六章 四話 アニスの楽しい時間
その日は朝から来訪があった。
アニスさんだ。
ガラムさんの商隊が隣の村に到着したようだ。
二日ほどで到着予定だという。
そしてアニスさんに相談しようと思っていて
ずっと忘れていた新しい交易品を、
見せることにした。
ルカとソエルとココちゃんに実践してもらった。
私たちは床で遊んでいるけど、
長テーブルのような細長い台を作り、
ピンを立てる場所には印をつける。
両端には低めの壁と溝をつくり、
台から球が落ちないようにする方法も教えた。
※そしてボーリングの正式な計算方法も教えた。
「計算が複雑ですね……
難しいものは広まりにくいのではないでしょうか?」
「今話した難しいルールは大人用ですよ。
今ルカたちが遊んでいるルールはもっと単純です。
一度遊んで見て下さい。」
実際にアニスさんも遊んでみて、
大満足してくれていた。
ただ笑顔ではなかった……
またまた報告が遅れたことで、
白い目を向けられた……
「でも、このピン倒しは素晴らしいです。
当たって倒れる時の音も気持ちがいいですし、
子供も大人も楽しめると思いますよ。」
そう話すアニスさんは、
ピンを手に取り、くるくると回しながら眺めていた。
「そうだと嬉しいです。」
手に持っていたピンを置き私に向き直ったアニスさんが、質問をした。
「これも交易品にするのですよね?」
私は頷きながら答える。
「そうですね。
ただこのピン倒しは、
今までとは少し変わった契約にしてほしいです。」
私の言葉を聞いて首を傾げたアニスさん。
「どういうことでしょうか?」
「ガラムさんの商会の独占ではなく、
どこの村や町でも作れるようにしてほしいんです。
ピンや球はともかく、
特にプレイヤー、球を転がす人形は、
どこでも、誰でも好きに作って欲しいんです。」
「私は構いませんが、ミノリさんはそれで良いのですか?
この商品もきっと人気が出ると思いますよ?」
少し納得のいかない様子のアニスさん。
「今はこれまでの報酬で満足です。
球を転がすプレイヤーは、
遊ぶ人の個性で色々な形で作られた方が嬉しいでしょうし、
きっと楽しいと思います。
それにピン倒しのピンと球と台が普及したら、
プレイヤーを運ぶだけでどこでも遊べると思うんです。」
「なるほど…そういうことですか……
そうおっしゃるのならわかりました。
では今回はアイデアを提供するという形でよろしいですね?」
「それでお願いします。」
相談が終わると、「せっかくだしもう少し遊ばせてもらうわね。」
と言って、アニスさんは暫く家に留まって、
子供たち三人と(意識して子供たちの間)一緒に床に寝そべって
ピン倒しをして楽しんでいた。
「アニスおねえちゃん、がんばってー。」
まだ慣れていないアニスさんに声援を送るルカ。
「アニスねえ、もう少し真ん中狙うの!」
そのアニスさんにアドバイスをしてあげるソエル。
「アニスさんは右にそれている。
なら左から転がすのも良いと思う。」
ココちゃんは自分がやっている置き位置を変える方法を、
教えていた。
三人と楽しそうに話をしながら、
ピン倒しを楽しむアニスさんは、
今まで見たことがないほどの、
笑顔を見せていた。
しばらく遊んでいると
「皆、羨ましいわねー。
このプレイヤーは私も欲しいわ。
でも私は何かを作るのって苦手なのよね……」
三人の子供たちのプレイヤーを見ながらそう話すアニスさん。
それを聞いたルカが何かをひらめいたのか、
手を挙げて言った。
「それじゃあボクたちが作ろうか?」
ルカがそう言った途端、
満面の笑顔を見せて「ほんとう?」
と、ルカを見て期待に満ちた目をして見つめた。
「あー!それいいね。
前にアニスねえにはお世話になったし、
私たちで作ろうよ。」
ソエルも賛成の様子だった。
そしてソエルの言葉を聞いて、
驚いた顔をして少し口を開けてソエルを見つめるアニスさん。
「二人がプレイヤーを作るなら私は球を作る。
ルカとソエルがお世話になった。
私も手伝うのは当然。」
二人の話を聞いたココちゃんも、
その提案を受け入れた。
三人の言葉を聞いたアニスさんは、
「みんな……」そう呟いて目を潤ませた。
そして三人に抱きついた。
抱きつかれた三人は嬉しそうにしている。
その様子を見た私たちも、
自然と笑顔になっていた。
本作をお読みいただき、ありがとうございます。
※ピン倒しの説明部分でミノリが言ったセリフを書きました。
子供用ルールは単純な足し算だけで、
大人ルールはボーリングのルールそのままです。
ただミノリがどう説明したのかなど、
気になった方だけお読みください。
「基本の遊び方は
ピンは十本
一回の順番で、玉を転がせるのは 二振りまで。」
「子供ルール」
「倒したピンの本数が、そのまま点数になります。
十回やって、合計点がいちばん高い人が勝ち。
倒した本数を足していくだけです。」
「大人向け・本格ルール」
「一振りで十本全部倒すことを一撃と言います。」
(一撃という命名は本文には書いていませんが、
メリイが言った事を子供たちも強そうという理由で付きました。)
「一撃は十点に加えて、次の二振りで倒した本数を足します。」
ミノリは指を折りながら例を示す。
「一撃のあとに四本と三本倒したら……十点に七点を足して、十七点」
「二連撃
二回続けて一撃を出したら二連撃
二回続けて加算が入りますので、
自然と高得点になります。」
「三連撃
三回続けて一撃なら三連撃。
計算は一撃と同じだけど、三回続くとすごい点になります。」
「二振りで十本倒した場合は援護
十点に、次の回の一振りで倒した本数を足します。」
「十回目だけの特別ルール
最後の十回目だけは特別です。」
「十回目で一撃を出したら、追加で二振りできる。
二振りで全部倒した場合も、追加で一振りできる。
だから最後だけは最大三振りになります。」
「十回全部を一撃だと一回から九回までの九連撃と
最後の十回目は三回の一撃が加わるから、
合計で三百点になる感じですね。」
「大人ルールは複雑ですので、
子供ルールだけでもいいとは思うんですけど、
大人ルールの複雑な計算も、
子供ルールでしっかり計算できる人になら、
その方が楽しめると思います。」




