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【VOICE~日本酒奇譚~】  作者: 純米パパ
第一章 日本全国酒巡り
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【VOICE~日本酒奇譚~ #06】酒蔵との出逢い

自ら選んだ日本酒「酔鯨 特別純米酒」との出逢いにより、地酒の楽しみ方や酒蔵への興味が芽生えた俊。


通勤中…


仕事中…


食事中…


気が付けば、頭の中は日本酒のことでいっぱいだったーー


「ブーッブーッ」


ズボンの右ポケットでスマートフォンが震えた。

誰かから連絡が来たようだ。


「今夜、お父さんと大桝で飲むけど、俊もどう?」


母から飲みの誘いだった。


『おぉ!ナイス!!』


俊は、突然舞い込んできた、日本酒の機会にテンションが上がった。

そして何より、酒を囲んで家族とのひとときを過ごすことに、言い表せないような幸せを感じていたのだ。


「いいよ」


短いが、確実に嬉しさが込められた返信だった。


ーー


仕事を終え、「酒の大桝 雷門店」に到着。


「いらっしゃいませぇ~!待ち合わせのお客様あちらで~す!」


「あ、どうも。」

「あれ?」


俊は、店内の一角に設けられた販売ブースに目を奪われた。


そこには「出羽桜」と書かれた旗と法被を着た営業マンが立っていた。


「あ、今日は酒蔵さんが出張販売に来られてるんですよ!」


よほど気になっていたのか、そんな俊の姿を見た店員さんが教えてくれた。


「へぇ~そうなんですねぇ。酒蔵さんなんだ…」


そう言って、とりあえず両親が待つテーブルへ向かった。


「お疲れ様。今日は酒蔵さんが来てるわね。」


「ね!そうみたいだね。」


母との会話を済ませ、俊は、早速メニュー表に目を通す。


「せっかくだから、酒蔵さんに話聞いてきたら?」


「え?」


俊の様子を見て察した、父からの突然の提案だった。


しかし、父の言葉に背中を押され、俊は販売ブースへ向かうことにした。

やはり相当気になっていたようだ。


「じゃあ、ちょっと行ってくる。先に飲んでて!」


そう告げて、足早に販売ブースへと向かった。


「いらっしゃいませ!!」


「あ、どうも…」

「出羽桜っていう日本酒なんですか?」


「そうです!山形にある出羽桜酒造という酒蔵なんですよ。」


営業担当の男性は、物腰が低く、丁寧な話し方をする人だった。


俊は、その親しみやすさのおかげで緊張がほどけつつあった。


「出羽桜って素敵な名前ですね!」


「ありがとうございます! うちは明治25年創業で、ずっと山形の地で酒造りを続けているんですよ。」


「へぇ~、そんなに歴史があるんですね!」


「はい。地元の方に愛されながら、全国の方にも楽しんでいただけるお酒を目指しているんです。」

「良かったら、どれか試飲してみませんか?」


「え、良いんですか?」


「もちろん!」


【出羽桜 大吟醸酒】【桜花 吟醸酒】【出羽桜 出羽燦々】

俊は、この三種類を試飲させてもらった。


「うん、この桜花(おうか)ってお酒が一番好きかもしれないです!」


「さすがですね!この桜花は、うちの定番酒なんですよ!」


「おぉ~そうなんだ。」


「これ、吟醸造りという技法で造られたお酒なんですけど、昔は吟醸酒って鑑評会用みたいな特別な機会にしか出てなかったんですよ。」

「でも吟醸酒の素晴らしさをもっと知ってもらいたいってことで一般用に販売したのがこの桜花なんです!」


「へぇ~そんな背景があったんですね!?面白い!!」


『あれ?そういえば、純米吟醸とただの吟醸酒ってどう違うんだ?』


俊はふと、「吟醸」という言葉に疑問を抱いたが、酒蔵さんとの会話を続けた。


「それぞれの酒蔵に色んなエピソードがあるので、面白いですよね。」

「ちなみにこのブースで購入したお酒も店内で飲めるらしいので、良かったらいかがですか?」


「そうなんですね!じゃあ、桜花を一本いただきます!!」


