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魔法世界の怪獣王国〜魔力ゼロで底辺奴隷だった僕ですが、自然の摂理を超越したマイペースな怪獣たちの王様になりました〜  作者: 同歩なり


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第33話 エルフ魔導師団長

 総大将である師団長ゼラルドを狙う首刈り戦術のため、僕はエリシアさんたちと合流した。


 そして、合流の直後、高レベルな気配を放つ部隊と遭遇する。

 その中心に立つのは、圧倒的な存在感を纏ったエルフの男だった。


 只者ではない雰囲気――。

 間違いなく、このエルフこそが師団長ゼラルドだろう。


 そして、そのゼラルドと思われるエルフの視線が僕の方を向いた。


「何者だ、貴様は?」


 いきなり尋ねられた。

 見た目通りに偉そうだなと思いつつ、僕は答える。


「うむ、無知なる者に教えてやろう。我は怪獣の王レグオンである。覚えておくが良い。お前こそ何者だ?」


 僕は内心ちょっとビビりつつも怪獣の王として、より偉そうに言ってみた。


「レグオン? 怪獣の王? ……ふむ、つまりは私の敵ということだな」


 ゼラルドと思われるエルフは、僕の言葉を落ち着いて受け止め、さらに続ける。


「私は魔導師団を統べるゼラルドという。……怪獣は知能が低いと聞く――貴様は無理に私の名を覚える必要はない」


 やはりゼラルドだった。


 そして、僕に対抗する気があるのか、無意識なのか、表情からはさっぱりわからないが、ナチュラルに煽ってきた。

 実際にゼラルドの方が知能が高そうなので、喋りでは勝てそうもない。


 ちょっと負けた気分になっていると、ゼラルドは僕から視線を外さないまま、言葉を続けた。


「――ほう、これは……、怪獣の王を名乗るレグオンとやら。確かに貴様からは力を感じる。我ら王国の脅威となりうるものを見逃すわけにはいかん。ここで倒させてもらう」

「……なに、この我を倒すだと?」


 余裕がありそうで、かなり怖い。


 僕はここで怪獣形態に変身して一気に決める手も考えたが、怪獣形態は小回りが利かない。

 十分間ここで逃げ切られてしまえば、当初の計画が台無しになってしまう。


 そこで、ひとまずは獣人形態で戦おうと考えている、そのときだった。


風閃ふうせん!」


 ゼラルドの死角から、いきなりエリシアさんが斬りかかった。

 以前、僕も斬られた高速の剣技――風閃ふうせんだ。


 だがゼラルドは、その剣先を片手で軽々といなす。


「人間の小娘か。斬りかかってくるのはわかっていたぞ」


 ゼラルドはエリシアさんの奇襲にも動じない。

 それどころか余裕を持って、すぐさま反撃に転じる。


「――電撃魔法フルミナリス


 放たれた電撃がエリシアさんを直撃する。

「くっ!」と声を漏らし、エリシアさんはダメージを受けながら後方へ飛び退いた。


 すると、ゼラルドが目で合図を送ったのか、複数のエルフ魔導兵が一斉にエリシアさんを取り囲もうとする。

 だが、抵抗勢力の仲間たちがすぐに割って入り、援護にまわる。


 あれならば、ひとまずエリシアさんの方は持ちこたえらるだろう。

 問題はゼラルドの方だ。


 僕はゼラルドと正面から対峙する。

 結局のところ、相手の思惑通りだとしても、ここは僕がゼラルドの相手をするのが良いだろう。


 ここでゼラルドを倒すことができれば、勝利に等しい優勢を手にできる。首刈り戦術の成功だ。

 向こうも似たようなことを考えているのだろうけど。


 僕は呼吸を整え、宣言をした。


「では、お前の相手は我がしよう。かかってくるがいい」


 そう言ってはみたものの、僕には魔法もなければ剣技もない。

 そもそも、殴った方が手っ取り早いと考えているので、武器も防具も持っていない。


 対して、ゼラルドは仰々しい大剣を背負っている。

 多くのエルフ魔導兵が弓を扱うのに、ゼラルドは大剣を使うようだ。


 ゼラルドは、背中の大剣を片手で抜き、僕に見せつけるように構える。


