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五章 十八話 呼び声の持ち主

ココちゃんを呼ぶ声が聞こえてきた。

その方向へ目を向けると、

ものすごい勢いで走ってくる人影が見えた。


その先にはソエルが居る。

その勢いでは危ないと思った瞬間、

ソエルの前に立ちふさがったメリイ。

その目の前で止まった人影はドワーフの女性だった。


「何ですの、貴方。」

目を細め警戒するドワーフの女性。


「何じゃないだろう。

いきなりソエルに向かって、

ただならぬ気配をまとって走ってきて。

そんなお前を近寄らせるわけがないだろう?」

メリイも目を細めた。


「貴方、私のじゃ……ソエル?」

そう言ってメリイの後ろにいるソエルに目を向けると、

急にひざを折り

「ごめんなさい、人違いみたいでしたの。」

そういって頭を下げてきた。

小さいからだがますます小さく見える姿勢で、

こっちの方に罪悪感が来る……


「頭を上げて下さい。

メリイもいきなりの事で警戒しただけですし。

メリイ、ソエルも大丈夫だと思うよ。」

ドワーフの女性とメリイに言葉をかけ、

そしてまたドワーフの女性に目を向けて話した。


「はじめまして。私の名前はミノリと言います。

あなたはココちゃんのお姉さんで間違いないですか?」

私の言葉を聞き顔を上げた女性は、

私に視線を向けながら立ち上がった。


そして上から下へ視線を向け私の目を見ながら話しだした。

「初めまして、驚かせてしまって申し訳ありません。

私は、トルヴェール商会の鍛冶技術部工房主トトの娘、ククと言います。

メルカティス連合商業国にある、食堂を営んでおります。

メリイさんですね。先ほどは失礼をしました。」

そう言って再び頭を下げた。


「私は問題ない。

ただ子供が驚きそうなことは慎んでくれ。」

そう言うと、メリイの雰囲気が落ち着いた感じがした。


「ええ、以後気を付けますわ。

私はココが水路作りに同行しているとお聞きしたので、

水路をたどって走って来たのですけれど、

ココはどこに居るのでしょうか?」

そう言いながら私たちに視線を向け、

そして、周囲を見渡すようにしている。


「ええ、確かにその通りなんですけど、

ココちゃんは今はトトさんとカカさんと一緒に、

排水路を掘っている所だと思います。」

私はココちゃんが今行っている作業の事を説明した。


「ちょっとお待ちになって……

ココが父と母と共に水路を掘っていると、おっしゃいましたか?

同行ではなくて……でしょうか?」

私の言葉が信じられないと言わんばかりの顔をしている。


「ええ。間違いないですよ。

同行ではなく一緒に作業をしているはずです。

ココちゃんは優秀らしいですから。」

そういって笑顔になる私を見て、

ククさんは数秒硬直した。


少し間があいたあと、口を開いた。

「どういうことですの……

父が水路を掘るという事も信じられないのに、

ココが優秀?鍛冶スキルだったはずですのに……」

そう呟いたククさんは顔を下に向け考え込んだ。


その様子を見て、みんなに顔を向けて、

首を傾げる私たち。

私たちが「どうしたんだろうね?」と小声で話す中、

ククさんが顔を上げてまた質問をしてきた。


「もう一つお聞きしてよろしいかしら?」

私に話しかけるククさん。

その声は落ち着いていて、透き通るようだった。


「ええもちろん。」

笑顔で答える。


「ココは心を閉ざしていたはず。

それがどうして、父と母と一緒に、

水路を掘るという事になっていますの?」

声は落ち着いている。

でも顔は複雑そうな、そんな印象を受けた。


「今のココちゃんは元気ですよ。

トトさん達と一緒に作業をして、

ルカとソエルと一緒に一生懸命遊んで、

可愛い笑顔を見せてくれています。」


「治った?メルカティスを出て、

一か月も経っていないはずですの。

それなのに本当に治ったとおっしゃるの?」

どうしても信じられないという感じで、

聞いてきた。


「ああ、すみません。

私からは詳細は話しません。

トトさんとカカさんに直接聞いて下さい。

でもご安心を。

ココちゃんが元気になったことは確かな事です。」


「そうだよ、昨日はココとトトさんとカカさんも一緒に、

皆で遊んだんだから。

ねー、ソエル。」


「そう。

楽しかったねー。」

ルカとソエルは目を合わせながら、

体を傾けて嬉しそうな顔をしている。


子供たちの様子を見て、あっけにとられた様子のククさん。

そしてサウロさん、マローネさんにも視線を送る。

黙って頷く二人を見て、ようやく信じたようだった。

そして、再び私に視線を向けて、口を開く。

「分かりましたわ。疑ったような形になってしまった事、

申し訳ありませんでした。」

そう言って頭を下げた。


「止めて下さい。

ココちゃんを心配していたんです。

仕方ないですよ。

実際私が同じ状況に立ったら同じだと思いますから。」


「分かりましたわ。」

そういって笑顔を浮かべた。


「それでココちゃんを探しているんですよね。

ため池から伸びた排水路を辿れば、

トトさんたちに会えると思います。」

そう言ってシエに向かう水路の先に視線を向けた。


「分かりましたわ。

私は先にココに会いに向かいます。

また後でご挨拶に伺いますわ。」

そう言って私たち全員に視線を向けたあと、

振り返ってもの凄い勢いで走って行った。


言葉遣いは丁寧だったけど、

嵐に遭ったような気持ちになった。

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