六章 九話 交易市当日②
外に出て周囲を見渡すと、門の方にメリイが見えた。
その周囲には見覚えのある冒険者たちがいた。
確か鉄鎖の盾だったかな……
メリイの後ろで手を振る鉄鎖の盾の人たち。
私は歩み寄り声をかける。
「お久しぶりですね。
皆さんお元気そうでよかったです。」
「久しぶり、お陰様でな。
君も元気そうだな……ええっと…ミノリだったか?」
「ああ、失礼しました。
まだ名乗っていなかったですね。
私の名前はミノリと言います。
名乗りが遅れて申し訳ないです。」
「ああ、気にしないでくれ。
俺の名前はジーク。
このPTでリーダーをやっている。
こっちはカイル、こっちはフィオナ、そしてナナリだ。
以前は大変世話になったな。」
「カイルだ。」
「フィオナよ。」
「ナナリです。」
私は笑顔で挨拶を交わした。
「改めまして、ミノリさん。
私の名前はフィオナ。
ガラムさんは貴方の事を良くお話になるのですよ?
今時には珍しい、自分を顧みないほどの善人で、
子供を第一に考えると……」
そう言って、フィオナさんはほほ笑んだ。
「そんな事ないですよ。
むしろガラムさんには大変助けてもらっています。
あと、子供を第一に考えるのは当たり前です。」
クスっと笑ったフィオナさんと少しあきれ顔になるメリイ。
ジークさんとカイルさんは唖然とした様子だった。
「お前変わってるな。」
ジークさんがそう言うとメリイが返した。
「こいつは何時もこうだ。
子供の事に関しては一切ぶれないぞ。」
褒めてるのか分からない言葉を話した。
「メリイ。
お前も人の事は言えないぞ?」
私の言葉に反論するメリイ。
「お前よりはましだ。」
そのやりとりを見たフィオナさんが笑いながら声をかけてきた。
「仲良く過ごせているようでよかったわ。
メリイって少しお堅いところがあるから少し心配だったのよ?
でもその様子なら、大丈夫そうね。」
嬉しそうに話すフィオナさんはここぞとばかりに話した。
顔を背けながら、
「余計なお世話だ。」
と話すメリイは、いつもの雰囲気とは違って見えた。
メリイとフィオナさんは笑顔でやり取りをしている。
「そうだ、ミノリさん。
折り入ってお願いがあるんだが……」
そういってナナリの方に目を向けるジークさん。
ジークさんが私にお願いするのは一つしかない。
以前、武器を強化した事だと思った。
それしか接点がなかったし、
以前はいなかったナナリさんを連れている。
そういう事なのだろう。
私たちは一度、門から外に出て少し進んだ先で話をつづけた。
「すまないが宜しく頼めないだろうか。」
「構いませんよ。
メリイにはお世話になっていますし、
そのお礼です。
ついでにメリイの剣にもクリエイトを使おうか。」
それからはナナリさんのローブと杖を預かり、
【クリエイト】と呟く。
杖とローブが光を帯び、次第に薄れていった。
杖には魔力増幅、消費魔力軽減、耐久性
ローブには防刃、衝撃緩和、魔力障壁
を頭に浮かべて【クリエイト】を使った。
強化が終わりナナリさんに手渡すと目を見開いた。
三人は一度見ていたはずなのに、
再び驚いていた。
ただメリイだけはまたかというような顔をしていた。
そしてメリイの剣にも【クリエイト】を使うと、
メリイも目を見開いた。
「今まで何度か見たことがあるから知ってはいたけど、
ここまで変わるのか……」
以前、メリイの服を作った時は、
そこまでポイントを詰め込んでいなかった。
今回はジークさんたちと同じように、
1000ポイントをメリイの剣に注いだ。
以前は武器には切れ味と硬度、軽量化、耐久性
ローブや服、盾には硬度、防刃、衝撃緩和、そして魔力障壁
杖には魔力増幅、消費魔力軽減、耐久性
過去の知識にあるものを想像して使った。
強化された実感は、私には感じられない。
けど、メリイが驚くほどだ。
それなりに強化はされたんだろう。
「ありがとう、ミノリさん。」
ジークが頭を下げて感謝を伝える。
ナナリさんも気を取り直したようにたたずまいを整え、
「ありがとうございます、ミノリさん。」
「気にしないで下さい。
それにメリイの武器の事も良い機会になりました。
あまり大っぴらにするのは困りますけど、
これ位なら大丈夫です。」
「ありがとう、ミノリ。」
私はいいよと軽く返した。
「それじゃあ私は失礼しますね。
メリイ。
メリイはいつも子供の為に気を張っているんだ。
たまには息抜きにPTとのんびりするのも良いと思うよ。」
そう言って村の中へと歩き出した。
取引も終わり、今日の予定はもうない。
のんびり見て回ろうかなと思って歩いていた。
集会所の前に村長とガラムさん、アニスさん、セリアさんが、
馬車から積み下ろされる、
何か布で包まれた大きな荷物を前に話をしていた。
「あ、ミノリさん。
これから何かご予定はありますか?」
「いえ、今日はもう予定はないですね。
なのでのんびり歩きながら見て回ろうかと思っていました。」
私の言葉を聞き目を輝かせたセリアさん。
「では、申し訳ないのですが、
村を回りながら今日の夕食は広場に集まって、
皆で食事をしようと声をかけて頂けますか?
ガラン様が旅の途中でボアを倒したそうなんですが、
そのお肉を提供してくれるそうなので。」
その声は喜びの感情を隠し切れない様子だった。
「わかりました。
では皆に声をかけていきますね。
その後広場へ向かい準備を手伝いますよ。」
「ありがとうございます。
では、宜しくお願いします。」
「はい。」
そういって広場へと向かった。
ボアの肉かー。
干し肉は食べたことがあるけど、
生の肉を使った料理は初めてで楽しみだ。
そうなると、あれが欲しいな…
そう思い今日の夕食を楽しみにしながら、
村の散策しながら声をかけて行った……
一通り声をかけた後、
私は作業場へと向かう事にした。
あるものを作るためだ。
作業場で木材を使い[クリエイト]で長串を作り、
生前に愛用していた牛刀を【クリエイト】を使い作り出した。
黒檀の鞘に黒檀の持ち手の刃渡り三十センチの牛刀。
その手になじむ感触は久しぶりだった……
その懐かしい感触を惜しみつつ、鞘にしまい、
少し休もうと思い、ため池へと向かった……
倉庫を超えた辺りで声をかけられた。
「ねえ…ちょっとお聞きたいのだけど?」
その女性の声に振り返った……




