情報屋マダム・ヴェイル
内部には、天井から無数のクリスタル・シャンデリアが吊り下げられ、その光を反射して、入り組んだ真鍮の配管が黄金色に輝いている。
蒸気圧で制御された隠し通路や秘密の小部屋が無限に存在するその場所は、上層の貴族から下層の犯罪者までが情報を売り買いする、この都市で最も危険で甘美な交差点だった。
ロイスとジェミニが中に入ると、蒸気式の自動蓄音機が奏でる軽快なワルツと、着飾った賓客たちの陽気な笑い声が耳に飛び込んできた。中央の豪華な深紅のソファに、その女は座っていた。
情報屋マダム・ヴェイル。彼女は全身を最新の流行服で飾り、手には琥珀色の液体が揺れるクリスタルグラスを携えていた。
「あら、アッシュウォーカーさん! こんな煤煙の隅っこまで、わざわざ私の最新型のスカートの噂を聞きに来たのかしら?」
マダム・ヴェイルは、裏社会の情報屋とは思えないほど陽気で奔放な口調で、ロイスの無駄話には、さらに巨大な無駄話の波で応戦してきた。ロイスは優雅に会釈し、華やかに切り返した。
「ヴェイルさん。素敵なシャンパンね。でも、今夜私が欲しいのは、そんな甘い泡じゃなくて、煤煙の芸術家に関する、とびきり苦くて危険なゴシップよ」
ジェミニは一歩前に出て、マダム・ヴェイルの視線を遮るように立ち、静かな口調で情報を整理し始めた。
「マダム・ヴェイル。我々は貴女に、今回の記憶盗難事件の依頼料の一部として、この希少な真鍮製の精密ギアを提供する。これは上層の技術にしか使われない特注品だ。では、今回我々が求めているのは、最近地下蒸気迷宮周辺で相次いでいる、黒い残滓の皮膚を持つホームレスの失踪事件に関する非公式な情報だ」
ジェミニの論理的かつ具体的な対価の提示に、マダム・ヴェイルは初めてその瞳に商売人としての真剣な光を宿した。




