第97話 凶夢の再来
第3章 渦巻く陰謀、邪悪の残滓。
第2幕 久別重逢
第97話 凶夢の再来
今回少し短めです!
Side リュドミラ・クロムウェル
「っ―――っ!」
「……ん?ミオ?」
草木も眠る丑三つ時。
そこらで捕まえた魔物の肉に焚火で火を通し、それをつまみながら火の番をしていたあたしは、火の爆ぜる音に混じる苦し気な息遣いを聞いた。
「はぁ……うっ……ぐうぅっ……!!」
よくよく見てみると額には大粒の汗が浮かび、眉間には深いシワが刻まれている。うなされているのは火を見るよりも明らかで、苦し気な様子に堪らず肩を叩いた。
「おーい、ミオ?大丈夫か?」
しかし、軽くたたいた程度では変化はない。相変わらず歯を食いしばって呻き声を漏らすばかりだ。
「おい起きろー。起きた方が楽だぞー。」
あたしも悪夢を見た経験は一度や二度じゃない。ろくでもない内容ばかりで、精神を掻き乱す悪い物だ。
こういう時は一度起きて、散歩するなり、茶を飲むなりして気分を落ち着けるのが手っ取り早い。根本を絶てるわけじゃないが、その後の戦いに残る影響は少なく済む。
「おーい!起ーきーろー!」
「ぶはぁッ―――!!?」
少し強めに額を叩き、怒鳴る手前の大声を掛けるまでしてようやく目を覚ました。
だがその様子は尋常ではない。憔悴しきった目は怯え、呼吸も浅く不安定だ。
「おい大丈―――」
「水っ!み、水はッ!!?」
鬼気迫る表情で辺りを見渡すミオは、土で汚れるのもいとわず地面を触り何かを探しているらしく、そして探し物はどうやら水であるらしい。
「水ならここに―――」
あたしが背後から自分の水袋を取り出すと、ミオはひったくるようにしてそれを奪い取った。その仕草からよほど喉が渇いているのかと思ったが、手に入れた水袋を抱え一向に飲もうとしない。
「……何やってんの?」
「ミラ、師匠?何で……ぁそっか、夢……」
Side END
***
アメーティアスを訪れてからというもの、私が悪夢を見ることは無くなっていた。私としては、あの金貨10枚を支払った『黄金の風亭』でのリフレッシュが効いたのだと思いたい。
しかしあれから丸々3か月。教会で目を覚ました日の数日後、何の前触れもなく再びうなされるようになったのだ。
夢に見るのは蒼龍との戦いで気絶した後の、あの体の芯まで干からびたかのような強烈な渇きと、水を求めて斜面を擦り下る際の拷問という表現すら生ぬるく思える耐えがたい激痛だ。
起きている間は特に意識することも無いのだが、どうやらあの記憶は私の頭に強烈にこびりついてしまったらしい。
現実との区別がつかないほどの明晰夢。そして目覚めた時の強烈な恐怖と焦燥感。
おかげでどこへ行くにも水筒が手放せなくなってしまったが、毎日必ずあの夢を見るわけではないということが唯一の救いだろうか。
「そんな感じで、度々驚かせるかもしれませんが、大目に見ていただけると嬉しいです。」
「―――はぁ、あのねぇ……あたしやベルはさぁ、そういうことを相談しろって言ったつもりなんだけど?」
「でも話したところで何の解決にもならないでしょう?一緒を旅をする師匠には、事前に言った方が良かったかもしれませんが。」
「そうじゃないよ、一人で抱え込むなって言ってんの。あんたはまだ成人したての小娘なんだよ?あたしたちエルフで行けば幼児もいいとこだし、普通の人間からしてもまだまだ子供みたいなもんでしょ。」
「否定は、しませんが……」
事実、前世での成人はまだ3年先の話だ。中学3年かなりたての高校1年なんてものは、まだまだ大人とは呼べない。
しかし私の中身はもう30過ぎのおっさんなのだ。体こそ子供だが、自分の面倒は自分で見れるつもりだし、無闇に人に迷惑をかけるのはどうかと思う。
「もしかして迷惑とか考えてる?ってか考えてるでしょ。」
「え、ええ。そう、ですね。実際迷惑でしょう?」
「いやそんなことないから。それに、人に迷惑かけない人間なんていないんだよ?ベルはあの通りデスクワークから逃げ出してばっかだし、あたしだって戦闘の余波で色んなもの壊してばっかで……あんまり自分の失態は語りたくないけどさぁ。まぁ、そういうことだから。大人だろうが、Sランク冒険者で200歳のハイエルフだろうが迷惑はかけてるの。さっきみたいな例に比べれば、あんたが悪夢の事を相談することの何が迷惑なのか教えて欲しいくらいなんだけど?」
「……」
「だから遠慮なんかしないで、あたしたちをちゃんと頼りなさい。これは許可っていうかもはや命令だから。いいね?」
「……はい。」
普段から気にかけてくれていることも、こうして心配してくれていることも分かるし、それはとてもありがたく思う。
師匠を含めた周囲の人―――というよりアルとルート以外の、本当の私を知らない人たちからすれば、さっきの師匠の言葉通り子供に見えているのだろうから。
ただそれがむしろ、私が師匠を始めとした人々から善意をだまし取っているように思えて、どうにも心苦しいのだ。
あとがき
まぁ~た主人公がストレス過多になってるッ……!!
いやまぁ、もと日本人として15の異世界の色々とワイルドな生活()に放り込まれたらそりゃ精神もすり減るでしょうということなのですが、それにしたってリカバリーが……!リカバリーが難しいんだよ!
《蛇足》
ものすごく今さらですが、この作品のあとがきでは今回のように作者としての悩みやメタ的な視点での発言が多いです。
それは、そもそもこの『獣剣』の執筆というのは私が趣味で行っている物であり、なろうへの投稿は読者の皆様方の反応から作品のブラッシュアップができればよいと思ったところから始まっているからなんですね。
ですので、漫画家が雑誌で連載するような『連載という形で作品を完成させる』のではなく、『書き進めながらそれを読んでもらい、反応を得る』ことが目的のため、極論を言ってしまえばこの物語は絶賛添削中の未完成の物語というわけです。
そういう意識で投稿しているものですから、深い所の世界観設定やちょっとしたネタバレもこのあとがきや蛇足などで語っているわけなんですね。
(あとは、単純に書くことが無いということもあるんですが……)
なので今後も作中で公開するのが難しいと思った裏設定や、何となく後悔したくなってしまった裏設定や思い付きなんかもこの欄で語っていくことになりそうです。
苦手な方には注意喚起が遅くなってしまい申し訳ありません。
こんな感じで自由奔放かつ見切り発車な作者ではありますが、今後ともよろしくお願いいたします。




