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六章 五話 それぞれの準備

翌日は交易市の準備となった。


村の広場ではテーブルや敷物を木の杭で固定して、

交易品を並べる準備をしていた。

その横には、出来上がったばかりの水場が見えている。


私はルカとソエルとメリイと一緒に、

集会所へのテーブルとイスを運び入れていた。


集会所の中には村長とセリアさんとアニスさんがいた。

アニスさんは私たちに気がつくと、

近寄ってきて挨拶をしてくれた。


ルカが元気に挨拶を返す。

「アニスおねえちゃんこんにちは。」


ソエルも元気に挨拶を返しながら、

昨日の事をうれしそうに話しだした。

「アニスねえ、こんにちは。

昨日は楽しかった。

また遊んでね。」

アニスさんの手を取って、

次の約束をしようと上下に振りながら話しかけた。


「もちろんよ、ソエルちゃん。

私で良ければいつでも誘ってちょうだい。」

満面の笑顔でそう答えたアニスさんの言葉を聞いたソエルは、

今度は腕だけではなく、飛び跳ねて喜んだ。


村長と会話をしていたセリアさんが、

驚いた様子で此方に視線を向けていた。


そして村長と話が終わったのか、

此方に歩いてきて私たちに声をかけてきた。

「こんにちは、みなさん。

搬入作業お疲れ様です。」


「「「おつかれさまです、セリアさん。」」」

私とルカとソエルの声が重なった。


私たちの挨拶を聞いて、少し寂しそうに目をふせたセリアさん。

それに気が付いたのか、ルカが声をかける。

「セリアおねえちゃん、どうしたの?」

首をかしげて上目使いでセリアさんの顔を覗き込むルカ。


「セリアねえ、大丈夫?」

ソエルもルカと同じように上目使いで顔を覗き込んだ。


その瞬間驚いたような表情を浮かべたセリアさんだったけど、

花が一瞬で咲いたようにパアッと笑顔になり、

「なんでもないわよルカ君、ソエルちゃん。」

そう言って頭を撫でた。


二人は嬉しそうに目を細めて頭をアニスさんに預けていた。

数秒、笑顔でルカとソエルの頭を撫でた後、私に相談を持ち掛けてきた。


「ミノリさん。

村長に聞きました。

貴方はクリエイトスキルで物を作れるというお話を。

広場の水場も貴方が作られたんですよね?」

そういったセリアさんの目は真剣そのものだった。


「ええ、私が作りました。

ただ何度も使えるスキルとは違うんですけどね。」

何度も何度も使えるものじゃないという事を、

しっかりと伝えた。


「そうですか……」

そう呟いて何かを考えるようなしぐさをしているセリアさん。


気になった私は話しかける。

「どうしました?

何か作って欲しいものとかがありましたか?」

そう尋ねると、「はい。」と小さい声で答えた。


「なにを作ろうと思ったんですか?」

何をお願いしようとしたのかはっきりと分からないので、

直接問いかけた。


「今回の交易は今までとは違うんです。

ガラムさんの父親である、

ガラン様もお越しになられるそうです。」

そう言ったセリアさんは不安そうにしている。


「ガラムさんの父親が来ると何か困るのですか?」

いまいちよくわからない……

何が問題なんだろう。


首をかしげる私を見た後、さらに口を開く。

「トルヴェール商会はこの国の王都に店を構える、

国一番の大店です。

その頂点の人がいらっしゃるんですよ?

ガラムさんは良い人ですけど、

そんな雲の上の人が来るとなったら緊張しますよ。

それに部屋も今までと同じでは失礼に当たらないかと、

今も村長と相談していたのです。

そこでミノリさん。

貴方のクリエイトスキルで家具などを、

作って頂けないかと思ったんです。」


その言葉には、シエ村の行く末を案じる気持ちと、

今回の交易が村の未来を左右するかもしれないという不安が混じっていた。


(でもどうする……

確かに【クリエイト】を使えば簡単に作れる。

実際ポイントも有り余っている。

でも、私が作って問題を解決しても、

それを他の人が作れないのなら、シエ村のためにはならない。

私が作れなくなったり、

ポイントが無くなった後も使い続けることを考えたら、

私にしか作れないものを作るべきじゃない……)

暫く悩んだ私はある事を思いつき、

その提案を聞いてもらう事にした。


「セリアさん。

商会長の部屋に置く椅子を豪華にするとか、

少し面白い椅子を作るだけでは駄目でしょうか?」


私の言葉を聞き、セリアさんだけではなく、

アニスさんまで目を輝かせて私につめよった。


「そんなものがあるの?

どういうもの?」

アニスさんが豪華で面白い椅子という物に反応を示した。


「いえ、十分です。

もともと普段の家具を使うつもりでした。

それが豪華になったりするのなら、

シエ村の体面を保てます。」

ほっとしたのか、笑顔になったセリアさんを見て、

私は行動を起こすことにした。


まずはマローネさんを探した。

いつもは集会所で準備をしているはずだったけど、

この時は居なかった。


メリイに探してもらい作業場に居たマローネさんと合流して、

綺麗な小箱の幾つかを貰って椅子を作ると伝えた。


どんなものか興味があるというので、

そのまま一緒に作ることになった。

加工前の木材と模様を施された小箱を[クリエイト]を使い、

形を整えた。


ひじ掛けの部分に綺麗な模様の入った小箱を付けて、

立派な引き出しの付いたひじ掛け付きの椅子を作った。

そしてもう一脚。

背もたれの高いロッキングチェアを作った。

ロッキングチェアにも、小箱を引き出しとして使えるように取り付ける。


それを見たマローネさんは目を輝かせて、

次は私が作って見せるわと意気込んでいた。

ソエルも、背もたれ部分に模様を彫ると言っていた。


ルカが「この椅子ほしいー!」

とロッキングチェアを見て飛び跳ねていた。


「今度小さいものを作ってあげるわね。

私も練習したいし、色々と試したいわ。」

マローネさんも良い機会だと思ったようだ。


こうしてアニスさんとセリアさんの要望に応えられただろうか…

そしてマローネさんも一緒に集会所へと向かい、

出来上がったばかりの二脚の椅子を運び込んだ。


セリアさんとアニスさんは大喜びだった。

ロッキングチェアと豪華な椅子を見て、

「きっと満足してもらえると思うわ。」

とうれしそうにしている。

村長さんもほっとした様子を見せていた。


―同日のトト視点


朝からカカとククとココがワシの元へと来た。

サウロ家は交易市の為の準備をするらしい。

ならそれを手伝えば良かろうに、

何故かワシの元に来て、

ワシらも何かで参加出来ないかと相談に来ていた。


しかし鉄もないのにワシらで何か作ると言っても何もない。

それでどうしようと言うんか……

そう思っているとココが何やら案があるらしい。

石を使い球を作れないかとの事だった。

石を使いワシらで球を削り模様をつけようと言った。


ココが考え、ワシらで何かしようと考えたことが、

ワシは嬉しく思い、その案を受け入れた。


その日一日、ワシらは肩を並べて、

球を削り、模様を彫っていた。

途中からはロク家族も加わり、

皆で話をしながら、楽しく球に模様を刻み込んでいった。


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