それぞれの役割
次の日から家族総出で、
作業を分担して進めることになった。
森へ向かう途中、
石工場からは鉄を叩く音が、
木工場からは薪を割る音が聞こえていた。
木の倒れた場所で台車を止める。
こうして体を動かせることが、
何度経験しても嬉しかった。
そう感じながら何時ものように天を仰ぎ目を瞑り
感謝を伝えていた。
シオン「お前、ほんとそれ好きだな。」
木が倒れた場所へ台車を引き終えた
私へ同じく台車を引いていたシオンが
台車から離れながら声をかけてきた。
「ええ、今の私は幸せなので
感謝は伝えておかないと。」
シオン「あーそりゃ大事だな。
しかし、お前、何時になったら、
そのよそよそしい話し方を止めるんだ?」
「すみません。これ私の癖でして、
この方が楽なんですよ。
国では兄弟にもこんな感じでしたよ?
あれ…少し軽い感じだったかな……」
「まーお前が気にしていないならそれで良い。
お前は村の家族だからな。
少し気になっただけだ。」
「お気遣いありがとうございます。」
「…お前な……まー良い。
切りそろえて行くぞ。」
私達は前回同様材木の確保に奮闘していた。
遠くでは木の倒れる音がした。
「サウロさんも戻ってくるかな?」
シオン「いや行商の為の木材の補充と、
冬にかけての薪用も準備を始めるから
今日からはサウロさんは一日中切る作業だな。
俺たちは運ぶための枝切と切りそろえだな。」
「わかりました。」
最初の交易の準備の時は
くたくたになっていたけど、
木材の枝切や長さを切りそろえる作業も
今じゃ慣れてきたものだ。
シオン「それにしても、ミノリ、
お前も大分たくましくなってきたな。
最初は一回運ぶだけでへとへとだったのによ。」
「そういえばそうですね。
言われるまで気が付きませんでした。」
「お前…ほんと自分に無頓着だな。
心配になってくるぞ?」
「そうでもないですよ。
ただ必死になっているだけです。」
「それならいいけどよ…」
「まー何かあれば俺でもサウロさんでもいい。
相談はするんだぞ?」
「ええ、ありがとうございます。」
シオンの気取らない親切な言葉に
ただ感謝していた。
そのころルカはミノリ達とは少し離れた場所で
一人奮闘していた。
切株に穴をあけ
小さい枝を刺していた。
それを切株の種類を確認しながら続けていく。
「今はこれ位で良いかな。
ミノリにいちゃんの所に戻って
一緒に枝切りしよ!」
そういってミノリの居る場所へかけていく。
その頃、メリイは、
少し離れた場所で鍛錬を兼ねて薬草を採取していた。
時折ルカの様子を見守りながら、
森の奥へ入り過ぎないよう気を配っていた。
―その頃、作業場
ソエル「マローネねえ…
これ曲がっちゃった。」
申し訳なさそうに言ってきた。
マローネ「大丈夫よ。曲がっていても
使い道はあるから無駄にはならないわよ。
気にせずにどんどん続けなさい。
気になったら今みたいに言ってくれれば
私がちゃんと教えてあげるからね。」
そう言って笑顔を向ける
ソエル「ありがとう!」
ソエルはほっとしたように笑みを浮かべ、
再び作業を続けた。
「マローネねえ。
これで良いかな?」
「ええ、上手よ、ソエルちゃん。
本当にすごいわ。
もう少し慣れてきたら
あられ組もやってみる?」
「あられ組って何?」
「組み立ててつなげる、
でこぼこした部分の事よ。
ほらここの部分ね。」
そう言って組立前の部品の一つを指さして言った。
「難しそう…でもおもしろそう!
やってみたい!」
「これが出来たらもう立派な木工細工師よ。」
木工細工師、マローネと同じ職業だと聞いて
眼を輝かせて
「がんばる!」
と元気いっぱいに応える。
「ソエルちゃんはこれから大変よ?
ソエルちゃんの印を裏蓋に彫るんでしょ?」
「そう!印を彫るのも楽しみ!
でもまだ印は思いついていないんだー。」
「ゆっくりでいいわよ。
それに刃物を使っている時は
集中しないと怪我をするかもしれないから
ちゃんと気を付けるのよ?」
「うん!」
以前までは一人で黙々と作業をするだけだった。
たまにルカが手伝ってくれてたけど、
今はソエルちゃんが一緒に作業をしている。
ソエルちゃんは私の事を姉のように思っているようで、
私の事をマローネねえと呼んで慕ってくれているのが
すごく伝わってくる…
ルカももちろん可愛い。
でも娘って、また違った愛おしさがあるのね……
ルカもソエルちゃんも、
すごくかわいいわ。
マローネは家族と言う
かけがえのない存在が、
また一人増えた事を
感じながら作業を続けていた。




