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七章 七話 外伝

本日二話目となっています。

お気を付けください。


―ガラン


ローディスの事はガラムに任せ、

商会長であるガランはシエ村を出た後ローディスを経由して、

蒼鱗と共に本国へと戻った。


ゼニス交易共和国の国王へ謁見を申し入れた。

数日後、その面会が叶うことになった。


ゼニス交易共和国の王宮書斎。

暖炉の火は消えている。

古びた大陸地図がテーブルの上に広げられている。

二人は対話用のテーブルを挟んで向かい合っていた。


ガランは国王に一礼をして革張りの椅子に深く腰掛ける。


「長らくご無沙汰しております、王様。

ゼニスの空気を吸うと、また旅の疲れが吹っ飛ぶようです」


微笑みながら紅茶を注ぐ従者は一礼して壁際へと下がった。


「ガラン、相変わらずの調子だ。

商会の規模も拡大し、君の名は大陸全土に響くようになった。

さて、今回は何の用だ?

単なる挨拶ではないはずだな」


「実は、一つ大きな構想を持ってきました。

孤児院です。

ただの慈善ではなく、

商会のネットワークと連携した育成施設をローディスに設けようと思っています。」


国王はカップを下ろし、目を細めた。

「ローディスか。

メルカティスとの国境付近だ。

商都から遠いが、戦略的に重要な町だな…」


「その通りです。

まず支店を置き、物流と情報網を整えた上で孤児院を併設します。

子供たちには教育と職業訓練を施し、

将来は商会の社員や取引先として育てる。

国境の町こそ、多様な人材を育むのに適しています。

商都の空気を吸った者たちが、

異国の風も知って帰ってくる。

それがゼニスの国力にも繋がるはずです。」


「なるほどな…

しかしローディスには他の商会も多数ある。

その為、お前は今まで支店を置かなかったな?

それが今になってか……」


「はい。

ローディス近く、街道からそれたところにシエという村があります。

農業や鉱物資源が豊富ですが、

物流がネックで発展が遅れています。

しかし、その村には飛人が暮らしています。

その青年が、木吊り台に竹とんぼ、絵文字板、

ピン倒しといった遊具や実用道具を次々と生み出しております」


国王は目を見開いた。

「飛人か。異世界から来た者だが……」


「その青年の発案は、

材料が限られた村でも作れるものが多く、

子供たちの知恵と遊び心を育むのに最適です。

商会では遊具と実用道具の生産拠点として、

シエ村を位置づけようと考えています。

孤児院で学んだ子たちが、そこで工作や設計を学び、

完成品は支店を通じて商都へ送る。

街道沿いの町が流通の中枢なら、

あの村は創意と生産の基盤となります。

それと面白い話があります。

心の病を持った子供が早期に回復することも確認しております。

その為、孤児院の件も進めたいと思っております」


「遊具や役立つものを重視するとは、

飛人の記録に合致しているな。

資金調達と運営は?」


「初期投資は商会で負担いたします。

そして驚くべきことがもう一つ。

私がガラムから聞き、私が直接見た様子が、

この国に残る古い子守歌を思わせました。」


「子守歌?」


「はい。

誰(だれ)かが誰(だれ)かを守(まも)る場所。

歌詞にありますでしょう?」


「龍と聖女様がともに歩んだという、あの子守歌か。

我が国にとって特別な歌だ…」


「はい。

ただ伝承の残る場所がシエ村だという確信があるわけではありません。

ですがガラムは確信している様子でした。

そして極めつけは白金の魔女です。

その運営にロアが資金を出すと申し出ています。

資金だけではありません。

ロアはシエ村の後ろ盾になると明言いたしました。

ロアだけではありません。

所属する蒼鱗もまた、その村の後ろ盾になると申し出ています」


「な!?

ロアがこの国に根を張るという事か?」

国王は驚きを隠せなかった……


「おそらくは…

少なくともシエ村には深く関わるつもりの様子でした」


「まさか…あのロアが……」


「だからこそ今なのです。

孤児院の運営は専任の理事に任せ、

商会本部長は監査役として関与する形です。

飛人の青年が考案した道具を孤児院の教材とし、

子供たちが実際に製作、改良する過程で

考える力と作る喜びを養います。

巣立った者たちは、

村から出た後には支店長や生産管理責任者となるでしょう」


「ローディスの支店設立を優先し、その後にシエ村へ展開する。

王都からの支援も約束しよう。

ただし、孤児院の生徒たちが街道沿いの町に流れていかないよう、

雇用契約の縛りはしっかり設けるように」


「そこは慎重に考えたく思います。

記録に残る飛人は特に子供に対しての想いが強い。

そしてその村にいる青年もまたその傾向にあります。

無理やりの雇用契約での縛りはお勧めしません。

それを許せば間違いなく飛人の反発を買います。

そうなれば、蒼鱗もまた敵になる可能性が高いです」


「それは困るな……

それではやむを得んか。

だが出来る限り人材は確保しておきたいが……」


「無理やりの雇用契約ではなく、普通に契約を求めれば良いのです。

今後、間違いなく村の影響を受け、ローディスは発展します。

そうなれば好条件で雇用を打診する事も可能です」


「うむ……

ではお前に任せるとしよう」


「承知いたしました。

契約書の下準備を商会側で整え、来月には王都へ提出いたします。

ローディスでの聖女地鎮祭は、王様ご臨席のもと執り行いたく存じます」


「長年の友人が贈る贈り物、受け取ろう。

ゼニスの空気が、また少しだけ良くなることを期待しているぞ」

国王は紅茶のカップを持ち上げた。


ガランはカップを合わせた。


「商会の帆が、国境の風まで運ぶ時が来ました。

ご支援、心より感謝いたします。」

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