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2026戦後彼らが迎えにきた  作者: 不可思議ラボ


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3/7

第3話 人類は最初から実験だった

『地球生命実験

対象個体一覧』

画面に並んでいたのは

人間だけではなかった。

犬。

猫。

鳥。

魚。

昆虫。

植物。

細菌。

僕たちが生命と呼ぶものが

すべて並んでいる。

一つ一つに

番号が付いていた。

「実験って

どういう意味だ?」

僕は目の前の彼に聞いた。

返事はない。

黒い大きな目が

僕を見ている。

表情は分からない。

怒っているのか。

悲しんでいるのか。

そもそも

感情があるのかさえ

分からない。

もう一度聞いた。

「僕たちは

実験動物だったのか?」

今度は

頭の中に言葉が届いた。

『表現が

正確ではありません』

「じゃあ何なんだ」

『観察対象です』

「同じじゃないか」

『異なります』

彼はゆっくり

空を見上げた。

上空には

巨大な円盤が浮かんでいる。

『我々は

あなたたちの選択を

観察していました』

その瞬間

スマートフォンが震えた。

新しい画面が開く。

『地球生命実験

記録閲覧』

映像が始まった。

最初に映ったのは

海だった。

人間はいない。

都市もない。

ただ巨大な海と

陸地が広がっている。

画面の端には

数字が表示されていた。

あまりにも古い年代だった。

映像が切り替わる。

海の中を

小さな生命が動いている。

また切り替わる。

植物が広がる。

巨大な生物が歩く。

そして

何度も世界が変わった。

「これ……

地球の歴史?」

隣にいた女性が言った。

高等生命体は

何も答えない。

映像はさらに進んだ。

やがて

人間らしき生物が現れた。

火を使う。

道具を作る。

集団で暮らす。

狩りをする。

争う。

助け合う。

子どもを育てる。

死者を埋葬する。

そして

文明が生まれた。

都市。

農業。

文字。

国家。

戦争。

科学。

機械。

電気。

コンピューター。

宇宙開発。

映像は

恐ろしい速度で進んでいく。

最後に映ったのは

三日前だった。

核兵器が

空へ上がっていく。

そこで映像が止まった。

『観察期間終了』

僕は画面から

目を離した。

「全部

見ていたのか?」

『はい』

「どこから?」

『複数地点からです』

「いつから?」

少し間があった。

『この惑星で

生命実験を開始した時点から』

地下駐車場にいた全員が

黙った。

生命実験を

開始した?

その言い方には

決定的な違和感があった。

僕は聞いた。

「生命が生まれた時から

という意味か?」

『違います』

嫌な予感がした。

「じゃあ

どういう意味だ?」

彼は僕を見た。

『生命が自然発生する以前です』

誰も動かなかった。

理解するまで

時間がかかった。

「待ってくれ」

僕は言った。

「それじゃまるで……」

声が震える。

「地球の生命を

あなたたちが作ったみたいじゃないか」

『作ったという表現も

正確ではありません』

またそれだ。

彼らは

人間の言葉を使うのに

決して曖昧な答えをしない。

『我々が行ったのは

生命発生条件の構築です』

スマートフォンに

新しい映像が表示された。

まだ生命のいない地球。

その周囲に

いくつもの光が浮かんでいる。

円盤だった。

今

東京の上空にいるものと

よく似ている。

海へ

何かが投入された。

小さすぎて見えない。

画面には

説明が表示された。

『初期生命環境

投入完了』

僕の背中に

冷たいものが走った。

「じゃあ……」

女性が呟いた。

「私たちは

あなたたちが作ったの?」

『直接的には

違います』

彼は答えた。

『我々は

開始条件のみを与えました』

そこから先は

生命自身が変化した。

環境に適応し

進化し

絶滅し

また増えた。

彼らは

その結果を観察していた。

人類が現れたことも。

文明を作ったことも。

戦争を始めたことも。

すべて

結果の一つだった。

僕は

どうしても聞きたかった。

「戦争も

あなたたちが起こしたのか?」

初めて

彼は即座に答えた。

『いいえ』

「本当に?」

『我々は

文明内部の意思決定へ

直接介入していません』

「じゃあ

核兵器を作ったのも?」

『あなたたちです』

「撃ったのも?」

『あなたたちです』

何も言えなかった。

彼らが

世界を壊したわけではない。

人間が

自分で壊した。

彼らは

それを見ていた。

ずっと。

「だったら

なぜ止めなかった」

昨日と同じ質問だった。

でも今は

意味が違っていた。

「何十億人も

死ぬと分かっていたんだろ」

『高い確率で

予測していました』

「それでも?」

『観察中の介入は

実験結果を変化させます』

腹の奥から

怒りが込み上げた。

「人が死んでるんだぞ!」

思わず叫んだ。

彼は動かない。

「僕たちは

数字じゃない!」

地下に

僕の声だけが響いた。

しばらくして

彼から言葉が届いた。

『理解しています』

「何を理解してるんだよ」

『あなたが怒る理由です』

意外な返事だった。

『あなたたちは

我々が予測した以上に

個体間の結びつきを

発達させました』

スマートフォンに

映像が流れた。

知らない人を助ける人。

子どもを守る人。

災害現場で

他人を救う人。

食料を分ける人。

そして

核攻撃の直後。

自分も傷ついているのに

瓦礫から他人を

助け出そうとする人々。

『これらも

記録されています』

僕は画面を見た。

戦争だけではない。

人間が誰かを

救った瞬間まで

彼らは見ていた。

「それで

僕たちをどうする?」

彼は答えなかった。

代わりに

上空の円盤から

低い音が響いた。

青い光が

街全体へ広がっていく。

焼けた地面から

草が伸びていた。

汚れていた水が

透明になっていく。

空を覆っていた煙が

少しずつ消えていく。

地球再生計画。

本当に

始まっている。

「地球を直したあと

人間はどうなる?」

僕は聞いた。

『選別します』

「選別?」

『次段階へ移行可能な個体と

地球に残る個体を

分類します』

嫌な言葉だった。

「何を基準に?」

『全観察記録です』

僕のスマートフォンに

個体番号が表示された。

H-2026-071843。

その下に

新しい項目が増えていた。

『判定中』

周囲を見る。

他の生存者の端末にも

同じ表示が出ている。

全員

判定中。

「不合格だったら

どうなる?」

誰かが聞いた。

彼は答えなかった。

その沈黙が

何より怖かった。

やがて

僕の画面が変わった。

『判定完了』

心臓が大きく鳴った。

その下に

文字が現れる。

『保存対象』

僕だけではない。

数人の画面にも

同じ文字が出ていた。

だが

一人の男のスマートフォンには

違う表示が出ていた。

『地球残留対象』

「何だよこれ」

男が言った。

「保存って何だ?」

誰にも分からない。

そのとき

僕の画面に

もう一つ通知が届いた。

『保存対象個体へ』

『移送準備を開始します』

「移送?」

どこへ?

僕が顔を上げると

高等生命体は

空を指した。

巨大な円盤ではない。

そのさらに向こう。

宇宙を。

そして

頭の中に言葉が届いた。

『あなたたちは

この実験で初めて

保存される文明ではありません』

僕は息を止めた。

初めてではない?

スマートフォンに

新しい一覧が表示された。

そこには

人類の歴史には存在しない

文明の名前が

いくつも並んでいた。

一番下に

僕たちの文明がある。

その横には

番号が付いていた。

『地球文明

第七期』

僕は

その文字から

目を離せなかった。

僕たちの文明は

最初ではなかった。

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