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2026戦後彼らが迎えにきた  作者: 不可思議ラボ


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5/7

第5話 地球は一度目ではなかった

画面に映っていたのは

人間ではなかった。

細長い体。

大きな頭。

黒い目。

今

僕たちの前にいる

高等生命体によく似ている。

だが完全に

同じではない。

頭には角のような突起。

背中には

翼にも見える器官がある。

僕は画像を拡大した。

「これを

どこで見た?」

高等生命体は答えた。

『あなたたちが

壁画と呼ぶものです』

やはりそうだった。

昔

テレビで見たことがある。

古代の壁画。

人間とは思えない姿が

描かれているとして

何度も話題になったものだ。

「これも

あなたたちなのか?」

『違います』

予想外の答えだった。

「じゃあ何なんだ?」

『第五期文明の

保存対象です』

僕は

画面を見つめた。

第五期文明。

つまり

僕たちより二つ前。

「人間じゃない?」

『はい』

「地球にいたのか?」

『はい』

頭が追いつかない。

僕たちは

人類こそが

地球で初めて文明を作った

知的生命だと思っていた。

違った。

人類以前にも

文明があった。

しかも

一つではない。

僕は聞いた。

「第一期から

全部見せてくれ」

『許可します』

スマートフォンの画面が

切り替わった。

『地球生命実験

文明記録』

第一期。

映像に現れたのは

巨大な海だった。

陸地は少ない。

海の中に

都市があった。

透明な巨大構造物が

海底に並んでいる。

そこを泳いでいる生物は

魚ではない。

長い手足を持ち

道具を使っていた。

『第一期文明』

『終了原因

環境適応限界』

映像が変わる。

海が急激に変化し

都市が消えていった。

第二期。

今度は

巨大な森林。

木々の間に

見たことのない建造物がある。

そこにいた生命体は

四本の腕を持っていた。

『第二期文明』

『終了原因

資源循環崩壊』

第三期。

乾燥した地球。

地下に広がる

巨大都市。

第四期。

氷に覆われた大地。

第五期。

さっきの

壁画に描かれた生命体。

第六期。

僕は

そこで息を止めた。

映っていた姿が

あまりにも

人間に似ていた。

二本の腕。

二本の脚。

顔。

髪。

服まで着ている。

「人間……?」

『異なります』

よく見ると

少し違う。

瞳が大きい。

指が六本ある。

だが遠くから見れば

ほとんど人間だった。

映像には

巨大な都市が映っている。

僕たちの都市より

遥かに発達していた。

空には

無数の乗り物が飛んでいる。

高層建築。

巨大な塔。

海上都市。

そして

宇宙へ伸びる構造物。

「これが

第六期?」

『はい』

「どうして滅びた?」

少し間があった。

『自己進化失敗』

第4話で聞いた言葉だった。

「それは

どういう意味だ?」

映像が変わった。

第六期の生命体が

何かの装置に横たわっている。

身体へ

小さな機械が入っていく。

次の映像。

別の個体の体が

変化している。

さらに次。

脳と機械が

接続されている。

『第六期文明は

自らの進化を

人工的に加速させました』

「それが

失敗した?」

『はい』

彼らは

寿命を延ばした。

病気を克服した。

身体能力を高めた。

知能も向上させた。

やがて

肉体さえ

自由に変更できるようになった。

だが

問題が起きた。

進化速度が

社会の変化を超えた。

改造された個体。

改造を拒否した個体。

異なる進化を選んだ集団。

同じ文明の中に

互換性のない生命が

生まれ始めた。

争いが起きた。

やがて

第六期文明は

内部から崩壊した。

「それも

見ていただけなのか?」

僕は聞いた。

『はい』

やはり

彼らは介入しなかった。

文明が

存続条件を失うまでは。

映像が終わった。

最後に表示されたのは

僕たちだった。

『第七期文明』

人類。

『終了原因』

その下には

まだ文字がある。

僕は

読むのをためらった。

『文明内部の衝突』

たったそれだけだった。

何十億人も死んだ戦争が

彼らの記録では

一行で終わっている。

「これで七回目……」

