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2026戦後彼らが迎えにきた  作者: 不可思議ラボ


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4/7

第4話 生き残った人間が選別される

『地球文明

第七期』

その文字を見た瞬間

僕は言葉を失った。

第七期。

それが意味することは

一つしかない。

僕たちより前に

少なくとも六つの文明が

存在していた。

「嘘だろ……」

誰かが呟いた。

僕もそう思いたかった。

だが目の前には

人類を遥かに超える存在がいる。

空には巨大な円盤。

焼けた大地では

植物が再び芽を出している。

もう何を見せられても

否定できなかった。

僕は画面を操作した。

第六期。

第五期。

第四期。

さらに古い記録が

並んでいる。

だが詳細は開けない。

『閲覧権限がありません』

「前の文明は

どうなった?」

僕は高等生命体に聞いた。

『終了しました』

「終了って?」

『存続条件を失いました』

また

彼ら独特の言い方だった。

「滅んだのか?」

少し間があった。

『はい』

地下駐車場が

静まり返った。

六つの文明が

この地球で生まれ

そして滅びた。

人類は七番目。

僕たちが

最初ではなかった。

「全部

核戦争で滅んだのか?」

『いいえ』

返事はすぐに来た。

『原因は異なります』

「例えば?」

『環境崩壊』

一つ目の言葉が届く。

『資源枯渇』

『感染拡大』

『文明内部の衝突』

そして最後に

こう続いた。

『自己進化失敗』

意味の分からない言葉だった。

だが今は

それどころではない。

僕のスマートフォンには

まだ表示されている。

『保存対象』

周囲を見る。

九人の生存者のうち

保存対象は三人。

残り六人には

『地球残留対象』

と表示されていた。

「何が違うんだよ」

残留対象になった男が

高等生命体へ近づいた。

「俺たちは

ここに置いていかれるのか?」

『はい』

「こいつらは?」

男が僕たちを指さす。

『移送します』

「どこへ?」

『地球外保存領域です』

男の顔色が変わった。

「じゃあ

そっちの方が助かるってことか?」

高等生命体は

すぐには答えなかった。

『生命維持という意味では

その可能性が高いです』

空気が変わった。

残留対象の人たちが

僕たちを見る。

さっきまで

同じ場所で

水を分け合っていた人たちだ。

なのに今は

目が違っていた。

「ふざけるな」

一人が言った。

「何でこいつが選ばれて

俺が残るんだ」

誰も答えられない。

僕自身

分からなかった。

僕は特別な人間ではない。

三十歳の会社員。

大きな功績もない。

天才でもない。

「基準を教えてくれ」

僕は言った。

『複数の観察項目による

総合判定です』

「だから

その項目は何なんだ」

高等生命体の目が

青く光った。

僕たちの端末に

同時に項目が表示された。

『他個体への協力』

『危機状況での判断』

『環境への適応』

『知識獲得能力』

『攻撃性』

『集団維持能力』

まだ続く。

数十。

数百。

画面を下へ動かしても

終わらない。

「こんなの

いつ調べたんだ?」

『常時です』

「常時?」

『あなたの出生から

現在までです』

背筋が寒くなった。

僕の三十年間。

学校。

仕事。

家族。

友人。

一人でいた時間まで。

すべて

見られていた。

「プライバシーって

知ってるか?」

思わず言った。

高等生命体は

数秒黙った。

『概念として

理解しています』

こんな状況なのに

少しだけ腹が立った。

そのとき

残留対象の男が

僕の胸ぐらをつかんだ。

「だったら代われよ」

突然だった。

「え?」

「俺には娘がいるんだ」

男の声が震えていた。

「娘を探さないと

いけないんだよ」

僕は何も言えなかった。

男には

家族がいる。

僕が選ばれた理由なんて

僕にも分からない。

「俺より

お前が生きる理由って何だよ」

答えられなかった。

高等生命体が

男の腕をつかんだ。

力を入れているようには

見えない。

それでも男の手は

僕から離れた。

『選別結果の交換は

できません』

「だったら娘を探してくれ!」

男が叫んだ。

「名前を言えば

分かるんだろ!」

高等生命体は

男を見た。

『識別情報を』

男は震える声で

娘の名前と年齢を伝えた。

数秒。

高等生命体の目が

青く点滅する。

僕たちのスマートフォンにも

検索中の表示が出た。

男は祈るように

画面を見ていた。

やがて

結果が表示された。

『生存を確認』

「生きてる?」

男の表情が変わった。

『はい』

「どこだ!」

地図が表示された。

