窓の向こう
女性冒険者が村に残ると言ってくれた。
女の子の為に……
私に対して警戒心が強く、
一切信用した様子も見せないけど、
子供の目線に限定すれば、
まさにもってこいの存在だ。
たった五日。
それだけであの子が
メリイザザと一緒に歩いている。
私にはそれが信じられなかった。
私はその鋭い視線を受けながら、
手を差し出して話す。
「改めまして、私はミノリと言います。
この子は弟のルカ。
木工所に併設している家で一緒に暮らしています。」
そう答えてルカを見ると、
満面の笑顔で私を見上げ、
手をつないできた。
女性冒険者は未だ警戒心を解いていなかった。
「私の名前はメリイザザ。冒険者だ」
ただそれだけを言った。
そして肝心の女の子。
心配だった家への移動は意外にもすんなり受け入れた。
「どこも一緒……」
その小さな呟きが、
私の胸に重く響いた。
家に着くと丁度サウロさん、マローネさんが、
入口の前で話し込んでいた。
「お。帰ってきたな。」
「おかえりなさい。ルカ。ミノリさん。」
その二人の声に驚いたのか、
女の子はメリイザザにしがみ付いていた。
それを見た二人はしまったという顔をして
お互いに顔を見合わせ、相談した後、
マローネさんが歩み寄り、
しゃがんで目線を合わせた。
「初めまして私の名前はマローネよ。
今日からここがあなたのおうちよ。
お部屋も用意してあるから、
ゆっくりしていってね。」
と微笑みながら少し声を抑えて
話しかけていた。
サウロさんは何かぎこちなく
その様子をうずうずしながら
眺めていた。
中に入り、予定していた部屋を見ると
すでに仕切りで二か所に分けられていた。
窓枠もまだ枠型にくり抜いただけだったけど
しっかり開けられていた。
椅子とテーブルの置いてある方へ案内すると、
大人しく入っていく。
そして窓枠の下に腰を下ろし
膝を抱えてしまった。
メリイザザは入口に待機したまま
女の子を背に部屋の入口に陣取った。
私たちは一度リビングに集まり
話し合った。
「お前が慎重に進めようと言う理由が分かった。」
「ええ、そうね……
あの様子じゃご飯もまともに食べていないわ。」
「あの子だいじょうぶかな?」
と家族で話し合っていた。
食事はメリイザザを通して渡し、
様子を見ること。
準備が出来た寝具の搬入は
メリイザザが。
無理に話しかけない事。
あとは様子を見つつ
その都度相談という形で落ち着いた。
今、話し合って勝手に行動を起こすと
あの子に何があるか分からないし、
メリイザザがどういう行動に出るかも
不明だからだ……
―
ルカは部屋の前を通っても
声を掛けなかった。
両親の手伝いをしている時
窓を気にする事はあっても、
覗こうともしなかった。
女の子の話も出ていた。
心配はするけど近づこうとしない。
私はそんなルカを見ながら、
感心するだけだった。
―
受け入れ後一か月ほど経過した。
女の子はいまだに部屋にこもっている。
その間に変化があった。
メリイザザは最近、
作業所の片隅にベッドを置き、
夜はそこで寝るようになった。
夜遅く、
女の子が眠った事を確認すると、
暗い作業場へ戻って休む。
食事を受け取りに来る時、
女の子の状況を
マローネさんには
話してくれるようになったそうだ。
今日は村の子供と一緒に遊んでいるルカ。
男の子と女の子と三人で追いかけっこをしていた。
子供の賑やかな声を聴いた女の子は
少し気になったのか
窓枠から少し覗き込む。
数秒見た後、
すぐ両膝を抱え込んで座り込んだ。
その様子を見ていた
メリイザザは驚いた。
今まで何度か子供たちの声は聞こえていた。
でもその声に反応を示したのは
初めてだったからだ。




