暴かれた裏切りの真実
「ベル! 逃げて、引き込まれるわ!」
ロイスがガントレットから連射ボウガンを乱射し、番人の関節部を狙うが、番人は背負った巨大な処刑斧を盾のように使い、すべてのボルトを火花と共に弾き飛ばす。そのまま、バランスを崩したベルの華奢な胴体を断罪の刃が捉えようとしたその刹那、ジェミニがその懐へと弾丸のような速度で滑り込んだ。
「解体対象の出力が理論値を超えている。エフィメラ、貴様、どれほどの残滓をこの機械に食わせた! ……だが、複雑な機構ほど、致命的な隙は生まれる!」
ジェミニは番人の脇腹、数百の歯車が複雑怪奇に噛み合う主駆動核を正確に見定め、重量級の大型レンチを渾身の力で叩き込んだ。
鼓膜を突き破らんばかりの衝撃音が広場に反響する。だが、番人は怯まない。その衝撃の瞬間、番人の文字盤の裏側から、ドロリとした不気味な銀色の液体、高濃度の記録水銀が溢れ出した。
その液体が熱を帯びた床に広がり、周囲に漂う蒸気と混ざり合った瞬間、広場の景色が不自然に歪み始めた。
これは幻影ガスによる主観的な幻覚などではない。番人の深層回路に保存されていた、何者にも改竄不可能な客観的な事実のホログラム投影だ。
歪んだ光の中に、見覚えのある制服を着た男たちが浮かび上がった。
聖油騎士団の上層部、そしてジェミニがかつて忠誠を誓った将軍たちだ。そして、その中心で淡々と不敵な笑みを浮かべ、高級なワイングラスを傾けるドクター・エフィメラの姿があった。
『……素晴らしい条件だ、ドクター。我々騎士団に、あの忌まわしき灰色の朝をもたらした残滓の力を、完全に御する術をくれるというのだな?』
騎士団の将軍が、目の前の狂気を受け入れ、野心を隠そうともせずに問いかける。
『左様。残滓は呪いではない、進化のための究極の兵器です。私がプロメテウス・エンジンに真鍮の心臓を接続し、都市全域の蒸気神経を掌握すれば……貴公らは市民全員を、恐怖も、迷いも、痛みも知らない、絶対に裏切らない究極の歩兵へと変えることができる』
エフィメラの細く白い指が、悪魔の設計図の上を滑る。
『その代わり、私の実験に必要な素材となる人間の無制限な確保と、特区零番への完全な立ち入り権限を認めていただきたい。……簡単な取引でしょう?』
『……よかろう。ネオ・ロンドニウムの平和と、騎士団による恒久的な支配のためだ。契約は成立だ、エフィメラ。不必要な人間なら、いくらでも提供してやる』
「……っ! ああ、……あああああ!」
投影された映像を見たジェミニの動きが、激しい憤怒と絶望によって凍りついた。
彼が誇りを賭けて仕え、命を懸けて守り続けてきた聖油騎士団。その真実は、守るべき弱き市民を、自らの支配権を強化するための生きたスペアパーツとして狂科学者に売り渡す、この世で最も汚らわしい裏切り者たちの集団だったのだ。




