第22話 構想、怪獣の国
「うむ。貴殿らの戦う理由はわかったが、我を仲間にするのなら、死ぬなどと簡単に言うのではないぞ。命を大事にするのだ。──どうだ、我との約束を守れるか?」
僕の言葉を、エリシアさんたちは真剣な顔で聞いてくれた。
嬉しいことだ。
ただ、僕自身は社畜として死んで、さらにエルフの奴隷として死んだようなもの。
全くどの口が言っているんだ……という気がしないでもない。
いや、逆に説得力があっただろうか。
そんなことを思っていると──。
「レオン様、なかなか威厳が出てきて良かったですよ」
「レオっち、最後の方は本当の王様っぽくて良かったよ。慣れてきたねー」
「あ、そう? そう言ってくれるなら良かったよ」
自分としては若干疑問は残るが、二人からは好評なので、難しく考えずにヨシとしよう。
そうして僕らは、抵抗勢力の皆さんと別れたあと、いつものように雑談を交えながら、渓谷を抜けて帰路についた。
分かれ道が多く入り組んでいたものの、エレナの正確な先導により、迷うことなく村へ戻ることができた。
◇◇◇
村へ戻ってしばらく休憩したあと、僕らは再び集まり、昨晩の話を振り返る。
「ねぇ、エレナ。これから怪獣形態にもっと慣れるように、特訓すれば良いんだよね?」
「はい、レオン様。今以上に怪獣形態に馴染めば、新たな能力も身につきますから」
そう、新たな能力。
これで神聖エヴァリス王国の軍勢に対抗したい。
今のところ、無事に習得できるかどうかも分からないし、威力についても未知数だ。
それでも僕は、エレナから話を聞いて、これに賭けることにした。
習得期限は、神聖エヴァリス王国が攻めてくるまで。
エルフの軍オタ青年と、抵抗勢力が集めた情報によると、その時期は約一ヶ月後が想定される。
それまでに、何とか形になるだろうか。
あまり時間に余裕はないので、少しでも早く力を身につけたい。
そう思って特訓を始めたが、どうにもピンとこない。
焦りを感じた僕は、エレナにアドバイスを求めることにした。
「ねぇ、エレナ。なにかコツはない?」
「そうですね。私もその能力があるわけではないので分かりませんが、怪獣の王として、エルフがどうなろうと一顧だにしない、そういう気持ちが大事だと思います。思い切っていきましょう!」
元々モブな僕なので、そういうのは苦手だなと思いつつ、しっくりこないまま、次のアドバイスを促す。
「気持ちかー、ほかにはない?」
「そうですね……火球ではなく、もっと、こう、ガラ結晶を吐くようなイメージでしょうか」
さすがのエレナも知識があるだけなので、的確なアドバイスをするのは難しいようだ。
新たな能力の習得は、そう簡単にはいかないらしい。
万が一、新たな能力が身に付かなくても、怪獣形態での稼働時間が伸びるのであれば、特訓がまるごと無駄になることはない。
そう思って、決戦の日まで、コツコツと頑張りたい。
さて、焦る気持ちはあるが、怪獣形態での特訓は消耗が激しいため、一日中はできない。
僕は怪獣たちにエルフを迎え撃つ協力を頼むつもりなので、限られた時間の中で、他の怪獣たちにも順に声をかけていくことにした。
「ねぇ、リアナ。僕って怪獣たちに、慕われてるんだよね?」
「うん。みんな、レグオン様と言って、慕っているよー」
僕は直接しゃべれないので、雰囲気でしかわからないが、リアナによると慕われているらしい。
そこで、僕はただエルフを迎え撃つだけでなく、これを機に怪獣たちを取りまとめて、【怪獣の国】を創りたいと思う。
僕にしては思い切った案だと思ったが、昨晩エレナとリアナに相談したとき、二人はパッと表情を明るくして、瞳をキラキラさせながら、
「レオン様、良い考えだと思います」
「レオっち、それいいねー」
と、迷いなく賛同してくれた。
そんな二人の言葉と態度が、最後の決め手になった。
そもそも怪獣の国を創ろうと思った理由は──。
フィオナ殿下ら抵抗勢力は、師団長ゼラルド率いる精鋭エルフ魔導師団に勝利した暁には、人間の国――イストリア皇国の再興を宣言すると言う。
その話を聞いて、僕ら怪獣も立場を明確にした方が良いと思った。
怪獣が人間に従っているわけではない、逆に怪獣が人間を従えているわけでもない。
怪獣と人間、それぞれの意思で、戦線を共有している──その関係性を分かりやすくしておきたい。
怪獣も意思を持ち、話し合いができる集団ということを示したい。
そのために【怪獣の国】というかたちをとる。
怪獣たちは個体としても十分に力強く、日々の生活に困っているわけではないので、メリットは少ないかもしれない。
それでも、怪獣という存在に国家というかたちを持たせることで、エルフからの干渉を、より抑えられると思う。
ピグモーが追いかけられたり、 モフモフが体毛を虎狩りにされたりすることもなくなるだろうし。
と言うことで、さっそく怪獣たちに話しに行こうと思うが、最後にもう一度だけリアナに確認をする。
「怪獣たち、国を創るとか面倒に思ったりしない?」
「大丈夫だと思うよー。みんな新しいこと、好きだし」
普段の生活を見ても、怪獣は強者として難しく考えていないように思えるし、リアナが言う通り大丈夫かな。
「じゃあ、まずはピグ太のところに行こうかな。どこにいるかな?」
「えっとね、レオっちが特訓してる間に、もう声をかけてあるから、近くに来てるよ」
リアナは有能な秘書なのかな? 手際がよくてありがたい。
すぐにピグ太が来ているという場所へ行くと、そこにはピグ太の他にも三体のピグモーがいた。
なんと、この周辺地域に生息するピグモーたちが集結していた。
僕は獣人形態で四体のピグモーと対面し、下から見上げる。
「ブモモ!」「ブモオゥッ!」「ブモモモゥ!」「ブゥモモモッ!」
目の前に巨大怪獣が四体も集まると、想像以上の迫力だった。




