六章 七話 外伝
この話は外伝となっています。
さきに本文を投稿していますので、
お間違えの無いようにお願いします。
―ガラム視点
今回、商会長であり、私の父親でもあるガランも同行していた。
その為、普段は馬車二台の行商隊の規模が、五台にまで増えていた。
それに伴い、護衛も普段とは比べものにならないほどの規模になっていた。
今は金ランクにまで上がった鉄鎖の盾PTの他、三組のPTが同行していた。
しかも、そのうちの一組は大陸でも五本に数えられる白金ランクのPT、
蒼鱗だ。
リーダーは六階位まで扱える魔術師。
他の三人も五階位、あるいは六階位まで届くと噂されるほどの実力者たちだ。
残りの二組も銀ランクの者たちを確保していた。
道中、獣皮の村コルとベルデの間でビッグボアの群れの襲撃を受けた。
コルの冬眠明けを狙った大規模な狩りの残りだろう。
十頭近くのビッグボアは蒼鱗が数秒の内にせん滅した。
金以上の冒険者が戦う所を見るのは初めてだったが
凄まじいの一言だった。
特にエルフの風魔法が数頭の首を落としたのは衝撃的だった。
その日の野営時
父上から声がかかった。
「ガラム。
ボアの肉の一部をシエ村の手土産にどうかと思うが、
お前はどう思う?」
「喜ばれるかと思います。」
「ウム……」
「牙などは使い道がないかと思いますので、
二頭分の肉を無償で渡し、検品の報告を聞いた後で、
父上の判断で追加する方向でよろしいかと思います。」
「そうだな。ではそのように動こう。」
「はい。」
この日はその場で野営の準備をして、
ボアの解体と処理、そして保存の為に時間を費やした。
それ以降は単体の魔物が一度出ただけで、
日が傾く前に無事シエが見える所まで進むことが出来た。
シエに近づくにつれ何か胸が高鳴る。
何か幸運が舞い込みそうな……
そんな雰囲気を感じた。
シエ村の穏やかな雰囲気は、毎回のことだった。
だが今回は少し違う。
父上が居る事。
父上がどう判断するか。
それが良い方向へ行くという直感なんだと思う事にした。
シエ村の中に入ると今までと違う。
春先の風と香りが、
どこか涼やかな不思議な心地を運んできた。
数か月ぶりのシエ村を見回していた。
その時、ふと耳に入る。
蒼鱗の一人がリーダーに何かを話している。
馬車を止め落ち着き次第、
一人で索敵に出ると言っていた。
鉄鎖の盾の魔術師のフィオナさんが、
メリイに会うのが楽しみだと笑顔を見せていた。
他のメンバーも同様だ…
村長とセリアさんが集会所の入り口で私たちを歓迎してくれていた。
中に入る前にヨハンへ積み荷の確認を指示した。
そしてミノリさんへの伝言と
明日の為の検品を頼んで父上と一緒に中に入った。
村長とセリアさんとその後のシエ村の状況などを話して、
部屋を確認させてもらう。
私の部屋はいつも通りだ。
椅子に腰かけ背を伸ばし馬車移動の疲れをほぐす。
数十秒たったころ、
父上の使用人が私の部屋へとやってきた。
父上が休まれる部屋へと来てほしいという事だった。
私は部屋をノックして、中へと入った。
真っ先に目に入ったのは笑顔の父上。
その背には父上の体を気持ちよさそうに揺らす椅子。
私はその椅子を見て驚いた。
今まで見たことのない椅子があった。
ゆりかごの様に揺れる椅子。
そしてテーブルの所にある、
模様を施された椅子。
その二種類の椅子のひじ掛け部分には模様が掘られた、
引き出しのようなものも見えた。
そして父上へと視線を戻した。
笑顔で口を開いた父上が言った。
「この椅子は私の物として買い取る。
もう一脚もだ。」
私は頷き椅子の交渉も行う事を決めた。
その後は
村長とセリアさんと打ち合わせをした。
何か新しい交易品はあるのか?
