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六章 十八話 出立

商隊の出発の日


今回の交易は今までで一番の規模と、

そしてボアの肉の提供を受けたことで、

子供から農家の老夫婦まで、

全ての村人が集会所の前に集まっていた。


今まで何度か見た光景とは全く異なる雰囲気。

でも悪いものじゃない。

寧ろ感謝の気持ちが皆から溢れている。

それはガランさんやガラムさんも感じている様子で、

村長も盛大な見送りに満足そうにしていた。


私は今後お世話になる蒼鱗の皆へ、

挨拶をして、

少しの会話の後、

「また会いましょう。

そして今後とも宜しくお願いします。」と伝えた。

その言葉に笑顔で了承してくれたロアさんたち。

そしてそのまま村の外へと向かっていった……


馬車の前では、

村の人たちの感謝の言葉と笑顔の中、

ガラムさんが皆へと声を上げた。

「今回も素晴らしい交易になりました。

皆さんに感謝を。

ありがとうございました。

今後ともトルヴェール商会を宜しくお願いします。」

そして頭を下げた。


村の皆も頭を下げて感謝をそれぞれが口にしている。

その様子に満足そうにうなずき、

ガランさんを馬車へと案内した。


「今回は貴重な経験が出来た。

シエ村には今後ともいい関係を築けるよう、

我が商会もまた力を尽くすとお約束する。

また機会があれば私も足を運びたいと思う。

では皆さん……

今後とも我が商会と、

我が息子ガラムを宜しくお願いします。」

そういってガランさんが頭を下げた……


大人たちが息をのんだ。

商会長という雲の上の存在が頭を下げたのだ。

その光景に大人たちは息をのむだけだった。


そんな中、二つの小さい人影が近寄って行った。

ルカとソエルだ。


「ガランさん、また遊びに来てください。」

ルカが元気にそして一生懸命、丁寧な言葉で伝えていた。


「ガランさん、今度一緒にピン倒しであそぼ?

次来るときはもう少しゆっくりしてほしい…です…」

そして遊ぶの、約束…です!」

なれない敬語を何とか紡ぎ、

一緒に遊びたいという気持ちを伝えていた。


その言葉を聞いたガランさんの雰囲気が一気に変わり、

威厳のある商会長の姿から、

孫に遊びに誘われたような優しい笑顔を浮かべていた。


そしてソエルの前にしゃがみ込んで話しかけた。

「ソエルだったな……

では約束しよう。

次に私が来るときは時間を作って是非一緒に遊ぼう。

私とソエルとの約束だ。」


「あー、ソエルずるい!

ボクも遊びたいよ?」

ガランさんの言葉を聞いたルカもすぐに反応した。


それからは大変だった。

厳格そうだった雰囲気をまとっていたガランさんが、

優しい雰囲気に変わったことで村の子供たちが、

一気に周りに集まりだして、

皆が一緒に遊びたいと言いだした。

その光景を見た大人は、

ただおろおろするだけだった……


子供たちの勢いに、

最初は戸惑う様にしていたガランさんだったけど、

すぐに笑顔を浮かべて子供たちに話しかける。


「私はすぐ来ることは申し訳ないが出来ない。

私は忙しいのでな。

でも約束しよう。

いつか時間を作りまたこの村に来る。

その時は皆で競争でもしようか。

そうすれば皆で遊べるだろう。

その時は私だけではなく、

ガランとヨハンも一緒に遊ぼう。

二人とも良いな?」


ガランさんの言葉に驚くガラムさんとヨハンさん。

でもすぐにうなずきその言葉にこたえるように

「それはいいですね。

その時は私もぜひ参加します。」


「私もガラン様とガラム様のお誘いなら喜んで。」


その言葉に子供たちは大はしゃぎ。

「やくそくね。」

「楽しみー。」

「次いつくるの?」

など、さまざまな声がかけられていた。


子供たちにもみくちゃにされながらも嬉しそうなガランさん。

「出来るだけ早く来れるように調整する。」

そう子供たちと約束をしていた。

「会長、そろそろ……」

その言葉にうなずき馬車に乗り込んだ。

ガランさんの馬車に乗る後姿は少し寂しそうに見えた。

そして馬車の窓から顔をだして、

子供たちに声をかけた。


「私が来るのは時間がかかるかもしれん。

だが、かならず約束を守る。

では、また会おう。」

そう言い残して馬車は村の門をくぐって行った……


子供たちは笑顔で手を振っていた。

数人の子供が馬車を追いかけようとした所を、

親に止められていた。


こうして、春先の交易市は大成功のうちに終わった。

その後には子供たちの嬉しそうな笑顔と、

大人たちの満足した顔が村中に広がっていた。

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