七章 九話 いつもの作業の少しの変化と当たり前の日常
シエの北東の森
サウロとシオンとミノリが木こりをする場所
「ミノリ今日はウチの木工所ではなく、
ロクさんとこの木工所へ運んでくれ」
「分かりました」
村長の指揮のもと、
大人も子供もすべての人が作業に参加し、
村ではトトさんのお家と工房を作るための仕事が広がっていた。
台車で木を運ぶときは北東の門から入るのがほとんどだった。
それが最近は南の門から入る事が増えてきた。
ただ入る場所が違う。
それだけなのに新鮮な気持ちになれるから不思議だ。
きっと日常の変化がそう感じさせるのかな……
そんなことを思いながら台車を引いていた。
今では丸太八本を積んだ台車でも
息切れすることなく引けるようになっている。
それは労働力としてようやく一人前になれた。
そんな自信にもつながっていた。
「お、ミノリ。
おつかれさん。
木を運んでくれたか」
「おつかれさまです、ロクさん。
そうです。
隣の木工所へ運ぶように言われました」
「木吊り台が外に出ているはずだ。
すでに他の木が運び込まれている。
そこへそのまま並べて置いてってくれ」
「でもいいのですか?
台車に乗せるためにある程度枝は切ってますけど、
まだきれいに落とされてないですよ?」
「それでいい。
石工と木工のつながった家の方が何かと都合が良いんだ。
加工はこっちの人出でやるから気にせずに、どんどん運んでくれ」
「わかりました。」
私が二度目に訪れるとアルドさんが枝を切り落としてきれいに整えていた。
その切り落とされた枝を子供たちが集めて集会所の方角へ運んでいた。
三回目に運んだときにロクさんに声をかけられた。
「ミノリ、悪いんだが石工所にある石材を、
トトさんの工房の予定地に運んでくれ。
護衛はアルドがやってくれる。
アルド頼んだぞ」
「わかった。
行こうかミノリ」
「はい」
台車にはすでに大小さまざまな四角形の石が並べられていた。
いつも私が引いている台車より一回り大きい台車。
成長した私でも力を込めないと引けなかった。
次の日は最初の二回はサウロさんの木工所へ運び
三度目はロクさんの所へ運んだ。
そして昨日と同じように石材をトトさんの工房予定地に運ぶ。
前日に運んだ石材が無くなっていた。
地面に穴が開いていて、
石材が土台としてしっかりと地面に埋まっていた。
その場所に今日はトトさん家族が揃っていた。
そこではトトさんが石を削り、
カカさんがココちゃんの場所へと運んで、
運ばれてきた石材をココちゃんがスキルでさらに加工をしていた。
ココちゃんの顔は真剣だった。
でもその作業が嬉しいと思っているのが、
はっきりとその目から伝わってくる。
私はトトさんたちに挨拶をしてすぐにその場を後にした。
急げばもう一回石材を運べると思ったからだ。
予想通りもう一度石材を運んだあと、
その日の私の作業は終了した。
その日の夕食時……
「ココ、私の作った椅子は役に立った?」
ココの言葉をワクワクしながら待っているソエルが可愛い。
「うん、すごく楽で丁度良かった。
アニスに貰ったクッションも良かった。
今度お礼をしに行くつもり」
「クッションも貰ったんだ。
良かったねココ」
自分のことのように喜んでいるルカ。
「うん、私たちの家を作るはずなのに、
皆が親切にしてくれる。
嬉しい……」
「当然だよ!
ククはトトさんと一緒に水路を作ったんだよ?
そのお陰で畑をやってる子供たちも喜んでたんだよ。
すぐそこから水が運べるから楽だって。
遊ぶ時間も出来たって。
その時間を使って手伝えるなら良かったって喜んでたよ」
「そうだよ。
お陰で水遊び場も出来たし、
そこから水を運んで服を洗うのも楽になったって、
裁縫師さんも言ってたよ」
ルカは柔らかい枝を集めて裁縫師の元へと運んでいた。
そのためか裁縫師のことを話してくれるようになった。
ソエルとルカがいつもの作業とは別に、
他の家での交流が増えたことで、
人との付き合い方も学んでいる気がした。
それは私が知らない場所でルカとソエルが成長している。
少し寂しく、でも嬉しいことでもあった。
一通り子供たちの話が終わった後、
カカさんが私へと話しかけてきた。
「ミノリさん。
明日からはココと一緒に、作業をお願いできないでしょうか?」
「え?ココちゃんと一緒にですか?」
「はい、そうです。
残念ながら私たちでクリエイトを使えるのはココだけです。
私やトトやククではクリエイトのことはわからないんです。
でも同じスキルを持ったミノリさんなら、
もっと良い使い方を教えて貰えるのではないかと思いました。
ただサウロさんたち木こり作業の人員が、
一人減ってしまうのですが……」
「ああ、こっちの事は気にしないでくれ。
ミノリはクリエイトスキルを育てたいと言っていた。
ならココちゃんと一緒の方が良いと思う。
カカさんのお願いはむしろ私たちにもいい提案だ。
そうだろう?ミノリ」
「ええ、そうですね。
私としても願ったり適ったりです。
サウロさんも賛成のようですし、
カカさんの提案は喜んで受けさせてもらいます。
ココちゃん、明日から宜しくね」
「こっちこそ、宜しく。
私が知らないことを教えてほしい。
私はもっとクリエイトスキルを育てたい。
皆の喜ぶものを作りたい……」
ココちゃんの気持ちを聞いたククさんは、
我慢できないといった様子でココちゃんを抱き上げて、
頬をこすり合わせていた。
その様子を見ていたソエルも嬉しくなったのか、
羨ましく感じたんだろう。
ソエルは笑顔のままマローネさんに抱きついていた。
その様子を指さして喜んでいるルカ。
そのルカの頭を優しくなでるサウロさん。
サウロさんを見上げて笑顔でそのたくましい腕にしがみつく。
この日の就寝前の時間は決して珍しい事ではない。
サウロ家では日常になっている、
にこやかで平和な一日の終わりとなった。




