第21話 皇女殿下との会談(決断)
晩餐の後、僕らは客人として部屋を案内された。
抵抗勢力への協力についての返答は、明日する予定だ。
それに向けて、僕の部屋にエレナとリアナが来てくれている。
僕は朝から晩まで王様っぽくして、すっかり疲れていた。
「なんだか疲れたね」
「はい、レオン様。いつもとは違う空気でしたしね」
「今日はレオっちに言われた通り、喋らなかったよー」
濃密だった会談と晩餐の余韻はあるが、静かな部屋にいつもの三人だけとなり、少し肩の力が抜けた気がする。
僕は今日の会談と晩餐を通じて、フィオナ殿下とエリシアさんが持つ凄みと覚悟、存在の大きさを感じた。
以前のモブで奴隷だった頃の僕なら、彼女たちのような人に世界を変えて欲しいと願ったのだろう。
なのに、それがどうしたことか。
今はその彼女たちに頼まれている。
「ねぇ、エレナ。僕って凄い?」
「急にどうしたんですか? もちろんレオン様は凄いですよ。怪獣王の力を受け継いだんですから」
「そうか、やっぱり凄いのかー」
今さら確認するまでもないけれど、今の僕は凄いらしい。
怪獣王の力とやらを得たときは、僕のまわりが少し平和になるのなら、それで充分だと思っていた。
でも、どうやらそれ以上の力があるようだ。
良くも悪くも、もう世界を変えてほしいと願う立場ではないのだろう。
僕はいつもの空気感の中で、気持ちを整理する。
大きな力を、この僕が……。
僕は今までの自分を振り返りながら、これからのことを考えてみた。
社畜&奴隷時代の長かった僕なので、まだまだ戸惑うところはある──けれど、ここでその大きな力を使ってみたい、そう思った。
会談の場で即答はできなかったが、この気持ちはもっと前から持っていたように感じている。
僕は、フィオナ殿下とエリシアさんが率いる抵抗勢力に全面的に協力する。
「話が大きくて戸惑ったけど、僕は抵抗勢力の作戦に協力するよ」
「はい、レオン様。そう言うと思ってました。私も全力でサポートします」
「いいねー、レオっち。わたしも一緒に頑張るよー」
頼もしいエレナとリアナの賛同も得た。
それならば――。
今でも魔力はない僕だけれど、奴隷だの家畜だの魔力が全てだと驕れるエルフに、魔力ゼロでもカスではないことを教えてやろう。
決意を固めた僕、それにエレナとリアナ。
僕らは顔を見合わせ、三人揃って力強く頷いた。
――さて、それはそれとして。
ちょっと自分の中で盛り上がってしまったが、一つ気になることがある。
とても重要なことだ。
僕は最強の怪獣形態だと、せいぜい五分〜十分ほどしかいられない。
これは一体どうしたものか。
エルフを教育する時間としては短すぎる。
仮に魔導ゴーレムが十体だとすると、一体につき三十秒〜六十秒以内で倒す必要がある。
火球の効果も不明だし、怪獣形態の僕は足が遅いので、広範囲に布陣されると、かなり不味い。
その他にも師団長ゼラルド、精鋭エルフ魔導師団が攻めてくる。
僕に傷を付けたエリシアさんを物差しにすると、これも相当な強さだろう。
「ねぇ、エレナ。エルフの軍勢を倒すのに十分って短いよね?」
「はい、相手の規模によりますが、レオン様でも無策では厳しいかもしれません」
「だよね、なんか良い手立てはない?」
「そうですね、特訓が必要ですけど、何か新しい能力を身につけますか」
さすがはエレナだ。
何か思いつくことがあるようだ。
「ねぇ、リアナ。他の怪獣たちも協力してくれるかな?」
「大丈夫だと思うよー、一緒にお願いに行こっか。怪獣たちのためでもあるし」
さすがはリアナだ。
怪獣たちと仲良しで、とても助かる。
そうして、三人であれこれ話しているうちに、どんな準備が必要なのか明確になり、今後の道筋が見えてきた。
よし、明日になったら「全面的に協力する」と自信を持って返答しよう。
◇◇◇
朝が来る。
とはいえ、陽の光が差し込むわけではない。
空気は少し冷えていて、部屋の石壁は昨晩と変わらず、ひんやりとした感触だ。
エリシアさんから声がかかり、フィオナ殿下と幹部たちがまた顔をそろえた。
表情には、緊張と期待が入り混じっているようだった。
声を発する者はなく、視線だけが幾つも交差していた。
張り詰めた空気の中、フィオナ殿下が口を開く。
「レグオン様、我々にご協力いただけますでしょうか?」
昨晩のうちに、僕の気持ちは、抵抗勢力に協力すると決まっている。
それでも僕は、フィオナ殿下からの問いへ答える前に、伝えておきたいことが一つある。
フィオナ殿下からの協力要請に対して、僕は答える。
「協力しても良いが、一つだけ条件がある」
「なんでしょうか」
フィオナ殿下の問いに、僕は告げる。
「うむ。貴殿らの戦う理由はわかったが、我を仲間にするのなら、死ぬなどと簡単に言うのではないぞ。命を大事にするのだ。──どうだ、我との約束を守れるか?」
僕はエリシアさんへ視線を送る。
沈黙のなか、何かを思うように、エリシアさんはそっと頷いた。
エリシアさんの小さな頷き──
だけどそれが、ただの返事ではなく、少しでも重圧から解放された肯定だったのなら、僕は嬉しいのだけれど。
「──そうか、それならば是非もなし。我も貴殿らと共に戦おう」
僕は王様っぽく言ってみた。




