今後の事
ルカとソエルが遊んでいる間に、
私はマローネさんの作業場へ来ていた。
「マローネさん、お話しがあります。」
「あら?どうしたの?」
「実は今、ソエルが外に出て、
ルカと一緒に遊んでいます。」
「え???」
驚き立ち上がり詰め寄る。
「それは、本当なの?」
「はい」
「声は聞こえていたけど、
他の子じゃなかったのね…」
「はい。
元気になって笑顔を取り戻した。
嬉しい事です。
それでも私たちは、
注意しなければなりません。
表面は笑っていますし、
ソエル自身も分かっていないでしょうけど、
急に治ったという事は、
心の奥にはまだ傷が残っている
証拠でもあると思うんです…」
「どういう事かしら…?」
「暗い過去を本当に乗り越えたのなら、
誰かが押したような感じで、
急には治らないのではないかと…
うまく説明出来ないのですが、
完治したという感じではない気がして。
あくまで私の憶測なんですけど……
それが杞憂なら良いんですけど、
万が一を考えて私たちは、
今まで通り気を付けながら
近寄りすぎず、
向こうから近寄ってくれたら、
暖かく迎え入れる。
そういう距離感を守りたいです。
笑顔になったのに、
また何かの拍子で、
落ち込んだ顔はしてほしくないので…」
「そう……
分かったわ。
サウロには私の方から伝えておく。
そろそろ帰ってくるでしょうし。」
「私はメリイザザさんと
ルカ達と一緒に先に家に戻っています。
行き成り合わせるのはちょっと怖いので…」
「分かったわ。」
相談が終わった私はルカ達の元へ戻る。
「ミノリおにいちゃん。
ソエルってすごいんだよ。
さっき飛ばしたばかりなのに
僕より上手に飛ばすんだ!」
本当にうれしそうに、
そう教えてくれる。
後ろの方では胸を張り
笑顔で此方の話を聞いている。
笑顔、でも近寄ってはこない…
「そっか凄いなソエルは」
笑顔を返すと
嬉しそうに笑顔を返してくれる。
でもそれだけ…
「ルカそろそろサウロさんも帰ってくる。
一旦家に戻ろう。
ソエルもメリイザザさんと一緒に戻ろうか」
笑顔で話しかける。
最初はえーとか言っていたけど、
メリイザザさんが行こうというと
素直に一緒に部屋に戻って行った。
ルカが私を見たので
私がうなずくと
「うん!」
そう言ってメリイザザさんの後を追いかけて行った。
空を見上げながらソエルの笑顔を思い出していた。
「私は、間違えてないかな…」
そうつぶやき空を見上げたまま目をつぶった。
暫くすると丸太を運んでくる
サウロさんとシオンさんが帰ってきた。
シオン「何やってんだこんなとこで」
「空を見上げていました」
「「なんだそりゃ」」
サウロ「お前なー。
シオン同様まだ若いのに
歳より臭いぞお前」
シオン「間違いない」
「まー私の事は置いておいて、
積み上げ作業は手伝いますよ。
マローネさんもまだ作業場に居ましたので、
一緒に話をしましょう。」
サウロ「そうか。
シオンお疲れ。
ここからはミノリに手伝ってもらうから
おまえは先に帰って良いぞ。」
シオン「分かりました。
じゃあな、ミノリ!」
そういい手を振り帰って行った。
サウロ「で……
本当は何があった?」
「鋭いですね。
ちょっと怖いです。」
「はっ。
家族の事は顔を見ればわかる。
正直に話せ…」
「先にマローネさんとも話をしたので、
一緒に今後の話しをしようかと。」
「お前の様子じゃあ
あの子の事だろ?
早く運ぶぞ。」
木材を運び込んだ私たちは
マローネさんの作業所へ向かった。
「あら?いっしょだったのね」
「外で空を見ていたら帰ってきたので」
なにそれと笑顔を見せる
「そんなことより、
さっさと話せ。
気になって仕方ねぇ」
「落ち着きなさい。
悪い事ではないわよ。
むしろ良いご報告。
ちょっと心配ごとは残っているけどね」
「あの子の事だというのは
こいつを見ればわかる。
内容を言え。」
「今日ソエルが外へ出て、
ルカと一緒に竹とんぼで遊んでいました。」
「おい!ほんとうか!?」
「はい。
その事でご相談と言うか
再度の確認をしたくて。」
「かくにん?
笑って遊んでたんだろ?
まだ何かあるのか?」
「はい。
私が感じたことなので、
確かな事とは言えないんですけど…
一応は安心はしているんです。
でも、だからと言って達観しすぎるのも
危険な気がして……」
「どういうことだ?」
マローネさんは真剣な顔をして、
黙って聞いてくれている。
「本当に感なんですよ。
私は過去に似たような経験があります。
ただそれだけなんですけど、
うまく言葉にできなくて……」
「……お前がそう感じたんだな?」
無言でうなずく
「わかった。
で何をすればいい?」
その言葉に驚きつつ二人を見ると
微笑みを絶やさないマローネさんと
何かを確信したような鋭い目で見ているサウロさん。
心で感謝をのべつつ話を続ける
「特にやる事はないんですけど、
笑顔になったからと言って
安心して無理に近寄らないようにしてほしいです。
理由はわからないんですけど、
そんな気がして…」
「つまり今まで通りって事だな?」
「そうね。
さっきミノリさんと
お話ししたけど、
私もそのほうが良いと思うわ。」
「そうか…分かった。
ただな…
ミノリお前ずるくないか?」
「え?」
驚きつつ聞き返してみると
「お前達だけ笑顔を見て、
俺は見てないぞ?」
それを聞いてきょとんとした…
「あら?私も見てないわよ?
作業中だったもの」
そういい、サウロさんと一緒に膨れた顔で見つめてくる。
「いえ…私はたまたまですよ?」
「まあいい。
ルカと一緒に遊んでいたなら、
近いうちに見る事もあるだ。」
「そうね。」
そういい三人で笑顔になり
暫く会話を続けていた。




