第91.5話 三者三様
第3章 渦巻く陰謀、邪悪の残滓。
第1幕 狂瀾怒濤
第91.5話 三者三様
本日2話目です!
Side ノエル
(お姉ちゃん……)
お姉ちゃんが居なくなって一カ月半。私と『蒼穹』のみんながエルォモストサックに着いてからは、もう少しで3週間になる。
蒼穹のみんなはいい人たちで、お姉ちゃんに任されたからって私の面倒も見てくれるし、私のためにお姉ちゃんのことも調べてくれる。
……でも、こんなに経っても、誰も何も分からない。
やっぱり、あの戦いで死んじゃったのかな……?それとも、私と一緒に居るのが、嫌になったのかな……?
……ううん。お姉ちゃんは、嘘つきじゃない。だから、帰って来る。
みんなと一緒に、お姉ちゃんが無事だって祈る。そうしたら、きっと神様が助けてくれるから。
(お願い神様、お姉ちゃんを助けて……!)
……頑張って沢山祈ったけど、今日も新しいことは、分からなかった。
明日もきっと待って、祈って、そして……今日と同じかもしれない。
(お姉ちゃん……嘘つきに、ならないよね……?)
***
「ノエルちゃん!」
次の日、部屋の扉を勢いよく開けたのは、私と一番年が近いエヴァルちゃんだった。
でも、エヴァルちゃんのあんな嬉しそうな顔、凄く久しぶりに見た気がする。何かいいことでもあったのかな?
「ミオが、生きてたって!」
「!」
Side END
***
Side リュドミラ
時間は少し遡り、澄んだ空気で満たされた教会の別棟、その一室。
よく清掃された石畳の上に置かれた木造りのベッドで眠る、白髪の少女がいた。
「……頑張ったな。まさかドラゴンを倒してたとは思わなかったよ。」
先日ツェアトロン異変の中心地で彼女を保護し、救急要員が少量の栄養剤を口に垂らすなどの応急処置をした。その後、彼らを先行班と合流させてから全速力でアムヌーへ向かい、そうしてこの教会病院に運び込んで今に至るわけだ。
診療担当の神官によれば、あとは定期的に栄養剤と水分を与えながら、清潔さを保ちつつ本人の生命力に託すしかないとのこと。魔法でできる処置は現地であたしがしてしまったから、当然なのだが。
「父上に言われて来てみればあの有様だ。色々あって最初は目に入ってなかったが、改めてみたら凄い規模だった。蒼龍をあんなボコボコにするのはあたしでも流石に……無理ってわけじゃあないが。……ホント、あんたも大物になっちゃったな。これはSランクに昇格する日も近いんじゃないか?」
しかし、こちらにできることが無いとなると不安を感じずにはいられないのも、また事実。
あたしはそんな心境を覆い隠すように、眠っているミオに向かって事あるごとに話し掛け続けていた。
「……師匠より先に死ぬなんて、そんな不孝なことするなよ?」
……違う。そうじゃない。それは冒険者にはご法度だ。
「……ま、二次調査も終わったし、後続用の足場も整えたからしばらくあたしは暇人だし、あんたが目を覚ますまではアムヌーに居るつもりだから。……また来るよ。聞きたいこともできたしな。」
Side END
***
Side 冒険者ギルドアムヌー支部長室
「あの子が蒼龍を、ねぇ?」
「ええ。状況証拠的にほぼ確実かと。後は本人に確認が取れればよいのですが……」
「肝心のあの子が昏睡状態ってわけだね。」
向かい合うのは、支部長席にふんぞり返って自分で削り整えた鉛筆を眺めるキリベルカと、真剣な表情で書類を睨む副支部長のグィネートだった。
「しかし、あのタイミングでリュドミラさんがアムヌーにやってきた上、調査隊の依頼まで受けてくれるとは……そうでなければ、今頃―――」
「来たのはミラの御父上の意向らしいよー?でも依頼を受けたのはアイツの勘だって言ってたけどねー。」
その先は言わせない、とばかりにキリベルカが口を開いた。しかしその口調はどこか他人事で、話に身が入っていないようだった。
「賢者殿の……?では、何か重要な連絡事項でも?」
「うーうん。この異変を察知した賢者が、様子を見てくるように言ったんだって。」
「はい?賢者殿は、学術都市イルムにいらっしゃるんですよね?」
「そーだねー。」
「そこから情報を仕入れてリュドミラ殿を現着させるまでを4日で済ませた?か、もしくは直接感じ取った……?そんなバカな、500㎞は離れているんですよ?」
「ま、伊達に人類史に名を残す英雄はやってないってことなんじゃない?」
キリベルカは答えるが、やはりその口調はぶっきらぼうで、心ここにあらずと言った具合だ。
しかし、グィネートは会話の中から引っ掛かりを覚える。
「……ん?それでは、魔女殿が現れないのは何故です?異変自体はミオさんが解決したようですが、瀕死の重体ですよ?賢者殿と同格であれば、異変当日に現れてもおかしくないのでは?今の今まで見舞いにも来ないのもおかしいような……」
「そう、そこなんだよ。」
キリベルカは身を乗り出し、手に持っていた鉛筆を『ビシッ』っとグィネートに向ける。
「アイツも同じこと言ってたんだけど、気になるからって魔女様のお家まで行ったらしいんだよね。」
「……それで?」
「……そのお家がさ、無くなってたんだって。きれいさっぱり。っていうか、何かの爆発で消し飛ばされたみたいな状態だったらしいよ?」
「……はい?」
Side END
あとがき
今回は前々回ぶりの全編サイドストーリーでお届けいたしましたがいかがでしたでしょうか?
切実な祈りの末に救われる者、色々と胸の内に秘めつつも快復を願う者、そして判明する大英雄の失踪。ミオがおらずとも世界は回り続けるのです。
さて、蒼龍との戦闘をメインに据えた第3章第1幕『狂瀾怒濤』も今回にて完結。
次回からは第3章第2幕『久別重逢』が開幕となります。
それでは、また次回でお会いいたしましょう。