東京から

かなり離れた場所だった。

男は泣いた。

声を出して泣いた。

「会えるのか?」

『可能です』

その返事に

僕は少し驚いた。

彼らは

冷たいだけではない。

少なくとも

人間の希望を

完全に無視してはいなかった。

「娘も残留対象なのか?」

男が聞いた。

高等生命体は

答えた。

『保存対象です』

男の表情が止まった。

「……え?」

『あなたの娘は

地球外移送対象です』

「じゃあ俺も

一緒に行かせてくれ」

『できません』

「父親だぞ」

『理解しています』

「だったら!」

男が叫ぶ。

しかし判定は

変わらなかった。

僕はそこで

初めて理解した。

彼らにとって

家族だから一緒にするという

考え方はない。

一人一人が

独立した観察対象なのだ。

その日の夜。

東京の各地に

巨大な光の柱が現れた。

保存対象になった人間が

集められ始めた。

世界中でも

同じことが起きている。

僕たちは

指定された場所へ向かった。

街は

昼とは別世界になっていた。

黒煙が消えている。

空気も変わっていた。

放射線量を表示する

携帯測定器を見る。

数値が

急速に下がっている。

あり得ない速度だった。

汚染された土。

水。

空気。

彼らは

地球そのものを

修復している。

道の脇には

もう草が生えていた。

数時間前まで

焼け野原だった場所に。

「本当に

再生してる……」

僕は呟いた。

指定場所には

数百人が集まっていた。

全員

保存対象。

子ども。

老人。

医師。

会社員。

学生。

職業も年齢も

バラバラだった。

共通点が

まったく分からない。

空から

小型の船が降りてくる。

扉が開いた。

高等生命体が

僕たちを誘導する。

そのとき

スマートフォンが震えた。

『移送前説明』

画面に

文章が表示される。

『保存対象個体は

地球文明第七期の

終了後も保存されます』

僕は立ち止まった。

終了後?

「待ってくれ」

高等生命体を見る。

「第七期は

終了するのか?」

『はい』

「人間はまだ

生き残ってるだろ」

『存続個体の有無と

文明の終了は

同義ではありません』

嫌な予感がした。

「地球に残る人たちは

どうなる?」

『生活を継続します』

「じゃあ

文明終了って何だ?」

高等生命体は

空を見上げた。

『現在の文明環境を

維持しないという意味です』

僕も空を見る。

巨大な円盤から

無数の青い光が

地上へ降りている。

都市。

道路。

工場。

発電所。

人間が作ったものへ

光が伸びていた。

その瞬間。

遠くの高層ビルが

音もなく消え始めた。

壊れているのではない。

粒子のように

分解されている。

隣のビルも。

その隣も。

道路が消える。

放置された車が消える。

看板が消える。

街そのものが

消されていく。

「何してるんだ……」

僕は呟いた。

『再生です』

「これが?」

『はい』

高等生命体は

当たり前のように答えた。

『地球を

次の状態へ戻します』

僕は

ある言葉が気になった。

次の状態。

新しい状態ではない。

戻す。

「前にも

やったのか?」

高等生命体の動きが

止まった。

僕は続けた。

「第一期から第六期まで

文明が終わるたびに

同じことをしたのか?」

数秒の沈黙。

『はい』

心臓が速くなる。

「じゃあ

前の文明の街も

全部消した?」

『はい』

「だから

残っていないのか?」

『すべてではありません』

僕は顔を上げた。

「どういう意味だ?」

高等生命体は

僕の端末へ

新しい情報を送った。

世界地図が表示された。

そこには

赤い点がいくつもある。

海底。

砂漠。

氷の下。

山脈の奥。

人類がほとんど

到達できない場所。

『過去文明保存地点』

僕は息を呑んだ。

その数は

六つではなかった。

何百もあった。

遺跡。

建造物。

巨大な地下空間。

用途不明の物体。

僕たち人類が

自然物だと思っていたものまで

含まれていた。

そして

画面の一番下に

新しい文章が現れた。

『地球文明第七期

保存処理を開始します』

その下には

もっと気になる表示があった。

『次期生命実験

準備開始』

次期。

つまり

僕たちのあとにも

何かが始まる。

僕は高等生命体を見た。

「人類の次は

何を作るつもりなんだ?」

彼は

初めて答えなかった。

代わりに

僕の端末へ

一枚の画像を送った。

そこに映っていたのは

人間ではなかった。

そして僕は

さらに恐ろしいことに気づいた。

その姿を

どこかで見たことがあった。

何千年も前に描かれた

人類の古い壁画の中で。

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