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六章 一話 シエ村のため池

総出での作業は驚くほど速く進んだ。

数日の内に用水路と排水路の脇には、

石くずがしっかりと積みあがって、

それが長い列になっていた。


その日手伝いに来ていた村人はみな喜んだ。

いよいよスキルを使い用水路と排水路を、

固める段階まで進めたのだ。


そして掘り取った土と石くずと、

石くずと石粉を混ぜていく。

二種類の材料をそれぞれ混ぜられ、

水路脇に盛られた山が二列、先へと延びていく。


私は用水路を、ココちゃんは排水路を、

それぞれが[クリエイト]で固めていく。


すぐあとにココちゃんが私のもとへ来て、

「どうやって固める?」と聞いてきた。

どうやらうまくスキルが発動しないらしい。

ただ固めることはできるけど、自分でも理解出来ていない様子だった。


私は最初に土と石くずが混じったものを使い、

圧縮して水との開口部分の表面に張り付けるようにする。

そしてその表面に石くずと石粉を使い

同じように固めて張りつけた。


「表面は滑らかなほうが良いと思うんだ。

だから最初は土と石くずで水の吸収を減らして、

表面に細かい石粉を使ったもので、

滑らかにすると良いと思うんだ。」


私の言葉を聞いて

「なるほど……」

そう言って私の言うことを反芻するように呟きながら、

[クリエイト]を使った。

私以上に滑らかな開口が出来た。


「理屈は分かっていた。

でもやるとうまくいかなかった。

助かった、ありがとう、ミノリ。」

真剣な顔で初めて私の名前を呼んでくれたココちゃん。

「どういたしまして。」と笑顔を向けると、

ココちゃんも笑顔を見せてくれた。


こうして用水路と排水路を私とココちゃんが分かれて作業を続けた。

最初は四時間で魔力切れを起こした私も、

少しづつ魔力切れまでの時間が伸びて、

五日目には六時間作業を続けても、

魔力切れが起きなくなっていた。


そして水路をスキルで綺麗に固めていく作業も、

いよいよ終わりを迎えた。

その頃にはため池にたまっていた雨水も、

数日の天候もあって湿った状態まで回復していた。


そしていよいよため池の最終工程を進めることになった。

後に聞いた話だと、手の空いた村人たちが、

水路を固める私たちの為に、水をくみ上げていたらしい。


ため池の作業はココちゃんが底の平坦な部分を、

私が傾斜部分を担当して水路と同じ要領で二層構造で固めていく。

そこからさらに二日……


ついにため池も完成する事になった。

今日完成予定という事もあり、

村中の人がため池の周りに集まっていた。


そして最後のクリエイトを使ったココちゃんが、

「終わった……」

その一言で村人の歓声が巻き起こった。


ココちゃんの声を聞き、

トトさんとククさんが我先にとため池の底に降り、

交互にココちゃんを絶賛していた。

ココちゃんは少しうつむきながら、

でも顔は満面の笑顔を浮かべて嬉しそうだった。


その日はため池の周りに幾つも焚火をたき、

干し肉に野菜、干し魚などが振舞われた。


まるでキャンプファイヤーだな……

そう思って、心の中が今までにない満足感と

幸福感が私の心を埋め尽くした。

視界の横に浮かぶポイントの表示と、

ポイントの増加を知らせる声は、

私の中で嬉しい気持ちで気にならなかった。


空を見上げて三神への感謝をする。

それはいつもの顔を見上げて祈るものじゃない。

膝をつき、手を合わせ、本気の祈りの様に……


ルカが「神様にお祈り?」

そう聞いてきた。


「そうだよ。

三神へお礼を述べていたんだ。

アルティオ様。

イルミナ様。

レピエ様。

三人の神様へね。」


その名を聞いたトトさんとカカさんは目を見開いて、

お互いを無言のまま視線を合わせ、うなずいていた。


それを聞いたルカは私の横に同じように膝をつき、

「アルティオ様、イルミナ様、レピエ様。

ありがとうございました。」

そう言って目をつぶり手を合わせていた。

それを見ていたソエルも、

私の傍に来て膝をつき、

同じように手を合わせて、祈るように目をつぶった。


それを見ていた村人たち。

一人は膝をつき同じように祈り、

またある者は立ったまま。

真剣な祈りを捧げる……


それ以降その日は村での小さな行事になった。

それは寒空に少し春の香りと、

温かさが村中を包み込むような、

そんなシエ村らしい日となった。


本作をお読みいただきありがとうございます。


三神と三柱の表現を未だに迷っています。

三人の神様を言葉に出すなら三柱が良いとは思うんですが、

分かりやすいのは三神かなと思ってそうしました。

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