七章 十話 勉強
翌朝、いつもと違う目覚め…
珍しい朝を迎えていた。
朝食時いつもはルカが隣に座っていた。
でも今日の私の横にはココちゃん。
そして向かいで私たちに視線を送るククさん。
「新しい技術を覚えられる」
そう楽しそうに話していたココちゃん。
私と一緒にクリエイトの鍛錬が出来る。
そのことがよほど嬉しかったのか、
早くご飯を済ませて現場に行こうと声をかけられたのだ。
子供がこうやって自分の主張を言ってくれることは、
一種の信頼のたまものだと思っている私にとって、
心から嬉しいことだった。
朝食後ココちゃんの畑の確認が終わった後、
私はカカさんたちと一緒にロクさんの家へと向かった。
トトさんと合流後、現場へ向かう。
ココちゃんはククさんと手をつないで、
楽しそうに歩いている。
現場に近づくにつれて、
水場特有の澄んだ空気を感じた。
少し離れた、川よりの場所には、煙が見えた。
現場に到着すると建材に石材が所狭しと積み上げられていた。
その横には木吊り台に台車。
立派なヤードのようになっていた。
木吊り台を見ていた私にトトさんが声をかけてきた。
「お前が考えた木吊り台。
あれのおかげでだいぶ楽に工房も家も建てられそうじゃぞ?」
その言葉を聞き、頷きながら木吊り台を見上げた。
ただサウロさんたちを楽にしたかった。
それだけで考えただけなのに、
今では村だけではなくその外にまで広がったという現実。
木吊り台が役立っていることは知っていたものの、
実際に目の前で使われているのを見て、
ようやく自分の成果として実感できた。
物思いに耽っているとココちゃんに腕を引っ張られた。
「考えるのは後にして。
木屑と石粉の使い道を考えたい。
粉を圧縮して固めるより木材を圧縮したほうが早い。
それなら別の使い方を考えたほうが良いと思う。
何かない?」
「木と石の粉の使い方かー……
幾つか考えはあるんだけど、
例えばココちゃんは粉でどんなことができる?」
「えっと、固めて形を整えたり?
塊にするくらい?」
「うん、そうだね。
粉を加工すると言ってもそれ位だよね。
じゃあ例えば石と木で別々の、
例えば棒を作るとどうなるかな?」
「石の棒と木の棒が出来る」
「そうだね……
じゃあ圧縮する強さの違いで、出来るものの違いは分かるかな?」
「圧縮を強くすると硬くなって、弱めると脆い棒になる?」
「正解。
じゃあ例えば脆い木の棒って何に使えると思うかな?」
「ん-…脆い木の棒は役に立たない?」
「もっと柔軟に考えるんだよ。
脆い木はいうなれば空気を多く含んでいるんだ。
だからただの棒として何かを載せたり叩くにはむかない。
でもその脆い棒は空気を含んでいて、
普通のマキより火がつきやすいんだ。
焚火などに火をつける時に使えば、
それは立派な役に立つものになるんだよ」
「使い方次第……」
「そう。
ココちゃんはまだ工夫する事に慣れていないだけ。
例えばそうだね……」
木くずで棒を一本作った。
片方は圧縮して硬い、もう片方は軽い圧縮で固めて棒状にした。
「これ、片方が圧縮を強めたけど、片方は緩めにしてる。
これを緩い方に火をつけたらどうなると思う?」
「火種を移しやすい?」
「正解。
クリエイトで粉を加工するのも良いけど、
そのままでも使い道もあるし、
同じ棒にするだけでも色々と使い道があるってこと」
「なるほど……
圧縮次第で同じ棒だけど使い方次第……
面白い考え方。
ありがとう、ミノリ。
勉強になる」
トトとカカはミノリとココの会話を聞きながら話をしていた。
「さすがじゃなあ。
知識だけじゃなく不思議な教え方をしおる」
「ええ、あまり見ない教え方ねえ。
同じものでも考え方次第ね」
「ワシにも通じるもんがあるかもしれんのう。
ほんに面白いわい」
「そうねえ。
ミノリさんにお願いして正解だったわね。
ココ…きっと成長するわよ?」
「ワシの子じゃ、当然じゃろう」
「私の子でもありますよ?」
「知っとるわい」
トトとカカの様子を黙って見ているククの顔にも、
笑顔が浮かんでいた。




