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五章 十二話 雨の日の一時 前編

ため池と水路がつながり、

そして石を使った作業をしようと思った翌日。


ザー……ザー……

雪ではなく雨が降っていた。

雨が降ったことで今日は作業が出来ないことになり、

薄暗い部屋の中、私は今後の事を思考していた。


小部屋の外からはルカとソエルとココちゃんの楽しそうな声が聞こえる。

カカさんの声も聞こえることから、

絵文字板で遊んでいるんだろう。


子供の為にブランコや遊べる水場など、

色々考えてはいたものの、まだ完成出来ていない。


そう考えていたら、自然と苦笑いを浮かべていた。

私がこんなに色々と作ろうと思うとはね……


建築関係の仕事で腰を痛め、料理の仕事を始め、

しまいには足の痛みで普通に歩けなくなり…


そんな私が子供の為に何かを作るか…

自分でもよく分からない現状に笑うしかなかったからだ。


一人で考え込んでいたら、外からココちゃんの「一番!」

という声が聞こえてきた。

鍛冶ばかりで読み書きが出来ないと言っていたココちゃんが、

一番になったようだ。

(たった数日なのに……

物覚えも良いんだな。ほんと、私も負けていられないな。)


楽しそうな子供たちの声を聞き、

過去の私は何で遊んでいたかを思い出した。


家の中でも遊べるもの。

ボードゲーム…

トランプ…

リバーシ…

色々思いつくけど、せっかくサウロさん達が居るんだ。

木を使ったものを考えたいな。

そう思った。


リバーシなら問題ない。

丸く削って炭を使えば黒くなるだろう。

火であぶって黒くしても良い。


私が好きだった遊び。

ゲーム機は、【クリエイト】を使えば出すことはできる。

電池式の携帯のものなら使えるだろう。

でもそれはこの世界には出してはいけないとなんとなく思った。

体が動いたころは、野球、ボーリング、バドミントン……

色んな好きだったスポーツを思い出した。


野球はルールとボールが問題。

バドのシャトルは何とかなりそうだけどラケット…

ボーリングはピンにボールと問題がある。


野球盤…

ふと思った野球盤は?

それを作るとなると中のギミックが問題か…


そう考えているとふと頭に浮かんだ。

卓上で出来るボーリングなら…

球は木を削ればいいし、ピンも作れる。

大きさは思い通りで、家の中でも作業が出来るかも。

そう思った私は卓上ボーリングも作ることに決めた。


そしてしばらく卓上ボーリングの案を考えていると、

部屋のドアをノックされた。

「おにいちゃん、何してるの?

一緒に遊ばないの?」


私が部屋にこもっていたら、ルカが声をかけてきた。

ドアを開け、ルカに笑顔を見せる。

「ごめんね、ルカ。

今新しい遊びを考えてたんだ。」


「新しい遊び?紐でつりあげるの?」

新しい遊びと聞き、以前話したブランコの事だと思ったようだ。


「違うよ。今日は雨で何も出来ないだろう?

だから家の中でも作れて、遊べるものが、

絵文字板以外にもないかなってね。」


私の言った「絵文字板以外の遊べるもの?」

それを聞いたルカは目を輝かせて、私の手を引いて、

暖炉のあるみんなが集まる部屋へと引っ張っていく。


そしてみんなが集まる中、ルカが声をあげる。

「おにいちゃん。話して。」

声は弾み、目は期待に満ちていた……


その声に皆の視線が私に集まる。


「ええっと……ルカ。

まだ考えてる途中なんだけど。」


そういう私にルカは言ってきた。

「お家の中で作れて、遊べるんでしょ?

それなら早いほうが良いよ。」


ルカの言葉を聞き、

「ほう…新しい遊びか。

家の中で作れるって事は、そこまで大きくはないよな?

どんなものだ?竹とんぼの様なものか?

それとも絵文字板か?」

サウロさんも興味を示した様子で私に聞いてきた。


考えの途中だったけど、聞かれた以上答えるしかなかった。

「違いますね。木の板の上で球を転がして、

的を倒して、倒れた数の合計を競う遊びですね。」


「あら、面白そうじゃない。」

「面白そうね。それ。」

ご婦人二人も気になる様子で声を上げる。


そして私の言葉を聞き、

無言で目を輝かせ、私に視線を向ける六つの可愛い目。

すごくキラキラしている……


私は指で形をなぞるようにピンを描き、

「的を十個作って、その的を狙って玉を転がすんです。

そして倒れた数を足していって、最後に合計数を競うんです。

数を足したりするので、計算も覚えられると思います。」


「へえ、数の計算も覚えられるのは良いわね。」

マローネさんが食いついた…


「ココにはいい勉強になりそうだわ。」

とカカさんまで食いついた。


「俺にはあわんかもしれん。」

サウロさんは計算が苦手な様子だ。


私は苦笑いしながらサウロさんに話しかける。

「計算と言っても倒れた的の数を数えて、

最後に合計を出すだけですから。

この遊びはむしろ大人の男性に人気がありましたよ。」


「ほう、それならやってみても良いな。」

私の言葉を聞き、少し興味がわいたようだ。


「でも、元々は巨大な施設を使う遊びなので、

少し勝手が違うかもしれませんが。」

本格的なボーリングは、この世界ではまず難しい。

テーブル上で遊ぶボーリングがどこまで楽しいか、

正直私には分からない…

ルカに押されて説明はしたけど、どうなるんだろう…


私が少し考え込んでいると、

それを見たサウロさんがフォローを入れてくれた。

「まあなんだ。要は的あてだよな?

ならまあ、楽しめるだろう。」


「うん、楽しそうだよ?ねえソエル、ココ。」

「うん!楽しそう。」

「興味ある。」

三者三様で楽しみにしているようだ。


「ミノリさん。それって刃物を使うのよね?

ソエルちゃんは大丈夫だと思うけど、

ルカはまだ少し不安だわ。

それにココちゃんもどれだけ彫れるのか見たことないし。」


「もちろん大人が見ている前で作業はします。

ただ家の中でやるとなると木くずの問題もありますし、

すぐに作るのは危ないので…」


そういうと子供たちが声を上げた。

「大丈夫だよ。おかあさんがいる時にしか作らないし。」

ルカが必死に説得をしようと試みたようだ。


「そうだよ。それに雨の日は絵文字板だけじゃつまんないよ?」

ソエルは素直な気持ちを語りだした。


「彫るのも楽しそう。覚えたい…」

ココちゃんは彫るという工程を覚えたいようだ。

どこまでも職人気質なんだな。


それを聞いた大人たちは目を見合わせ、苦笑いを見せた。

そしてマローネさんが確認をする。


「大人がいる時だけ刃物を使う。

いつもの約束をちゃんと守れる?」

子供たちと目線を合わせて、優しく問いかけた。


「「守る!!」」

ルカとソエルは元気に返事をして、

ココちゃんは、真面目な顔をして無言でうなずいていた。


「それじゃあ薪を使って試しに作りましょうか。」

笑顔でそういうマローネさんは、仕方がないと言いつつも、

笑顔を見せていた。

安全面を注意するだけで、本当は最初から賛成だったんだろうな。

常に子供たちに注意を促すところは、流石だなと思った。


こうして雨の日の中、楽しい一日が始まる。

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