空
私たちは食事をとりながら
今後の話をしていた。
「まだ話しかけちゃダメか?
あんな可愛い子が苦しんでいるのに
何も出来ないのか?」
「ええ、まだ駄目そうね……
メリイザザさんに聞いたけど、
まだ反応は薄いみたい。
でもね、最近は食事の量が増えたわよ。
残すのはいつも通りなんだけど、
最近は少しずつその量が減っていってるもの。」
「ほんと?」
「本当か!?」
喜ぶ二人
「食べる量が少しでも増えたのは
少し安心したな。」
「おなか一杯がうれしいのに……」
「そうだね。でもね、
人にはどうしても食べられない時もあるんだよ。」
「はやくいっしょにご飯食べられるといいね。」
と笑顔を見せてその時を想像しているのかな。
食事を終えた私は仕事に出る前に
メリイザザさんに相談を持ち掛ける。
「少し外へ連れ出せませんか?
歩き回るのではないです。
家庭菜園を見るだけでも良いですし、
ただ外に出て空気を吸うだけでも良いんです。
私たちが不在の時に、
少しずつあの子の負担にならない程度で
お願いできませんか?
もちろん貴方が無理だと判断すればやる必要はありません。
ただ出来るのならそうした方が健康にも良いので。
今日私達はいつもの仕事に出かけます。
その際に少しでも……」
目を細めて何かを考え……
「分かった。ただ少しでも
拒否する素振りを見せたら止めるぞ?」
「もちろんです。
あの子を第一に考えて頂いて構いません。
あの子を宜しくお願いします。」
そう言い頭を下げる。
それを鋭い目で見た後
「分かった。」
そう伝えて部屋の前へ戻って行った。
―
それから二週間
いつもと変わらない
いつもと同じ生活が続いていた。
私とルカは久しぶりに一緒に自由時間を満喫していた。
手をつないで雑談しながら散歩。
そして肩たたきの話をルカがした時
嬉しそうな顔をみて、
「ねぇ、ルカ。今度は自分の為の
遊び道具を作ってみない?」
「あそびどうぐ?」
と目を輝かせた。
「うん、そう。ルカが作りたいと思うのなら、
また一緒に作ろう。」
そういうと、
「うん。」
と元気に返事を返して手を握り、
作業場に向かって手を引いて歩きだした。
「今から作るのはちょっと難しいぞ。
名前は竹とんぼだ。」
「たけとんぼ?」
「そう。棒の先に薄い板を乗せて、
手で棒を回すと羽の部分が空を飛ぶんだ。」
「そらをとぶの?」
と今まで見たことが無いほど目を輝かせ
大きな声を上げてきた。
「そうだよ。
ただちょっと細かい作業が増えるから、
手の怪我には注意するんだよ?
あと、もし作れても一人では作らない事。
約束できる?」
手を挙げながら
「できる!」
と約束してくれた。
そうして二人で作業を始める。
一緒に丸い持ち手を作って
一緒に羽を作る。
肩たたきの時と違うのは一緒に同じものを作る。
これがすごく楽しかった。
ルカが私の棒を見てもっと綺麗にすると
一生懸命削っては磨いて
初めてで大変なはずなのに
その作業は凄く楽しそうに見えて
私の方まで嬉しい気持ちで作業出来た。
「丸い持ち手が出来たら片方の先を削るんだよ。
凸。こんな感じでね。」
と指を動かしながらその形を教えて、
また一緒に作業を続けた。
肩たたきの経験が生きているのか
削る作業は思った以上にスムーズにいった。
「じゃあ次は羽の部分を作るよ。」
と伝えると、
「はねをつくるの?はねってとりみたいなの?
それはむずかしいよー」
とちょっとほっぺを膨らませて言ってきた。
ほっぺたを突きたい衝動を抑えながら話を続ける。
「羽とは言っても鳥のような物じゃないよ。
板があるよね?あれを、
手で持てるくらい細く短く作るんだ。」
「それならできそう!」
と笑顔になり作業にはいる。
具体的な形が分かっているので
お互いが簡単に形にする事が出来た。
そして最後の行程に入る。
「次が最後だよ。
さっきの丸い持ち手のとがった部分を
今作った羽の真ん中にハメるように作るんだ。」
そう言うと、
「おかあさんの、いすとかつくえ
みたいにくっつけるの?」
と言う。
私は笑顔になり
「その通りだよ。
自分で答えにたどり着いたね。偉いぞ。」
頭を撫でたい衝動を抑えて褒めるだけに留める。
それを聞いたルカは
「やったぁ。」
と喜んでいた。
そして繋ぎ部分の作業に入る。
穴をあけたほうが楽だけど
今回は一緒に楽しむため
難しい方を選ぶ。
そして削り終えた私たちは
お互いの制作物を見ていた。
「ぼくの、おにいちゃんのとちがって、
少しかたむいてる。」
「いや十分すごいぞ。初めてじゃないみたいだ。
よし、それじゃあ飛ばしてみようか。」
「やったぁ」
と飛び跳ねて喜んでいる。
「じゃあ今からやって見せるから、
見ていてね。」
そう言って羽を丸い持ち手にはめ込んで、
手を勢いよく回す。
私の羽は一メートルほど舞い上がった。
思った以上に低かったけど飛ぶことが出来た。
見ていたルカは大はしゃぎ。
私の方へ駆け寄ってきて、
何度も飛び跳ねている。
そんな姿を見ていると、
次はルカの番だと思った。
ルカが飛ばした羽は
私以上に飛び上がり私の身長位は飛んだ。
「やったー。おにいちゃんのはねよりとんだー!」
またもや大はしゃぎ。
私も嬉しくなって声をかける。
「凄いな、ルカ。
おにいちゃん負けちゃったよ。」
そういうと嬉しそうに何度も何度も飛び跳ねている。
私はその光景を微笑みながら見ていた。
―
女の子の部屋
ふと視線を向けた先で、
何かが空を飛んでいた。
空……飛んでた……?