シエ村が次回欲しいものは何か?
を話し合った。
一時間程話をした。
話し合った中で出た内容に気になる言葉があった。
新しい交易品のピン倒し。
そしてため池の完成に子供が遊ぶための水場。
水場など貴重な水を子供を遊ばせるためだけに作るとは、
私の予想を超える出来事だった……
日差しが弱くなったころ、
ヨハンの助手が箱を抱えて戻ってきた。
アニスさんも一緒に来ていた。
集会所の前で運んでいるピン倒しを見て、
「説明が必要でしたら、お呼びください。」
そう声をかけられたそうだ。
私は父上にその話をした。
ピン倒しを父上の部屋へと持ち込み、
確認をした。
そして興味を持った父上がアニスさんを呼ぶようにと、
運んできたヨハンの部下へと指示をだした。
アニスさんを部屋に招き、
ピン倒しの説明を受けた。
子供が計算を覚える機会が自然につくれること。
そして競い合い楽しめる遊具として十分商品になること。
球を転がす為の台を任意で好きに出来ること。
などが商品として素晴らしいと思った。
父上も満足そうにしている。
ただ気になった部分もあった。
権利を譲るのは可能。
ただこの商品の独占販売という形にはしないでほしいと言うのだ。
色んな人がプレイヤーを、
好きなように作れるようにと言う事だった。
それでも十分だと思った。
貴族から発注を受ける可能性もある。
父上も同じ意見のようで、その提案を快諾した。
父上の部屋には二人だけになり、
父上が口を開いた。
「ミノリという男、面白そうじゃないか。
木吊り台を作ったのもその男なのだろう?」
「はい、その通りです。」
「お前が言ったことが理解できた。
確かに面白い。
工業のみならず、遊具にまで発想を広げる。
会えるのが楽しみだな。」
「明日、一人でこちらに来ていただくように伝言を頼みました。」
「さすがワシの息子だ。
仕事が早い……」
「ありがとうございます。」
「明日が楽しみだ。」
――メリイ視点
門をくぐる小隊を柵の陰から見ていた。
私が所属していた鉄鎖の盾の面々。
一人知らない顔がいるけど間違いない。
そして一人の冒険者が目に入る。
上位冒険者として有名な人物だった。
人柄は温厚。
民の為に身を顧みず魔物を狩る者……
そしてその冒険者と楽しそうに話をしているメンバ―達。
その様子を見て、私は安心する事が出来た。
他のPTも同様で悪意も一切感じないし、
不審な様子も見受けられない。
私は少し安心して村へと戻って一通り警戒して回った。
そして、森に足を運び、体を動かした。
万が一の際は即座に動けるように、
さらに体をほぐしたかったからだ…
踏み込んで切り、踏み込んで突き、
剣の感触を確認しながら体を温めた。
そしてほどよくほぐしたころに声をかける。
「私に何か用ですか?」
私は一本の木へ視線を向けた。
「あら、やっぱり分かってましたか。
剣を振りながら常に意識されていたので分かってはいたのですが、
声をかけて邪魔をするのもどうかと思ったので…
邪魔をするつもりは本当になかったのよ。
ごめんなさいね。」
その声は先ほど楽しそうに話をしていたエルフだった。
その髪は白金の綺麗な髪をなびかせていた。
「……いえ、悪意も感じませんでした。
気になっただけ……ですので、お気になさらず。」
「堅苦しい話し方が苦手なのね。
普通にしても良いですよ。
あ、申し遅れました。
私は蒼鱗の一人、ロアよ。
見ての通りエルフ。」
そういって右耳を見えるように顔をそむけた。
「私は元鉄鎖の盾のメリイ…ザザだ。
今はPTを抜け、このシエ村で生活をしている。」
「貴方がメリイザザ…さんですか。
お噂はかねがね。
有能なソロ冒険者が鉄鎖の盾に加入して、
地竜を討伐した話は有名ですよ?」
「もう過去の話だ。
私はシエ村のメリイザザだ。」