僕は呟いた。

『はい』

「地球は

七回もやり直したのか?」

『正確には異なります』

またその言葉だ。

『生命実験は

七回ではありません』

僕は顔を上げた。

「どういう意味だ?」

スマートフォンの表示が

変わった。

第一期より前。

そこに

数字が並び始める。

試験群001。

試験群002。

試験群003。

数字が

高速で増えていく。

百。

千。

一万。

「待ってくれ」

僕は画面を止めた。

「これは何だ?」

『文明形成以前に

終了した生命実験です』

文明に到達したのが

七回だっただけ。

その前には

数え切れないほどの

生命実験があった。

海で終わった生命。

陸へ出られなかった生命。

知能を獲得しなかった生命。

環境変化で消えた生命。

地球は

一つの世界ではなかった。

長い時間をかけ

何度も条件を変えられ

生命を試され続けた

巨大な実験場だった。

「じゃあ

恐竜も?」

僕は聞いた。

『観察対象です』

「絶滅も

あなたたちが?」

『違います』

彼らは

何でも起こしていたわけではない。

偶然。

自然災害。

進化。

競争。

環境変化。

生命自身の選択。

それらを含めて

観察していた。

僕は

あることに気づいた。

「だったら

古代の壁画はなぜ残ってる?」

第五期文明が

人類より遥か昔なら

人間が壁画を描けるはずがない。

高等生命体は答えた。

『その壁画は

第五期に作られたものでは

ありません』

「じゃあ誰が?」

『第七期です』

僕たち?

意味が分からない。

『第五期保存個体の一部が

第七期初期に

地球へ降下しました』

僕は息を呑んだ。

「人類と

会ったのか?」

『はい』

頭の中で

いくつものものが

つながっていく。

空から来た者。

神。

天から降りた存在。

奇妙な姿の壁画。

世界各地に残る

似たような伝承。

「まさか……」

『第七期生命は

彼らを様々な名称で

記録しました』

神。

使者。

天人。

怪物。

空から来た者。

人間には

理解できなかった。

だから

自分たちの言葉で

説明した。

「じゃあ

昔の神話の全部が

本当なのか?」

『いいえ』

即答だった。

『創作された記録も

多数存在します』

こんなときなのに

少しだけ

現実的な答えだった。

すべてが

高等生命体の仕業だった

わけではない。

だが

少なくとも一部には

本当に

地球外から来た存在が

混ざっていた。

そのとき

空から音が響いた。

僕たちを運ぶ小型船の

扉が完全に開いた。

『保存対象個体は

搭乗してください』

周囲の人々が

動き始める。

僕も船へ向かった。

だが

一つだけ気になった。

「なぜ保存するんだ?」

高等生命体が

こちらを見る。

「実験が終わったなら

僕たちはもう

必要ないだろ?」

彼は答えなかった。

僕は続けた。

「第一期から第六期にも

保存対象がいた」

『はい』

「そいつらは

今どこにいる?」

沈黙。

数秒後

僕のスマートフォンに

星図が表示された。

地球。

月。

太陽。

さらに

その外側へ

無数の光点が広がっていく。

そのいくつかに

文明番号が表示されていた。

第一期。

第三期。

第五期。

第六期。

地球から

遥か遠い場所だった。

「生きてるのか?」

『一部は』

背筋が震えた。

人類より前に

地球で生まれた生命が

今も宇宙のどこかにいる。

僕は船の入口で

立ち止まった。

「僕たちも

そこへ行くのか?」

高等生命体は

僕を見た。

『いいえ』

「じゃあ

どこへ?」

彼の黒い目に

青い光が走った。

『あなたたちは

これまでの保存対象とは

異なります』

「何が?」

初めて

彼は少し長く沈黙した。

そして

頭の中に言葉が届いた。

『第七期文明から

初めて確認された

性質があります』

「何のことだ?」

『それを確認するため

あなたたちを

我々の領域へ移送します』

我々の領域。

その言葉の意味を

僕はまだ知らなかった。

ただ一つ

分かったことがある。

彼らは僕たちを

助けるためだけに

迎えに来たわけではない。

地球での実験は

終わった。

でも

僕たちの実験は

まだ終わっていなかった。

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