六章 六話 交易市前日①
商隊到着予定日
前日ですべての準備を終える事が出来た。
その為サウロ家はマローネさんとサウロさんとメリイ以外は、
家で待機する事になった。
手伝いで忙しいサウロさんとマローネさんの代わりに、
明日の交易市当日の前の検品をするため、
私が対応する事になったからだ。
メリイは商隊が来るという事で、
当然商隊に追従する護衛もいるという事で、
その警戒をすると言っていた。
そしてカカさん家族は、トトさんの手伝いをすると言って、
朝早くに石工へと向かった。
検品するまで時間を持て余した私たちは
昨日ルカが欲しいと言っていた椅子を作ろうと思った。
もちろんルカの物だけじゃなく、
ソエルとココちゃんの分もだ。
子供用の小さい「揺れ椅子」(ソエル命名)を三脚。
[クリエイト]を使って作った。
そしてもう一脚は大人サイズで作り、
それを分解して並べた。
これでマローネさんがすぐに作れるようになるだろう。
ルカは喜んでその椅子に座って、
前後に揺れながら大満足そうにしていた。
ソエルもまた大満足そうだった。
ただルカと違うのは揺れ椅子を少し楽しんだ後、
ばらばらのパーツと揺れ椅子を交互に見ては、また座り直す。
真剣なのに、目はキラキラしていてかわいらしかった。
そして口を開いた。
「ねー、ルカ。
ルカが木を削って、私が整えてさ、
サウロおじさんとマローネねえの椅子を作らない?」
その言葉を聞き椅子からはじかれるように降りて、
「良いねそれ!
ボクも賛成。
作るまで内緒にしてさ、
おとうさんとおかあさんを驚かせようよ。」
その提案を聞いたソエルは大きくうなずき、
「うん!
そうしよう!」
ルカとソエルはすぐに作業に取り掛かった。
私は子供たちの行動力に驚きつつも、
近くで見守ることにした。
けれど、見ているだけでは手持ちぶさたになったので、
前から感謝を伝える存在を、
目に見える形にしようと思った。
余った薪を三本使って、
三つの像を[クリエイト]を使い作ることにした。
一つは青白い衣装に膝まで伸びた髪を持った、
母性そのものの存在であるイルミナ様。
一つは勇猛に見えてそれでいて目は優しく、
全てを受け入れ、温かく包んでくれる大柄なアルティオ様。
最後の一つは背は低く、男性とも女性とも受け取れる存在。
声は少女で話し方も気軽い感じだった。
けれどイルミナ様やアルティオ様と同じように、
威厳に満ちた存在のレピエ様。
その像をつくり、子供が遊ぶ水場の横に、
子供を見守って欲しいという願いを込めて、
祠に祀ろうと思ったのだ。
目をつぶり今でも思い浮かぶ三神の姿を思い描いて
[クリエイト]と呟く。
今まで[クリエイト]を使って光る事はなかったのに、
その時だけはなぜかまばゆい光を放った。
それは水場を作った時とは比べ物にならないほどに……
作業場をあたたかな光が広がり、
ルカとソエルも作業中の手を止め、
驚きの顔を浮かべて、
私の方へと目を向ける。
一瞬驚いた私は目を開けて、手に持っていた像を見る。
すると木製のはずの像が、
なぜか淡い光を放っているように見えた。
先ほどはものすごい光を放っていたのに、
驚いて目をつぶった…
けど不思議と眩しさは感じなかった。
ルカとソエルも眩しさを感じていないようで、
ただ驚いた顔でこちらを見ていた。
「おにいちゃん……
何を作ったの?」
恐る恐るといった様子で聞いてくるルカ。
そして無言で私と像を見つめるソエル。
驚かせてしまって申し訳ない気持ちになった。
「ごめんね、ルカ、ソエル。
私が感謝を伝えようと神様を像にしようと思ったんだけど、
あんなに光るとは思わなかったんだ。」
私の言葉を聞いて驚きから笑顔になる二人を見て、安心した。
「そっか。
きっと神様がほめてくれたんだよ。」
と笑顔で言うルカ。
「うん。
すっごい光って綺麗だった。
きっとルカの言う通りなんだよ。
すごいよミノリにい!」
そういって私のもとに寄って来る二人。
「おにいちゃんがお空にお礼を言ってる神様たちなの?」
像に目が釘付けのルカが聞いてくる。
「そうだよ。
私が感謝を伝える三柱の神様の一人、イルミナ様だよ。
イルミナ様、アルティオ様、レピエ様のおかげで、
ルカとソエルに出会えたんだよ。
私にとってルカとソエルは宝物だからね。
三柱の神様たちがいなければ、
私はルカとソエルとこうして一緒に暮らせなかった。
私を導いてくれた三柱。
その神様の像を水場の横に置いて、
子供たちを見守ってもらおうと思ってね。」
そう言って、手に持ったイルミナ様を、
両手で包み込み大事に地面に下ろした。
その後はアルティオ様とレピエ様の像も作った。
その度に暖かな光が作業場を包み込んだ。
だけど、ルカとソエルは眩しさを感じていないように、
平然とその様子を眺めていた。
しばらくその像を眺めていたソエルが口を開く。
「ルカ!
予定変更。
椅子の前に神様のお家作ろう。
水場で村を見守ってもらうなら、
お家あったほうが良いよ?」
「うん!
雨が降って濡れたら可哀そうだもんね。」
そう言って、ルカとソエルは、
椅子を作る作業途中の木材を奥へと隠して、
新しい木材を使って祠作りを始めた。
私はその気持ちが嬉しくて自然と笑顔になった。
そして簡単な三角屋根の祠を教えて、
子供たちの作業を見守り続けた。




