想いを刻んで
私とメリイは
家へ戻るとソエルが椅子を中へと運んでいる所だった。
「ソエル。もう出来たのか?」
ソエル「出来たよ!」
と言いながら背板を見せてくる。
そこには斧の絵が彫られていた。
「それはサウロさんのだね。
上手に彫られているね。」
ソエル「でしょー。
マローネねえも褒めてくれた。」
「そうか。良かったね。」
ソエル「うん」
メリイ「ソエル、怪我とかはしてない?」
ソエル「だいじょうぶだよ。
これ位なら怪我しないよー。」
「すごいね、よく彫れたね。
でもね、ちゃんと気を付けながら作業しないと危ないよ。」
ソエル「んー……分かった。
ミノリにいの言う事を聞く。」
「良い子だ。」
何も考えず自然に頭を撫でてしまっていた。
慌ててソエルを見るけど
拒否反応はなくむしろ目を細めて受け入れてくれていた。
自分の軽はずみな行動を反省しながら手を離す。
ソエル「私の思った通り!」
私とメリイは意味が分からず続きを待っていた…
ソエル「ミノリにいの手って……
何か不思議な感じがするんだよね。
だからミノリにいのは手の形にした!
ちょっと待ってて。」
そういって作業場へ走って行った。
私とメリイは意味も分からずに待っていると
背板の1枚を持ったソエルが戻ってくる。
ソエル「ほらこれ、
ミノリにいの!」
そこには手のひらが彫られていた。
私は片膝をついて目線を合わせて
「そうか…有難う、ソエル」
と感謝を伝える。
ソエル「えへへー。頑張った。」
と胸を張って伝えてくる。
背板をソエルが組み立てていくのを
メリイと見守りつつ完成を待っていると
マローネさんが戻ってきて夕食の準備を始めた。
メリイはソエルが組み立てている間
鍛錬をすると言い庭へと向かっていった。
私とサウロさんの椅子を手際よく組み立てて
満足げなソエルはマローネさんを手伝うために
台所に向かった。
そういえばまだ台所に入ったことがなかったな…
そう思い見に行こうか迷ったが
邪魔になるだろうと後日にすることにした。
一人で今後の事を考えているとサウロさんが戻ってきた。
「おかえりなさい、サウロさん」
サウロ「おう。ただいま。
ソエルは?」
開口一番にそれだ…
「椅子を組み上げて
今度はマローネさんの調理の手伝いですかね?
今は台所に居ます。」
サウロ「俺の椅子は?」
「いつもの位置に置かれているのがそうですよ。
ソエルが組んでました。」
すぐに自分の椅子の背板を見て、
感極まったのか暫く固まっていた。
サウロ「なあ、ミノリ」
「何ですか?」
サウロ「娘の贈り物ってのも
また嬉しいものだな…」
「ええ、そうですね。」
そう答えるだけで胸がいっぱいだった…
「そういえばルカは?」
サウロ「シオンに少しの間見て貰っている。
ソエルの椅子を見た後に戻ってもらう様に
シオンに頼んでおいた。」
「え?一緒に戻らなかった理由は?」
サウロ「……恥ずかしいんだよ…
俺は頼れる父親なんだ…」
何か納得して無言で流した…
ルカ「ただいまー」
サウロ「おう、おかえりルカ。」
「お帰り、ルカ。」
ルカ「ミノリおにいちゃん。ただいま。」
二人が帰宅後すぐに
メリイも帰ってきた。
ルカ「ねー。
お父さんとミノリおにいちゃんの
椅子は出来てた?」
サウロ「出来てたぞー。
おとうさんのは斧だ。
ミノリは…」
「私のは手ですね。」
サウロ「手?何で手なんだ?」
私が何か答える前にルカが、
ルカ「それはね、おとうさん。
ミノリおにいちゃんの
手は暖かいからだよ?」
と笑顔で言ってくる。
サウロ「……そうか。
……ミノリどういうことだ?」
「いえ私にもわかりませんから。
でもソエルがそう思ったのなら、
それが正解なんですよ。
きっと……」
そう話してるとマローネさんが
食事をテーブルに持ってきてくれた。
今日はソエルもお手伝いだ。
「ありがとうございます。マローネさん、ソエル。」
サウロさんとルカも一緒にお礼を言っていた。
サウロさんはそれに付け加えて
サウロ「ソエル。」
ソエル「ん?」
サウロ「椅子、ありがとな。
大事に使わせてもらう。」
ソエルはすごく嬉しそうに微笑んで
うなずいている。




