第27話 誕生、怪獣キングダム
勢ぞろいしたのは、ピグモー四体、モフモフ十三体、ホロウホー二体、モグログ一体――合計二十体の怪獣たち。
それにエレナとリアナに僕を加えて、総勢二十三名。
これが怪獣の国、創設時の全メンバーだ。
僕は大きな岩の上にすっと立ち、集まった怪獣たちを見渡す。
その中央にどっしりと陣取るのは、ピグ太を隊長とする四体の牛豚怪獣ピグモーだ。
立派な体格で堂々としていて、今日も元気いっぱいだ。
ただ、本当に美味しいので、ふっくらとした新鮮な良いお肉が並んでいるようにも見えてしまう。
すまない、ピグモーたち。
とりとめもなく好きな場所に佇んでいるのは、十三体の穀物怪獣モフモフだ。
今日もモフモフしていて、とても可愛い。
ただし、目の前にたくさん集まっているモフモフたちだが、僕はモフ美とモフ菜しか判別ができない。
どのモフモフも激似すぎる。
いつか区別できる日まで、待っていて欲しい。
それらの後方に待機しているのは、二体の透明怪獣ホロウホー。
今は透明に戻ってしまい、目とクチバシしか見えないが、今日もたくさんのモフモフを眺めて、満足そうだ。
それから地底怪獣モグログは、地中から這い出たあと、ピグモーたちの右側でしゃがんでいる。
最初は、他の怪獣から距離を取り座っていたモグログだったが、いつの間にか数体のモフモフに囲まれている。
モフモフたちが物珍しそうに、座り込むモグログへ絡み始めた。それに困った様子のモグログが、仕方なさそうに地面を爪で掘っている。
そして、僕の左右にいるのが、双子の美少女姉妹エレナとリアナ。
僕の右腕で、ダブルエースで、怪獣の国の生命線だ。
あらためて思うが、二人がいないと、すべてのことが始まらない。
さて、僕としては、素晴らしいメンバーが揃ったと思う怪獣の国。
一応、僕が王様ということで話は進んでいるが、本当に僕で良いのか、信任を取ってみようと思う。
僕が思うに、エレナが王様でもいけるような気がしないでもない。
エレナとリアナが怪獣たちと、念話を始める。
すぐに結果が出て、僕が王様ということに異論はなかった。
そもそも僕が言い出したことだし、それはそう。
こうして、たぶん民主的に、僕が王様ということに決定した。
続いて、決めたいと思っているのは国名だ。
特に希望はないので、怪獣たちに聞いてみる。
結果は「レグオン王国」という意見が最も多かった。
「レオっち、みんな、レグオン王国が良いって。わたしも良いと思うなー」
「レオン様、レグオン王国でいきましょう。私も賛成です」
「それは絶対に嫌だ」
僕は強行に反対した。
基本的にモブ気質の僕なので、自分の名前が国名になるなど、落ち着かない。
先ほどは、国民の意見を聞く民主的な良い王様と見せかけたが、僕はここで独裁国家のように王様権限を発動し「レグオン王国」を却下した。
そして、僕は次点だった【怪獣王国】を激推しした。
「ブモゥッ」
「……」
「ホォォォゥゥゥ」
「ヌゴォォォォォ」
怪獣たちはエレナとリアナから話を聞き、テンション高めに反応している。
「結局、レオン様の希望通りになりましたよ。怪獣たちも納得しています」
「怪獣たちも気に入ったみたいし、わたしも良いと思うよー」
「じゃあ怪獣王国で決定だね。みんな素直で良かったよ」
こうして、国名が決定した。
次は怪獣王国として、なにか決まりごとを作っておきたいと思う。
ただ、怪獣たちは基本的に穏やかで、悪意を持って周囲に迷惑をかけることもない。
特に案も浮かばなかったので、『今まで通りマイペースに暮らせばいい』、『エルフや人間と接触した場合には、速やかに退避して連絡する』、これだけを怪獣王国の決まりごととした。
「ねぇ、エレナ。初の全員集合は、こんなところかな。まだ何かある?」
「十分ではないでしょうか。怪獣たちも楽しそうですし、たまに集合するのも良いかもしれませんね」
確かに怪獣たちは、初体験の出来事ばかりで楽しそうにしている。
「リアナからは何かある?」
「わたしはないよー。最後に怪獣たちにも聞いてみよっか?」
「そうだね、聞いてみて」
エレナとリアナが怪獣たちに念話で意見を求める。
特にないだろうと思っていたら、あった。
ピグ太からだ。
「レオっち、ピグ太が怪獣王国の歌を作って欲しいって」
「えっ、歌? 国歌ってこと?」
「そう。前にピグ太が二日間エルフに追われていたとき、時々エルフが歌を歌ってたんだって。それが楽しそうだったからって」
なるほど、以前ピグ太を追跡していたエルフたちが国歌か軍歌でも歌い、士気を高めていたのだろう。
ピグ太はピグ太で、その隙に逃げれば良かったと思うのだが、きっと楽しそうにしているエルフを眺めて満足していたに違いない。
国歌製作は、今後の士気向上のためという理屈もあるが、僕はそれよりも怪獣たちからの要望に応えたい。
そこで怪獣たちには少し待ってもらい、作詞は僕、作曲はエレナ、歌唱はリアナで、怪獣キングダム国歌を完成させた。
さっそくお披露目だ。
――怪獣キングダム国歌――
怪獣のうた
大きいことは良いことだ
怪獣最強、ガオーガオー
細かいことは気にしない
怪獣最高、ガオーガオー
死んでも死なない、怪獣だから
怪獣最強、ガオーガオー
前進あるのみ、怪獣だから
怪獣最高、ガオーガオー
姿は違えど、心は一つ、みんな一緒に♪
ガオーガオーガオーガオー(気が済むまで繰り返し)
リアナによる独唱のあと、匿名で怪獣たちの素直な感想を聞いてみた。
「楽しい歌です」
「覚えやすいと思います」
「リズムが良いですね」
「IQが低い歌詞だと思いました」
「毎日歌います」
概ね好評だと思うが、「IQが低い」と言ったのは、いったい誰だ。
ピグ太のレベルに合わせて作ったつもりだったのだけれど。
ともあれ、怪獣たちは好き勝手に鳴き声や唸り声を上げている。
モフモフは口がないので歌えないが、ゆらゆらと身体を揺らしている。
どうやら満足してくれたようだ。
これなら第一回の怪獣全員集合は、大成功と言っていいだろう。
「レオン様、今日の締めとして、建国の宣言をしておきましょう」
「それがいいよ、レオっち。王様っぽく言っておこうよ!」
「そうだね、言っとく?」
僕は形から入るのも大事だと思い、集まった怪獣たちに向けて宣言をした。
「我は怪獣の王レグオンである。本日、ここに怪獣王国の建国を宣言する!」
そう言って、僕は右拳を高く突き上げる。
雰囲気だけで、怪獣たちのテンションが一段上がった。
こうして、たぶん世界で初めての怪獣の国―― 怪獣王国が誕生した。
◇◇◇
だが、その一方で――。
その光景を、遠く離れた場所から見つめる影があった。
上級魔法を駆使して、超長距離から監視するいくつかの視線。
彼らが目にしたものは、唸り声を上げて群れる、複数種の大型怪獣たち。
その目を疑うような光景は、彼らに強烈な印象として焼きつくこととなる。