「ありがとうございます!またよろしくお願いします!」


俊は、【桜花 吟醸酒】を購入して席に戻った。


「買っちゃった。いろんな話聞けて面白かったよ。」


満足そうに、そして、嬉しそうに両親に報告する俊。


「あら、素敵なデザインね!」


「でしょ。」


早速、開栓。


乳白色のマーブル模様が施されたガラスのぐい飲みに、桜花を注ぐ。

酒の透明感とぐい飲みに浮かぶ乳白色の模様。

店内の照明を受けて、それらが重なり合い、神秘的な輝きを放っていた。


「いただきます…」


『うわぁ…旨い…』


俊は、改めてお酒のおいしさを噛みしめた。


「さっきの試飲から見てたけど、キミ、良い反応してくれるね。」


すると、【桜花 吟醸酒】が俊の目の前に姿を現した。


「あ…え?」


俊は、なぜか呆気にとられている。


「うん?どうしたんだ?」


「あ、いや、名前的にてっきり女性が出てくるのかと思ってたから…」


「フッ、他の酒たちにもよく言われるよそれ。」


「でも桜の似合う男性ってかっこいいっすよ!」


「それはどうも。」


桜花は、クールで飾らない、魅力ある男性だった。

年はおそらく俊よりも少し上くらいだろう。若そうなのに落ち着きがある。

髪はハーフアップ。

桜柄の半纏をまとい、左耳には桜のピアスを垂らしている。なかなかのお洒落さんだ。


「僕、実は桜が大好きで、ラベルに一目ぼれしたんですよ!」


「あぁ、結構そういう人多いよ。」


「このお酒、フルーティーな香りと綺麗な味わいですごい飲みやすいです!純米酒とまた違う美味しさですね。」

「これって吟醸造りなんですよね?」


「うん、まぁね。吟醸造りってどんなのか知ってる?」


「いや、知らないです!知りたいです!」


「おぉ〜勉強熱心だな。」

「吟醸造りっていうのはさ、酒の造り方の一種だよ。」

「よく磨いたお米を使って、低い温度で時間をかけて発酵させるんだ。」


「へぇ~」


「あとは、吟醸酒の場合、原料に醸造アルコールを使うのも特徴だな。精米歩合は60%以下って決まりもある。」


「なるほど! 今まで純米酒系しか飲んでこなかったから、醸造アルコールが入っているお酒は初めてです。」


「そうか。ちなみに、純米吟醸酒は知ってるだろ?そっちは醸造アルコールを使わずに造るんだ。」


「へぇ~! 同じ吟醸造りでも、違いがあるんですね!」


「そういうこと。知ると、また面白いだろ?」


「はい!純米吟醸と吟醸酒の疑問が解けました!」


「今回、キミが感じたフルーティーな香りは吟醸造りから生まれる特徴でもある。」

「あと、すっきりとした味わいには、醸造アルコールの効果が関係していることもあるんだ。」


「なるほどなぁ〜そういうの知るとまた味わいが変わってきますね!」


「まぁ、そうだね。ゆっくり楽しんで味わってくれれば俺は嬉しいよ。」

「じゃあ、また!」


「はい! ありがとうございます!」


桜花との会話を終えた俊は、再びお酒を口にする。


日本酒には、味わいだけじゃない面白さがある。


酒蔵ごとに歴史があり、造り手の想いがあり、それぞれのお酒が生まれた物語がある。


それを知るだけで、目の前の一杯が、もっと特別なものに感じられた。


『もっといろんな酒蔵の話を聞いてみたいな……』


俊の好奇心は、まだ見ぬ日本酒の世界へと広がり始めていた。


★★★


■今回登場した日本酒■

出羽桜酒造(山形県天童市)

【出羽桜 桜花 吟醸酒】


原材料:米(国産)・米麹(国産米)・醸造アルコール

精米歩合:50%

アルコール分:15度


吟醸酒ブームの火付け役ともいわれる、出羽桜の代表的な定番酒。

フルーティーな吟醸香と、爽快ですっきりとした味わいが特徴。

日本酒の魅力に目覚めるきっかけになったという声も多い一本です。


それでは、今日も乾杯!!


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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