第5話 いざ、ミネルラ国へ
明日からミネルラ国か。
荷物チェックしておこうと。
道中で洗濯するとしても、替えの下着は最低でも一週間分はいるわよね。
マントは儀礼用を二枚入れとけばいいかな?
シャツは汗をかくかもしれないから、十日分は必要だわ。
この世界に靴下って概念がないから素足にサンダルになるのよね。
そうそう、石鹸はこっちを持っていかないと。この部屋の石鹸なんて、洗濯石鹸じゃない。顔や体洗ったら肌が突っ張るってもんじゃなかった。即、自腹でオリーブ石鹸もどきに買い換えたわよ。髪用のシャンプーやリンス、ヘアパックがないとか信じられなかったわ。
世の女性はどうしてるんだろう。
教えてほしい。
武器は···いるの?
重いんだけど。
それに入れる場所ないわよ、もう。
着替えや石鹸等がぎっしり詰まった箱を見て、悩んだ。圧縮袋あればいいのに···
ミネルラ国への外遊が始まった。
巨躯の黒馬に跨る。
最初見たときは、黒い壁かとおもったわよ。
乗馬なんてしたことないから焦ったけど、そこは体が覚えていたのか、ひらりと馬に跨がれた。
将軍が歩行じゃ格好つかないし。
で、武器なんだけど、将軍なんだから、武器は持っていかないと駄目だろうと思い直し、背中に重そうな大剣を括り付けた。
大剣があたるところは蒸れるんだよな。大剣形の汗染みなんて最低。
アンドレアはあたしの荷物の多さに初めは引いてたけど、絶対に持っていくと我が儘言ってたら、
「野営地での疫病や感染症を防ぐため、常に清潔を保つよう率先して模範を示されるとは」
とかなんとか言って自分を納得させて、なんかわかんないけど、ひとりで感動してた。
ごめん。
臭い対策なのよ。
悪いわね、荷物増やして。
行軍して、一日目であたしは音を上げた。
小休止のときに、水を飲もうとして、皮の水筒を探したら、水筒に名前が書いてないのよ。
これじゃ、どれが自分のか分からないじゃないの。
下手したら、むさいオヤジと間接キスなんて、恐怖でしかない。
信じられない。
自分の持ち物には名前を書いておくって、常識よね。
小休止のときにドスを効かせた声で命令した。
『貴様ら、今日中に己の持ち物に名前を記せ!』と。
兵士たちは
「将軍閣下が規律の徹底をなされている!」
とかなんとか言って、ピシッと敬礼してたけど、違うのよ。ただの間接キス防止策よ。
兵士たちが名前を書くまでは、間接キス防止に自分の水筒を斜めがけにして持っている。
探し出すのに苦労したから、絶対に野営地で名前書かなきゃ。
見晴らしのいい草原に簡易テントが張られた。
今夜はここで野営となる。
満点の星空って初めて見た。
凄い。
夜空一面を埋め尽くす星々。
感動だわ。
兵士達は見張りをするもの、休息を取るもの、荷を確認するものと分かれた。
大臣、将校クラスには個人用のテントが充てがわれ、それ以外は大型テントで雑魚寝。
大型テントだったら、加齢臭と変な熱気にまず、耐えられなかったわ。
皮の水筒に名前を入れた。
これじゃ、ぱっと見わからないか···
そうだ、目印いれよう。
ありきたりだと目立たないから···フッカちゃんでも描くか。
ゆるキャラなんてこの世界にはないから目立つわ。
やや楕円形の顔にねぎの角とウサギのような耳を描いて、頭でっかちになるようにと···
ついでに日本語で台詞も入れとこ。
おねぎしまぁす〜と。
完璧。
あたしは水筒を洗うために幕外へ出た。
川で水筒を洗い、ついでに下着とシャツも洗う。
洗濯物を絞ると、信じられないほどの水が出た。さすが、将軍。握力が半端ないわ。
部屋干しかぁ···
そうだ、焚き火のそばにでも干しておこう。
オッサンの下着なんか盗むヤツはいないし。
「すまんが、少し場所を貰うぞ」
さっと、兵士たちが場所を開けた。
水筒を腰掛けになっている丸太に置き、あたしは拾った枝を組み合わせて洗濯物を干す。
干し終えると兵士たちが水筒をガン見してた。
なに?
なんかやらかした?
ひとりの兵士が恐る恐る声を掛けてきた。
「グリッソム将軍、こ、この紋様は···」
「印だ」
「···印···」
あたしの言葉に兵士たちは一様にゴクリと息を飲んだ。
なに···?
なんかあった?




