やさしさの挑戦
集会所に向かっていた私たちは
馬車が二台止まっているのが目に入った。
数人が建物の中に何かを運んでいて
見かけない人がアニスさんと会話をしている。
馬車を守るように一台に二人前後に配置して立っている。
腰を見ると剣を装備している。
護衛かな?と思いながら剣を眺めていたら
一人の男性の視線が私に固定された。
びっくりしつつ目をそらして入口に視線を向け
忙しそうだねと、
ルカ君に声をかけるとそうだねと返ってきた。
邪魔をしたらまずいかなと思いルカ君にどうしようか?
と聞いてみる。
交換が始まるのは明日からだからと教えてくれた。
そうか、すぐに始まるわけじゃないのか。
そう思いながら教えてくれたルカ君に感謝を伝えて
「どこか行きたい所はある?」
「うーん・・・お仕事のお手伝いしたいけど、
ぼくにできることもないしどうしよう・・・」
と少し悩みつつそう答えた。
ぶれないなこの子は
感心しつつ私も思考する。
作業所の整理はしたいけど
重たいものがあふれている場所での作業は
サウロさんの見えない場所では危険だろうし……
そうだ一緒に遊ぶものでも作る?
石ナイフや小さい斧ならルカ君も使っているし
今後の経験にも生かせるし良いかも……
いや待てよ……
何時もご両親の事を気にかける優しいルカ君なら
「ねー、ルカ君。一緒にサウロさんやマローネさんの為の
肩たたきでも作ってみない?」
と提案してみる。
「かたたたきって何?」
と聞いてくるので説明してあげる。
それを聞いたルカ君は目をキラキラさせて
「作ってみたい!」
と言ってくれた。
材料を取りに早速作業所へ向かう。
ルカ君が作業のしやすいように小さめの
テーブルとイスを[クラフト]する。
ルカ君専用という事もあって
すごく喜んでくれた。
私の方が嬉しくなる反応で心がぽかぽかする。
「まずは、片手で握れるくらいのひらべったい棒を作るんだ。」
その言葉を聞いたルカ君は慎重にゆっくりと
太めの枝を削りだしていく。
ルカ君の手より少し大きめがいいよと
途中で声をかけると
「おとうさんとおかあさんが使うからだね?」
と元気に答えてくる。
その通りだよ。と伝えると
ルカ君も満面の笑顔で
うん!と元気に答える。
ご両親の為だからなのかすごい上機嫌だ。
ある程度削られて形になった持ち手の部分。
今度はそこに穴をあけるように伝える。
おかあさんの道具を勝手に使っても良いのかな?
ルカは心配そうに言うと、
それもそうだね。
と答えて
ちょっと待っててくれる?
とルカ君に伝えて
私はマローネさんが居る集会所へ走る。
集会所の前にはまだ一台の馬車が止まっていた。
積み下ろしは終わったのか今は護衛の女性が一人馬車に
張り付いている形になっていた。
馬車を見ると入り口で見かけた女の子が
一人だけ馬車に残ったままでうつむいていた。
心が締め付けられるような思いを抱きつつも
今はルカ君との事を優先して行動する。
中に入りマローネさんを見つけて
ルカ君が道具を使う事を許可してもらった。
マローネさんが
何に使うの?え、今は内緒?
それを聞いていたアニスさんも
私には教えなさいよ。
と絡んできたので
言葉を濁しつつその場を後にした。
作業所の外で退屈そうに待っていたルカ君に
ちゃんと待ってて偉いねと声をかけて
道具を使う許可を貰ってきたから
続きを始めようか。
と伝える。
真剣な表情のルカ君の顔を見ながら
静かに見守り続ける。
穴が開いたら今度は木を丸く削るんだ。
これはちょっと難しいかもしれないよ?
というと、
元気に
「おとうさんとおかあさんの為にがんばる!」
と再び気合を入れて作業を始めた。
ほんと変わらない……
そう感心しつつ作業を見続ける。
そして少し、でこぼこしているけど、
それでも心のこもった球体が、
しっかり出来上がっていた。
最後はこの二つをつなげるんだ。
球体にも穴をあけて
つなげるための棒も作るように教えた。
これも慎重に丁寧に丁寧にまるで心を込める様に・・・
作業を続けそしてついに完成した。
持ち手や球体はちょっとぼこぼこしている。
けれどそれが温かみを持ち
私には世界一の肩たたきかもしれないと
思う作品が完成した。
「おつかれさまルカ君。
すごく良い作品になったね。」
と褒めてあげると
涙ぐみ、
それでも凄く眩しい笑顔で
「うん」
と元気に声を上げた。
そして、今度はおとうさんの分を作ると言い出した。
私はもちろんと
サウロさんの物はもう少し持ちてと
球体を大きくしたほうが良いかも。
とアドバイスしたらわかったと楽しそうに答えて
再び作業を行った。
―
そうして並んだ二つの肩たたき・・・
サウロさんのような大きな存在。
控えめだけどしっかり支えてくれそうなマローネさん。
ルカ君のご両親を思い、心を込めた作品が
机の上には置かれていた。
飾り気はない。
けれど、大切に作られたことだけは伝わってきた。
満足そうに笑顔がたえる事が無かった。
暫く一緒に過ごしているけどこんなに満足そうな
ルカ君を初めて見たかもしれない……




