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五章 六話 見守る力

いつもどおりなら三回で終わっていた作業。

今回は私のスキル検証を兼ねて、

いつもより多く作業を続けることになった。


三回目の休憩の後、 四度目の作業を始める。

四段になっている段差の一段目の淵の圧縮作業を終え、

私は自分がまだ疲れていないことを確認した。


休憩中に手を握ったり開いたり、

立ったり座ったりしたけど、

疲れた感じがしない。

むしろ体調が良くなった気がする。


私の行動を見ていた、ルカが声をかけてきた。


ルカ「おにいちゃん。どうしたの?」

私の行動が不思議だったのか頭を傾けて聞いてきた。


「うん。スキルを使って作業をしてるのに、

疲れていないなと思ってね。

むしろ作業前より調子が良いんだよ。」

自分でもよく分かっていないけど、何とか言葉にして伝えた。


メリイ「それはスキルと身体能力の階位が上がったんだと思う。」


「え?階位ってスキルだけじゃないのか?」

と疑問に思って聞いてみた。


メリイ「スキルや身体能力の階位が上がったんだろ。

階位が上がると魔力も体力も増える。

魔力が減るとめまいがするし、

体力が減ると身体が重くなるが……

今の回復感は階位が上がった証拠だ。

スキルを持っていない人でもそれくらいは知っているぞ?」

何か思い当たったのか、そう言った後、黙ってしまった。


「そうか…知らなかったよ。」

(レベルのような感じだろうか…)

そう思って、私はふと疑問に思ったことを聞いてみることにした。


「なあ、メリイ。

人のステータス、身体能力やスキルなどを確認するすべはあるか?」

よくあるステータス画面の様に見えるのか気になって聞いてみた。


メリイ「あるぞ。国と冒険者ギルドが管理しているものがある。」


「そうか…それは一般の人でも見て貰ったり、

調べて貰ったり出来るのか?」


メリイ「犯罪者なんかは、能力を把握して、

その数値次第で収監場所も変わってくるから調べたりはするけど、

一般人は基本調べたりしない。

スキルは自分のものなら頭に浮かぶだろ?

身体能力も普段の生活なら、自分の力が少し増えたとか、

わかればそれでいいからな。

魔物と戦うことでもなければ、そこまで気にはしない。」


「それもそうか。」

私自身、魔物と争う気もないし、自分の能力がどうこうは、

正直気にはなるけど調べてまでとは思わない。

(自分でわかる範囲で十分かな。)

そして自分の変化を知り少し試すことにした。


「サウロさん、マローネさん。

これからの作業、私は休まずに続けてみようと思います。

自分の限界を少し知っておきたいので。

メリイ、もしもの時はお願いしたい。」


メリイは無言で頷いてくれた。

そしてサウロさんとマローネさんが、

私の言葉を聞き少し不安そうにしながらも話した。


サウロ「……分かった。お前の思うようにやってみろ。」


マローネ「サウロ、良いの?」


サウロ「男にはやらんと気が済まん時がある。

今がそうなんだろう。まして自分の体のことだ。

皆がいる今が一番いいだろう?」


マローネ「それは…いえ、そうかもね……」

サウロさんはすぐに理解してくれた。

少し納得いかない様子のマローネさんも、

サウロさんの言葉を聞いて納得してくれたようだ。


サウロ「ということだ。ミノリ好きにやっていいぞ。」

と私へ安心しろと言わんばかりの笑顔で言ってくれた。


ルカとソエルは少し心配そうな顔をしていたけど、

黙って見守ってくれている。


「ありがとうございます。」

(ありがとう、ルカ、ソエル。)