「私の前でザザはつける必要はないわよ。
あんな悪習…私も大嫌いですので。」
その目は本気で嫌悪感をしめしていた。
「わかった…で何か御用?」
「ああ、ごめんなさい。
この街道から外れた村に、
不釣り合いな実力を持ったものが居たので、
もしかしてと思ってね。
鉄鎖のメンバーの貴方が一人残った話も有名ですもの。」
「そうか……」
私はその言葉の真意を確かめようとその目を見つめ続けた。
一切の悪意も嘘も感じられない。
私は警戒を一段落とした。
「助かるわ。
一対一で対立すると面倒になるもの。
それにこんなきれいな場所で争う気は
私にはないわよ。」
ロアはそう言って周囲を見渡して目を閉じた。
数秒の沈黙の後口を開く。
「本当にここは美しい魔力と可愛い子たちが多いわね。
ガラムさんが気に入るわけだわ。
あの人、普通の商人とは思えないほど善人だもの。」
そう言ってほほ笑むロアの表情は、
この村の雰囲気に近い少し温かみを感じる気がした。
「私も気に入っている。」
「そうでしょうね。貴方もまたそうなのでしょう。」
その言葉が少し引っかかった私は聞いてみることにした。
「どういう意味だ?」
「……あなたもまた善人だという事よ。」
そう言ってまた笑顔を浮かべた。
「それじゃあ私はもっとこの周辺を見て回りたいから…」
そう言って振り返り「またね。」
村の方向へ歩いて行った。
「あれがロア……
白金の知者……」
気が付くと手のひらが汗ばんでいた。
圧力を感じたわけではない。
けれど得体の知れない者と会話をした。
そんな気持ちが残っていた。
――ロア視点
ほんとうにおもしろい子だったわ。
元は大剣使いだったはず。
PTを抜ける前に片手剣に変えたらしいけど、
あの動きは長年片手剣を使っていた物の動きだった。
ひょっとしたら銀…いえ武器次第では金にも届きそう……
勿体ないわね。鉄鎖と行動を共にしていたら、
もっと伸びていたでしょうに……
待って……
この村に住んで数か月。
片手剣に変えたばかりであの腕。
冒険者として活動をしているわけでも無い。
この村の周辺の魔力は魔物が出にくい感じがする。
それこそエルフの村の様に…
魔物の魔力を吸収していないのに、
大剣を超える力をつけた?
理解が出来ない……
でもこの村が面白いのは確かだった。
私は自然と笑顔になり、
足取りを弾ませながら、
村の周辺を見て回り、
心地の良い魔力と空気を満喫した。
そして村の北側にため池を見つけた。
村の規模に反して大きなため池。
いえこれが普通なのかもしれない。
でもこの場所でこれを作るだけの労力があった?
よく見るとため池はまだ新しく見えた。
そしてため池の水を一すくいして見つめる。
……私は息を飲んだ。
そしてため池に繋がる用水路を確認した。
魔力で固められた蓋がかぶせてあったので、
私にはすぐにわかった。
その水路をさかのぼって走る。
木々を避け岩を避けひたすら全力で進む。
その先に川があった。
そこからさらに川上に進むと滝が見えた。
私はその場に留まり息を飲んだ。
その美しい景色の滝は大きいわけでも無い。
それでも自然と涙があふれた。
私はただ目をつぶり膝をついた。
何時か時間を作り、
滝の向こうへ行くことを心に誓った……
外伝をお読み頂き、ありがとうございます。
外伝まで読まれる方がどれほどいるのか分かっていないのですが、
確実に一人はいるのは分かります。
それとももっと?
ルカの世界は三話以降、
ルカのセリフに任せてシナリオを進めているので、
プロットもない状況で毎日書いています、
その為、破綻箇所ないかなとか、
この設定であってたっけ?など、
疑心暗鬼のまま進めています。
それでも私自身がルカの世界を好きになっているので、
今後も更新を続けていきます。
今度ともよろしくお願いします。




