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六章 三話 春の贈り物

水場の完成から一週間。

トトさんと一部の村人との水路掘りと、

私と子供たち、そしてメリイとククさんで、

蓋を作り、村の中を通る水路にはしっかりと丈夫な蓋が覆いかぶさった。


そしてさらに時が流れ、

冬の寒さも落ち着いて、

冷たさの薄れた風が吹くようになってきた。


その風は近くの森から、

春の訪れの新鮮な空気を運んでくれている気がした。


そんな中、サウロ家では交易品である、

小箱や家具の制作の真っただ中だった。


男性陣は森に入り木を伐り、

メリイを除いた女性陣は交易品の作成。

メリイは森の警戒と薬草採取。


そして、そのメリイが、

表情を変えてこちらに走ってきた。

それはもう、気が付けば目の前にいると思うほどの速さで……

そして手に植物を持ち、

私に見せつけるようにしていた。


「すごいぞ、ミノリ!

これが生えていたんだ。クロッカスだ!」


その声を聞いて手元に視線を送ると、

名前の分からない花とフキノトウを持っていた。


「クロッカス?

ごめん、メリイ。

私にはちょっと分からない。

その花がどうしたんだ?」

首をかしげる私を見てあっけにとられたメリイ。

すぐに気を取り直して話し始めた。


「これはクロッカスと言って、

春先に咲く貴重な植物で、

高級薬草に使える材料なんだ。」


物に対して目を輝かせるメリイは初めて見たな。

今日は珍しいものを見た気がする……


「へー、それじゃあそれを村長に渡したら喜びそうだね。」


「ああ、間違いなくな。」

そう言ってメリイはクロッカスとフキノトウを

ルカの台車にゆっくり乗せて再び森の奥へと走って行った。


その様子を見ていたサウロさんとルカが台車に近づいてきて

台車に乗せられた花を見たサウロさんが話した。


「クロッカスが見つかったか。

こりゃ村長大喜びだ。

以前ルカが一度たまたま見かけて採取した時も、

大喜びしていたな。」


「うん。

すっごく褒めてくれたんだよ!」

元気にそう答えるルカ。

その顔はその時を思い出しているのか凄く笑顔だ。


「それは凄いね。」

そう言って手袋を外して頭を撫でると、

私に向かって笑顔を見せてくれた。


「そうか、クロッカスが見つかったか。

いよいよ春だな。

こりゃガラムさんもそろそろ到着するぞ……

よし、シオン、ルカ、ミノリ。

気合を入れるぞ!」


今まで黙ってみていたシオンさんも声を張り上げた。

「「はい!」」

「うん!」

サウロさんの掛け声に気合を入れ直した。


その日、メリイはさらに二本のクロッカスを見つけてきた。

貴重と言っていた薬草三本が、

私には多いのか少ないのか分からなかったけど、

メリイやサウロさん達の顔を見ると嬉しそうにしているし、

私も気にせず喜べばいいかと思った。


―マローネの作業場


作業を続けるマローネ、ソエル、ココ。

それを温かく見守り続けるカカとクク。


「ソエルちゃんの印彫りの作業もいたについてきたわね。

ココちゃんも上手にスキルを使って木を加工しているわ。

もう私が教える事はないわね。

これからは私と同じ細工師として、

これからもよろしくね。」


笑顔を浮かべるマローネを見て、

ソエルとココは満面の笑顔で答える

「うん、がんばる。

でももっともっと、

マローネねえに教わってもっともっと上手になる。」


「私はまだまだ……

マローネさんの言葉は私のスキルを向上させる。

もっと教えてほしい。」

笑顔で、でも目は真剣にマローネへと向け、

気持ちを伝えていた。


「もちろんよ、ココちゃん。」


マローネとソエルとココの笑顔は消えることのないまま、

作業を続けている。

そこへ風が吹き込んできた。


暖かな風が、

五人の作り出す優しい空気をそっとなぞるように吹き抜けた。


「少し暑くなってきたね。

帽子とろう……」

それはソエルが家の外では常にかぶっていた耳帽子。


それを脱いで、大事そうに横に置いた。

それを見たココも、

少し迷った後に帽子を脱いで横へとゆっくりと置いた。


脱いだ帽子をそれぞれしばらく眺めていたソエルとココ。

それを見ていたマローネが口を開く。


「その帽子お気に入りだったわね。」

笑顔でそう問うと、ソエルとココは笑顔を見せて答えた。


「うん。ミノリにいが作ってくれた大事な帽子。

しばらく被れなくなるけど、また次に被るのが楽しみ。」

嬉しそうにそう話すソエル。


「私も大事な帽子、うれしかった。

また一緒にかぶろうねソエル。」

ココもまた可愛い笑顔を見せてそう話した。


普段、作業中はあまり声を出さないカカとクク。

カカがココの髪を優しくなで、

その後ククもココの髪を優しく撫でていた。


カカが「次がたのしみね。」と笑顔を浮かべていた。

ククは「可愛い帽子姿のココは当分お預けね。」

と少し寂しそうにつぶやいた。


「そうねえ。

私も少し寂しいかしら。

でもまた次もあるんだものね。

私もソエルちゃんとココちゃんと同じように楽しみだわ。」


五人の会話は静かな春を教えてくれていた。

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