狂気の祭壇
プロメテウス・エンジンの心臓部。そこは数万の真鍮パイプが巨大なパイプオルガンのように幾重にも組み上げられた、狂気と美が同居する黄金の聖域であった。
周囲の壁面を埋め尽くす大小様々な圧力計の針は、限界を超えて激しく振れている。中央の巨大な炉からは、都市の全生命力を象徴する青白い蒸気が、天を衝く咆哮を上げて噴き出していた。
その轟音は、もはや機械の作動音ではなく、地底に閉じ込められた神の鳴き声のようでもあった。
その光り輝く狂気の祭壇。頂点にある制御座に、ドクター・エフィメラは神の如き静かな威圧感を纏って座していた。
「……ようこそ。地獄の迷宮を潜り抜け、真実の深淵へと辿り着いた勇気ある者たちよ。そして、愛しのルイーズ」
エフィメラの声は静かに、しかし空間全体に共鳴するように響き渡った。彼が手にした銀の杖をコツリと鳴らすと、周囲の蒸気の流れが止まり、三人を静かに迎え入れる。
「ドクター・エフィメラ。もうお遊びは終わりよ。あなたの作り上げたこの悪趣味な箱庭を、根こそぎ解体しに来たわ。この汚らわしい歯車の音を、今すぐ止めてあげる」
ロイスがボウガンを構え、仮面の奥の瞳を鋭く光らせて言い放つ。だが、エフィメラは微塵も動じない。彼の視線はロイスの全身を舐めるように動き、最終的には彼女の左腕を覆う不気味な黒い残滓に注がれた。その瞳には、父親のような慈しみと、吐き気を催すほどの濃厚な執着が混在している。
「解体? 酷い言い草だね。私はただ、この欠陥だらけの世界を修理しているに過ぎないのだよ。部品が摩耗し、心が故障し、やがて死というエラーで失われる。そんな不条理な人間を、私は救いたいだけだ。……ルイーズ、君は知らないだろう? 十年前、この場所で真に何が起きたのかを。そして、なぜ私が君をこうして最高傑作として招き入れたのかをね」




