にぎわいの気配
私が取引をするわけではない。
ただ見学するだけ。
それなのに胸の鼓動が早かった。
自身を落ち着かせるために
いったん深呼吸をする。
前夜、私は交易市を
経験した事が無いという事で、
今回はその様子や取引方法など学ぶために、
早めに集会場へ向かった方が良いと言われた。
ついでなので運ぶテーブルや椅子などは
私が運ぶことを伝えていた。
台車に積み込むために作業場へ行くと
テーブルや椅子が積み込みやすい入り口付近に
おかれていた。
呟くように声を出して、
「ありがとうございます」
台車にテーブルと椅子を積み込んで
集会場へ向かった。
目的地に着くと、
集会場(宿屋兼食堂)の外には
野菜や木工品
石加工品などが並べられていた。
アニスさんが他の村人と話をしながら
木簡に文字を書きながら
並べられている野菜の箱へ立てかけていた。
マローネさんだ。
木工品の品々を野菜の隣に、
同じようにルカ君も一緒に並べていた。
母親と一緒に働けるのがうれしいのか
凄い上機嫌だ。
姿の見えないサウロさんはシオンさん
他の力自慢と一緒に野菜の運搬や
織物の運搬などを手伝っているそうだ。
普段はにこやかな顔しか見ていなかったけど、
真剣な表情で他の人と相談している
二人の姿を見て、
この日が村にとって大事な日なのだと改めて実感する。
また緊張が走った。
振り払うように入口に向かいつつ
三人に挨拶と、二三会話をして中に入る。
長屋の様な部屋から丁度出てきた、
村長のニルスさん
助手のセリアさん
が相談をしながら歩いてくる。
部屋の確認でもしてたのかな。
私は村長さんの元へ歩み寄った。
「おはようございます。テーブルと椅子を持ってきました。」
「おお。おはよう。すまんね、
とりあえず母屋の壁際に並べて置いてくれ
細かい調整はこちらでやるから。」
「お疲れ様。初めての事で緊張してる?」
と冗談めかして笑顔で言ってきた。
「ええ、してますね」
と正直に答えたらまた笑われた。
一度外にでてテーブルと椅子を室内へと運んでいく。
そして台車が空になったらまた積みに戻る。
戻る途中組み立て式の椅子は、
ばらしてた方が良かったのか?
いや余計手間がかかるか?
と自問自答しつつ運ぶ作業を繰り返した。
三回目で全部の積み込みが終わり
最後の運搬。
集会所の前は見本市みたいな様相になっていた。
準備が終わって落ち着いたのか
笑顔を見せる二人と嬉しそうなルカ君。
やっぱいいなーとこちらも笑顔になりつつ、
これが最後ですと一声かけて再び搬入していく。
最後は自分の仕事が終わったのか
ルカ君が私の手伝いをしてくれた。
終始笑顔だ。
屋内への移動も済み
ルカ君へお礼を言って
今度は村の奥へ台車を運ぶ。
ついた空き地にはサウロさんとシオンさんが
古い家具の検品をしていた。
お疲れ様ですと声をかけて台車を返した。
「何か手伝う事はありますか?」
そう聞くと
「こっちは人数足りている。お前は初めてなんだ。
今日のお前の仕事は終わりだ。ルカと一緒に楽しめ」
と言ってくれた。
シオンさんや他の人たちも揃って
子供の守りも仕事だの
普段ないことだ楽しんで来い
と心温まる声をかけてきた。
泣きそうになるのをこらえつつ
笑顔を作り
「ありがとうございます。ルカ君と楽しんできます。」
そうかえすと皆声を出して笑いながら手を振ってくれた。
集会所に戻るとさらに人が増えて奥様会議が始まっていた。
ルカ君はよこでマローネさんの手を握って前後に振っている。
ほんと仲いいなー。
「お疲れ様です。」
あらーミノリ君お疲れ様と奥様方は
歓迎ムードで答えてくれた。
ちょっと後ずさりしながら
いい淀んでマローネさんに声をかける。
「私の作業は終わったんですが、
何かお手伝いできることはありますか?」
すると周りから初めてじゃなかった?
仕事はもう終わって好きにしなさい
私たちとお話しする?
など言ってきてちょっと困った言葉もあった。
「いえせっかくなので普段の村と今の雰囲気を
感じたいので少し散歩します。」
と答える。
それを聞いたルカ君が母親の手を振りながら
「ボクもミノリおにいちゃんと、
一緒に行っても良い?」
と言ってきた。
マローネさんは笑顔で
「良いわよ、ちゃんと案内してあげてね。」
「うん」
と元気に答えて私の元へ駆け寄ってくる。
満面の笑顔でいこ!と手を引いてくる。
嬉しい気持ちがあふれ私も笑顔になり
「よしじゃあ、案内宜しくお願いします。」
と伝えると
「任せて!」
と笑顔で答えてくれる。
手をつないだままゆっくり村をあるいて
祭りってこういう感じなのかな・・・
と想像しつつルカ君と一緒に村を見て回った。
建物は普段通り
だけど人の表情や雰囲気が喜んでいるように感じる。
仲良く畑にまく種を手に入れられたらいいねーとか
そんな雑談をしながら歩いていると
門の所にたどり着いた。
丁度二台の馬車が門をくぐろうとしていた。
私はゆっくりルカ君の手を
優しく私の元へ引いた。
馬車を見ながら
「この馬車が何時もお肉とか種とか
布とかを運んでくれるんだよ」
と教えてくれる。
あれ想像以上に少ない・・・
と思いつつ馬車を眺めていた。
馬車の後方に居た一人の少女に目が留まった。
心の中でザワっとした。
奥へと向かっていく馬車を見送っていると
ルカ君が手を握ってきて
「どうしたの?今の女の子?」
「そうだね・・・」
「不思議な感じがしたよ?」
「そうか・・・」
女の子の表情が忘れられずそうそっけなく返してしまった。
ルカ君の手のぬくもりで我に返った私はルカ君に笑顔で
そろそろ戻ろうか
と声をかけると
元気よく、うんと言ってまた手を握って先導を始める。
ルカ君の優しさに温かい気持ちを思い出し
頭を切り替えて笑顔になり一緒に楽しく戻るのだった。




