五章 十三話 雨の日の一時 中編
早速、薪を手にした私は[クリエイト]を使って、
一本のピンを作ることにした。
スキルを発動すると、
丸太の表面がまるで目に見えない彫刻刀で超高速に削られるように、
サラサラと木屑になって落ちていく。
それを見て慌ててスキルをとめ、
下に木箱を置いて、木くずを無駄にしないようにした。
そして、もう一度クリエイトを使い、
一本のピンを作った。
日本人なら誰でも知っているであろう、あの形だ。
ただサイズは手のひらサイズに縮小されている。
それを見たルカは「変なカタチ……」と笑って、
ソエルは「何でこんな形なの?人型でも良いんじゃない?」と言い、
ココちゃんは「足が丸いのは倒れやすい?上は頭?」
と職人らしい目線で分析みたいな事を言っていた。
「ねー、ミノリにい。
これ動物の顔を彫ったらダメ?」
と首をかしげるソエルに、私は答えた。
「うーん。確かにかわいくなると思うけど、
小さいからすごく難しいと思うし、
的にするんだけど、かわいそうじゃない?」
少し疑問に思ったことを聞いてみたら、案の定、
「「かわいそうだからダメ!」」とルカとソエルの声が重なった。
真逆の反応を示したのはココちゃん。
「ただの的。生き物じゃない。大丈夫。」
とこれまた少し冷たい様にも思える発言をした。
それを聞いたルカとソエルも納得したのか、
「それもそっか。」と即、意見をひっくり返した。
この辺のドライな考え方もこの世界特有なのだろうか。
いや、ゲームはゲームで楽しむ子は居たし、普通なんだろう。
少し悩んだ私は、一人で妙に納得した。
「今は私のスキルで作ったけど、
頭の部分に好きな絵を彫ったりして、
個性を出しても良いかもね。」
「「個性?」」とルカとソエルの声がまたもや重なる。
「個性というのはルカとソエルで好きな物や、
作りたいものが違うだろ?
人それぞれの考え方や、
好きなもの、嫌いなもの。
その違いを個性というんだよ。
その人だけの考え方とか、思いとかそういう感じかな?」
それを聞いたルカが「ソエルが彫った印?」と首をかしげて私を見る。
私はつい笑顔になって答える。
「その通りだよ。ルカ凄いね。」
そういって頭を撫でると嬉しそうに目を細めた。
「個性!
それにしようよ。
私とルカとココで違う絵を彫るのも楽しそう。
カタチとか変えてさ!
きっと楽しいよ?」
その言葉を聞いたルカとココちゃんも笑顔で頷いている。
嬉しそうにしているけど、それじゃあ良くないんだよな…
心苦しいけど、その事も教えてあげることにした。
「残念だけど形は出来るだけ同じほうが良いんだ。
理由はね、足の部分の太さだったり、重さだったりが変わっちゃうと、
人によっては倒れやすかったり倒れにくかったりするだろう?
それじゃあ不公平になっちゃうんだ。」
その言葉を聞いた三人は「「そっかー」」
とルカとソエルは納得して笑顔を見せ、
ココちゃんは「同じ大きさと重さ、難しそう。」
そういって首をかしげていた。
「うん。そこが難しいんだよね…
私がスキルで作るならいけるんだろうけど……」
ココちゃんの言葉を聞き、どうしようかと悩んだ。
(出来るだけ自分の物は自分で作らせてあげたい)
「問題ない。最後の整えるのはマローネに任せればいい。
大まかな顔や胴体はお前たちで彫って、
最後の調整だけお願いすればいい。
多少違いがあっても、数が揃えば、あとはマローネが直すだろ?
子供たちとマローネの合作だ。」
サウロさんがそう言うと、三人の視線がマローネさんに集中した。
「そうね。ソエルちゃんのいい練習にもなりそうだわ。」
ソエルとの作業が大好きなマローネさんは嬉しそうだ。
「えっと、それを十本作らないといけないんですよ…」
「十本?」ほぼ皆の声が重なった。
「はい。先頭に一本立てて、
その後ろに二本、三本、四本と並べるんです。
その合計が十本を三角形に並べて立てるんです。
先頭の一本にうまく当たれば、
一回で全部倒れるような感じですね。」
「それは大変そうだな…」
サウロさんは少し顔をしかめながらつぶやき、
「ちょっと大変かもしれないわね。」
マローネさんも手を頬に充てて首をかしげていた。
「ちょっといいかしらミノリさん。」
カカさんが急に声をあげた。
「どうしました、カカさん?」
「十本作るのは分かったんですが、
それって、一人一人が十本必要なのですか?
その十本で交代して遊ぶことは出来ないのでしょうか?」
その言葉を聞いて肝心な事が頭から抜けていた。
考えてみたらレーンを何個も作る必要はないんじゃないか?
卓上サイズだし、勝負をするにも、一セットあれば遊べる…
一人一セットは確かに意味が無いかも。
個性を出すならピン一本一本変えればいいんだ。
「私の知っているものを想像して、
いくつも作ろうと思ったのですが、
カカさんの言う様に一セットあれば十分かもしれないです。」
「えー?それじゃあこせいはどうするの?」
ソエルが個性というものに少しこだわりが出来たらしい。
「十本それぞれを私たちで、
分担して作ればそう難しくないかも。
置く場所に印をつけて、同じ並びにしておけば、
大きさや重さでの不公平感もなくなりそうですね。
皆、同じ条件になりますから。」
「それなら難しくないかもな。」
「ええ、一本一本を細かく合わせる必要がないのなら、
作るのはそこまで難しくないと思うわよ。」
「ありがとうございます。カカさん。
私が知っているものと同じものを作ろうと、
考えすぎてたみたいです。」
この思考はなかなか直せそうにないな…
「いえ。絵文字板の様に、
皆で同じものを、使うのではないかと思っただけですよ。」
「そうと決まれば意外に難しくなさそうだな。
重さや大きさも出来るだけ同じなら良いんだろ?」
「ええ、問題ないと思います。」
「それなら私とミノリで体を作る。
ルカとソエルは頭を作る。
ミノリ、スキルの練習になる。」
ココちゃんがそう言ってきた。
「なるほど、それは良いね。
出来ればみんなで作りたいけど、
体は私とココちゃん。
頭の部分はルカとソエルとマローネさんに、
作ってもらおうか。
マローネさん、ルカ、ソエルはどう?」
「やるー!おかあさんといっしょー。」
全身で嬉しいという感情を表している。
「あらルカも一緒に木工細工?楽しそうね。」
普段、ルカはサウロさんと作業をしている。
今はソエルが居るから一人じゃないけど、
以前は一人作業をしていたんだっけ……
マローネさんの嬉しそうな様子を見て、
ルカもおおはしゃぎだ。
「ルカ。私も一緒だよ。
それに人形の練習にもなるよ。
メリイねえも一緒ね!」
急に話を振られたメリイは、
少しためらいながらもうなずいていた。
そして、ソエルが言った人形という言葉に、
雪だるまを作った時の事を思い出したルカは、
「そうだね!」と嬉しそうに答えた。
「私は母とミノリと一緒に体、作る。」
ココちゃんもやる気十分だ。
「それじゃあ早速作ってみるか。」
そう言って子供たちを見るサウロさん。
子供三人はその言葉を聞いて、
「「うん」」「わかった。」と元気な返事を返した。




