聞いて、私は思わず笑みがこぼれた。


絵文字板の話が一段落したところで、

私は改めてセリアさんへ向き直る。


「ガラムさんがお忙しいでしょうから、

明日また伺います。

お時間が取れそうでしたら、

その時に声を掛けていただければ助かります。」


そう伝えると、

私は交易品と絵文字板の確認を済ませ、

集会所を後にした。


「退屈じゃなかった?」


と二人に聞くと


「「ぜんぜん」平気だよ」


と声が揃って返ってきた。

それが何か嬉しくて二人の手を取り

ゆっくりと家路についた。


サウロさんとマローネさんは

まだ帰ってきていなかったので

三人で話をして過ごした。


日が傾く頃メリイが先に帰ってきて

私たちの会話に加わり、

少し時間がたった後サウロさんとマローネさんが

一緒に帰ってきた。


「「「「おかえりなさい」」」」


四人で声をかけると

二人も


「「ただいま」」


と返してきた。

そして戻ったばかりのサウロさんが


サウロ「揃っているな、ちょうどいい。

マローネすまないが頼む。」


マローネ「ええ分かったわ。取ってくるわね。」


そう言って作業場の方へ歩いて行く。


「何かありましたか?」


私が聞くと


「いやな。

帰る途中にマローネと話したんだが

ソエルの印があるだろ?

あれをただの印にするのはもったいないと思ってな。

折角良い印をソエルが作ってくれたんだ。

それを本当に作ろうと思ってな。」


ソエル「私の印を本当に作る?」


サウロ「そうだ。ソエルの考えた印、

あれを扉の枠につけようかと思ってな。

マローネに話をしたら良いじゃないとなってな。

どうせなら早い方が良い。

今やるぞ」


それを聞いたルカとソエルは大はしゃぎ

二人で手を取り合って回りながら喜んでいた。


マローネ「お待たせ。」


マローネさんを見ると

手に板とナイフを持っていた。


「さあ!みんなで中に入りましょう。」


「「はーい!!」」


ルカとソエルは元気に返事

私は黙って頷き

メリイも戸惑いながらもうなずいていた。


サウロ「よし最初はルカからだ。」


ルカ「はーい」


元気に挨拶をして扉の枠に背と頭を付けてまっすぐ立つ。

サウロさんが板を頭に乗せて押し付けた。


「ルカ、もういいぞ。」


そういうとゆっくり離れて振り返る。

するとサウロさんがその板の下へナイフを入れて

後を残していく。


「良し…

じゃあ次はソエルだ」


「うん!」


とソエルも元気に返事をしてルカと同じように

扉枠の前に立つ。

ソエルの頭の上に板を置いて


「ソエル。もういいぞ。」


「はーい」


嬉しそうに返事をして離れてサウロさんの手元を見ている。


板の下にナイフを入れてソエルの印が残った。

ルカより数センチ上の自分の印を

嬉しそうに眺めている。


次はミノリだな


「わかりました。」


そして同じように私の印がついた


「次はメリイだ」


そこでソエルが声をかける


「待ってサウロおじさん。」


「どうした?ソエル。」


「メリイねえとマローネねえとサウロおじさんのは

私が彫りたい。お礼する!」


その言葉に三人は目を合わせて頷き

笑顔を浮かべている。


メリイ「それじゃあソエルにお願いしようかな?」


ソエル「うん!」


サウロ「じゃあ俺が板を押させているから

ソエルは彫ってくれ。」


「うん!」


メリイが枠の前に頭をおしつけ

サウロさんが板を乗せて固定した。


そのままでは届きそうにないので

ソエルの椅子を持ってきて


「ほらソエル椅子を使いなさい」


そう言って枠の前に置いた。


「ありがとうミノリにい」


そう言って椅子の上に立つ。

メリイはソエルの後ろに待機して

いつでも支えられるようにしていた。


何気ないやさしさが良いよなメリイ…

無言でそれを眺めていた。


私より少し高い位置に

メリイの印を残した。


メリイ「ありがとう、ソエル。」


メリイは笑顔でソエルを抱き上げてお礼を言った。

ソエルも嬉しそうに抱き返していた。


その様子を暫く見守っていたサウロさんが声をかける。


サウロ「よし次はマローネだ」


マローネ「ええ。ソエルちゃんお願いね。」


そう言ってマローネさんも扉枠の前に立った。

サウロさんがマローネさんの頭の上に

板を固定してマローネさんが離れたら

私はまた椅子を準備してソエルに後を任せる。


ソエルが上に乗りマローネさんの印を刻む。

マローネさんの印はメリイより少し下の方に刻まれた。


サウロ「よし最後は俺だな。

すまないがメリイ板を頼む」


「ソエルは私が後ろに立ちますよ、

宜しくお願いします。」


そう伝えると


メリイ「ああ。お願いする。」


そう言ってサウロさんの頭の上に板を置いて固定した。

姿勢を正してサウロさんが声をかける。


「今日はこれで最後だ、ソエル頼んだ。」


その言葉を聞いて


「はい!」


と元気に返事をして

板の下に印を刻む。

他の印より一番高い位置に…


ソエルが椅子から降りると、

その印を眺めていた。

もちろん皆が見つめている。


六本の印が並ぶ扉の枠。


それは今日から、

我が家の背比べの印になった。


ソエルの考えた印が、

家族の印に変わったのだった。

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