「ふむ。では、そうさせてもらおう。――身体超強化魔法アルフォルティス


 低い声で呟いた瞬間、ゼラルドの全身がうっすらと白い光に包まれた。


 エルフや人間が使う強化魔法の効果だろう。

 エリシアさんから聞いた話によると、強化魔法にはいくつかの種類があり、上級ともなれば元の数十倍もの能力を引き出すことができるらしい。


 ゼラルドは大剣を上段に構え、じりじりと間合いを詰めてくる。


 僕は油断せず、剣先から視線を逸らさない。

 エリシアさんとの戦闘経験が生きている。


 そんな状況からゼラルドが一気に大剣を振り下ろしてきた。


 ――速い。


 かわしたつもりだったが、剣先が僅かにかすり、浅く傷を負ってしまう。

 警戒していたにもかかわらず、だ。


「ほう、今の剣をかわすか……」

「お前こそ、我に傷をつけるとはな」


 互いに手応えを口にする。


 もっとも僕は雰囲気で言ってみただけで、実際には獣人形態でも怪獣形態でも、けっこう傷をつけられている気はするのだけれど。


「――電雷魔法フルミナアナイア


 ゼラルドが間を置かずに魔法を放ってきた。


 ここまでくる道中にも喰らい、痺れで動きを止められた、あの電系魔法だ。


 至近距離からの範囲魔法は避けようがない。

 これは不味い。


 そう思った矢先、全身をピリピリと電流が駆け抜け、僕の体は一瞬だけ硬直してしまう。


 その隙を、ゼラルドが見逃すはずはなかった。

 大剣が唸りを上げて振り下ろされる。


 この攻撃は、かわしきれない。

 僕は咄嗟に前腕を突き出し、硬い繊維質の皮膚を盾にして受け流す。


 ガキンッ! という鋭い衝突音とともに、大剣による一撃を弾き返した。

 だが、その衝撃は大きく、皮膚の一部が剥がれてしまった。


 そして、ゼラルドとしても今のは全力の一撃だったのか、次の動作への構えが遅れている。

 この好機を逃すわけにはいかない。


 僕は間合いを詰め、懐へ飛び込み、ボディへ硬い拳を叩き込む。


 だが、ゼラルドはすんでのところで距離を取った。

 僕の拳は浅く触れただけで、手応えはほとんどなかった。


 ゼラルドは魔法と剣技を織り交ぜた連携攻撃。

 身体能力だけの僕は、それに単純な殴打で対抗する。


 対照的な能力ながらも拮抗した攻防が続いた。


 どれぐらいの時間が経ったのか。

 体感では随分と長く戦っているように思えるのだが、実際にはそれほど時間は経っていないのかもしれない。

 ただ、経験のない激しい戦闘のせいで、疲労感が増してきた。


 このあと待ち構える魔導ゴーレムのことを考えれば、これ以上の消耗は避けたい。

 そう思ったとき、ゼラルドの攻撃が止み、少しの距離ができた。


「……私と互角に渡り合ったのは、ドワーフ王以来だ。なるほど、怪獣の王を名乗るだけのことはある」

「うむ、そうか」


 ドワーフ王とか知らないし、ここは引き分けということで撤収してください、と言いたいところだが、そうはいかないだろう。


 ゼラルドが「ふぅ」と短く息を吐く。

 もしかしたら向こうもあまり余裕はないのかもしれない。


 ゼラルドが淡々とした口調で呟いた。


「ふむ、仕方がない。あまり使いたくはなかったが、私の全力を見せるとしよう。――魔力超増加魔法マナアグメンティス、――魔脈浸透魔法マナリヴェルタ


 その言葉に呼応して、ゼラルドの瞳が紅く輝く。

 さらにゼラルドの構える大剣が紫色の光を帯び、周囲の空気が歪んで見える。


 その異様な気配は、エルフ魔導兵の注目をも引きつける。

 エルフ魔導兵たちがざわめく。


「ゼラルド師団長が、あれを出しただと……」

「離れろ! 巻き添えを食うぞ!」


 エリシアさんもただならぬ気配を感じ取ったのか、険しい表情でこちらを見た。


「レグオン殿、ただ事ではない! 気をつけて!」


 戦闘の素人である僕ですら、圧倒的なプレッシャーを感じる。

 エリシアさんの言うように、ただ事ではないことがよくわかった。


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