無言で見守ってくれていた子供たちには、

目を見てお礼を伝え、私は作業を再開することにした。


会話が終わり、ため池の二段目の縁を固め続けて一時間が経ち、

二時間近くがたった頃、立ちくらみが起きた。

魔力切れかもしれない。


以前は立つのが難しく膝をついたけど、

今回は何とか踏ん張れている。

これも階位が上がったからなのかなと思う。


それにしても、初めて魔力切れを起こしたときほど

目まいは酷くないけど、それでも魔力切れは慣れない疲労感で、

正直気持ちが悪い……


家族がいる時に試せたのは本当に助かった。

一人でいる時に起きてたらかなり危険だ。

慣れるまで、家族と一緒の作業中に経験して、

限界をしっかり覚えないと……


自分でため池の二段目から這い上がり、

濡れた地面に置かれた木材へ座り、そして考える……


私には[クリエイト]のスキルだけじゃなく、

アルティオ様とレピエ様の祝福もある。

痛みを感じない。そして回復だっけ。

痛覚と回復の祝福、そして精神耐性の祝福。

さっきの高揚感は回復の影響もあるんだろうか…

でもそれなら、今日みたいに急な変化を感じたことは無かったし…


考えれば考えるほど、頂いた祝福やスキルのことを、

何も考えずに生きてたんだなと思った。

(健康体の体が嬉しくて、貰った力を使ってこなかった。

これは、反省する部分だな。)


せっかくいただいた祝福やスキルのことを、

理解しようとしていなかったことを反省して、

今後はしっかり考えようと思った。


自分の貰ったスキルや祝福のことを考えていると、

いつの間にか私の横に来ていたルカとソエルが、

私の顔を覗き込んでいることに気が付いた。


「どうしたの?二人とも。

心配かけちゃったかな?

私は大丈夫だよ。

少し自分のスキルのことを考えていたんだ。」


私の言葉を聞き、黙って目を見ていたルカが安心したのか、

笑顔になり話しだした。


ルカ「よかったー。無理してるんじゃないかって思っちゃった。」

と笑顔を見せてくれた。


ソエル「だから言ったでしょ?

大丈夫だって。」

とルカに笑顔で言っている。


ルカ「わかんないよ?前もあったんだから。

おにいちゃんはボクたちがちゃんと見ていないと、

何をするかわからないんだから。」


ルカとソエルが私を心配していることは分かっているけど、

そこまで無茶をしている気はしてないんだけどな…


サウロ「ルカ、ソエル。

そいつ分かってない顔をしている。

ちゃんと見張っていろよ。」


ルカ、ソエル「うん。」「はーい。」

と笑顔で元気に返事をしていた。


いつの間にか私は保護者ではなく

保護される側になったらしい。


(この二人は本当に性格が違うけど、私を心配して、

見守るという気持ちは、いつも強く伝わってくる。)


私は二人の小さな存在が頼もしく感じられて、

笑顔で「ありがとう。」と伝えると、

二人も笑顔で返してくれた。




※スキルと身体能力の「階位」について


作中で出てきた「階位」について、少し補足します。


この世界では、スキルだけではなく、身体能力にも「階位」が存在します。


スキルの階位は、そのスキル自体の成長を表しています。


階位が上がることで、スキルの威力や精度、扱える範囲などが向上します。

今回のミノリの[クリエイト]で言えば、掘れる範囲や深さ、掘った土を移動できる距離などが広がりました。


また、スキルの階位が上がることで、魔力も多少増えていきます。


一方、身体能力の階位は、ゲームでいう「レベル」に近いものです。


筋力だけではなく、体力や敏捷性など、身体全体の能力が対象になります。


身体を使って活動することで成長し、階位が上がれば、以前より力が出るようになったり、疲れにくくなったりします。


つまり、この世界では、


「スキルの階位が上がる」

=そのスキルが強くなる。


「身体能力の階位が上がる」

=身体全体の能力が高くなる。


という違いがあります。


そのため、今回ミノリが感じた「作業をしているのに疲れにくい」という変化だけなら、スキルの階位が上がった影響とも考えられます。


しかし、「作業前より体調が良くなった」という変化については、身体能力の階位も上がった可能性があるため、メリイはそう判断しました。


なお、一般の人たちは自分の身体能力が少し上がった程度なら、普段の生活の中で何となく気付くことができます。


魔物と戦う冒険者などでなければ、わざわざ数値を確認する必要もないため、自分の身体の変化が分かれば十分だと考えられています。


◇冒険者は倒した魔物の魔力を吸収しています。

いわゆる経験値の様なものになり、普段町で暮らす人たちより、

成長は早いです。

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