七章 五話 手袋
広場で相談した後、
トトさんとカカさんとその場で別れて、
私たちは家の家庭菜園の場所へと向かった。
ルカとソエルがメイズの話を聞いて、
すぐに取り掛かりたいと言ったためだ。
ただメリイは鍛錬を兼ねて森へと向かった。
薬草を集めるためだ。
ブランコで万が一怪我をした際の薬を作れるようにと言っていた。
この辺の考え方が冒険者らしいなと思った。
サウロ家の庭にある家庭菜園……
新しい畑は、長さ二メートル、幅一メートルのものが二か所。
元からあった畑は、縦横二メートルのものが四か所ある。
私たちは庭にある畑を耕し、綺麗に整えた。
ソエルとルカとココちゃんは家から手袋を持ってきた。
三人が嬉しそうに手袋をつけている。
ココちゃんの手袋にだけは手の甲部分に何も描かれていない。
いい機会なのでココちゃんに何の絵が良いかを尋ねた。
「なにが良いんだろう…」
可愛い仕草で悩んでいるココちゃん。
ルカとソエルも一緒に悩んでいる。
三つの小さな体が並んで傾いている様子が、
かわいらしく思えて、私はただ、黙って見守っていた。
それを見たククさんが声をかけた。
「ドワーフらしいものが良いんじゃない?
ハンマーとか、それかルカとソエルに貰った、
ノコギリとか彫刻刀とかどうかしら?
ココ、すごく喜んでいたでしょ?」
その言葉を聞いて目を輝かせて私に話しかけてきた。
「ミノリ、出来る?」
その顔は期待に満ち溢れていた。
「もちろん出来るよ」
笑顔でそう答えた。
「ん!じゃあお願い」
両手で私の目線に合わせようと手袋を持ち上げて背伸びをしていた。
私を見つめる目は嬉しそうだった。
私は膝を折ってココちゃんと視線を合わせ、
優しく手袋を受け取った。
「じゃあココちゃんの絵を付けるね」
【クリエイト】と呟くと手袋が光った……
数秒経つと光が収まっていく。
ココちゃんの手袋の手の甲部分に、
小さいハンマー、ノコギリ、彫刻刀が、
鉾のようにきれいに描かれていた。
「はい、これ。
ココちゃんの手袋だよ」
再び視線を合わせて渡すと、
ココちゃんは嬉しそうにゆっくりと受け取った。
受け取った手袋は今まで何も書かれていなかった手の甲部分に、
綺麗な絵がしっかりと描かれていた。
その絵を黙って見つめていたココちゃん……
そして顔を上げて私に視線を向けて声を上げた。
「うれしい……
ありがとう、ミノリ」
満面の笑顔を見せてくれた。
「喜んでくれて私も嬉しいよ」
そう言うとココちゃんは力強くうなずいた。
そしてルカとソエルの元に走っていき、
手袋を見せてルカとソエルに声をかけた。
「これでルカとソエルと一緒!」
その声は普段落ち着いているココちゃんには珍しい、
声色になっていた。
「よかったね、ココ」
「ココの手袋もかわいくなったねー」
ルカとソエルも自分のことのように一緒によろこんでいる。
しばらくルカとソエルと一緒に喜んだあと、
今度はククさんの方へと走っていき、
その手袋を見せていた。
「クク、私の手袋!」
嬉しそうに見せてくるココちゃんに、
ククさんも嬉しそうに笑顔で
「よかったわね」と頭を撫でながら言った。
そして私を見て「ありがとう、ミノリさん」
そう伝えてきた。
「いえ、私が渡したかっただけですよ……
っとそうだ。
せっかくですし、ククさんの手袋も作りましょうか。
あとサウロさんとマローネさん。
トトさんとカカさんの分も……」
そう言って五人分の手袋も作った。
サウロさんのは私の手袋より少し大きめにして、
マローネさんとトトさんの分は、
私の手袋と同じくらいの大きさで作った。
カカさんとククさんの分は少し小さいサイズで作った。
サウロさんの手の甲には斧を付けて、
マローネさんの手の甲にはノミと彫刻刀。
トトさんとカカさんの手袋の手の甲にはハンマーとスコップを付けた。
ククさんの手袋には包丁を付けた。
ククさんはその絵を見た後、
「ココと同じ絵にしてほしい」
と言ってきたのでその通りにした。
料理人と聞いていたので包丁にしたけど、
ククさんの中では≪ココちゃんと同じ手袋≫の方が重要だったようだ。
サウロさんとマローネさんの手袋を受け取ったルカとソエル。
その大きな手袋を大事そうに手に取り家へと向かった。
トトさんとカカさんの手袋も、
ココちゃんの手で家の中へしまいに行った。
戻ってくる三人の顔は笑顔のままだった。
そして戻ってすぐに私に「「「ありがとう」」」
声をそろえてそう伝えてきた。
私にはその言葉だけで十分だった……




