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【25万PV感謝!】最強スキル【一撃必死】を授かったけど、一日五発撃たないと俺が死にます ~爆死回避のため、今日も現代ダンジョンに潜ります~  作者: 難波一@『真祖竜転生』発売中!
第四章 練馬区の先輩達

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53/64

第53話 緊急事態

練馬区第一ダンジョン、地下二十三階層。


ユニークモンスター、グランドタートルを倒した牧島先輩は、その後も上空を飛ぶ撮影用ドローンへ向かって何やら大声で喋り続けていた。


どうやら配信を見ている視聴者へ勝利報告をしているらしい。


やがて巨大な甲羅のそばへしゃがみ込み、慣れた手つきで素材の剥ぎ取りを始める。



(今のうちに行こう)


『にゃ』



俺とフランは岩陰からそっと離れ、牧島先輩に気づかれないよう別の通路へ滑り込んだ。


結局、声をかけることはしなかった。

あの人が無事だったなら、それでいい。



「……それにしても」



牧島先輩のいる広場が見えなくなってから、俺は小さく息を吐いた。



「凄いなぁ……みんな、そんなにプロの探索者になるために頑張ってるのか」


『何を今さら言ってんにゃ』



隣を歩くフランが呆れたように尻尾を揺らす。



『今の人間界じゃ、戦闘向きのスキル手に入れたヤツがプロ探索者目指すのは珍しくねーにゃ。むしろ、おみゃーみてぇにあんだけ強ぇスキル持ってて全力で探索者から逃げようとしてる方が少数派にゃ』


「……まあ、そうなんだろうけどさ」



言われてみれば、その通りなのかもしれない。


藤宮先輩たちも。

江戸川会長も。

そして牧島先輩も。


危険なダンジョンへ何度も潜り、自分のスキルを磨いて、将来は探索者として生きていこうとしている。


俺と一つしか年齢が違わないのに、もう自分の進路を決めて、そのために努力しているわけだ。



(……俺には無理だな)



さっきの牧島先輩は、確かに少しだけ格好よかった。


でも、だからといって俺まで「よし、探索者になろう」とはならない。


毎日のようにモンスターと命懸けで戦う生活なんて、どう考えても胃に悪すぎる。



(俺はやっぱり普通に就職して、決まった時間に帰って、家でゲームして暮らしたい……)



それが俺の理想である。


もっとも、現在の俺には帰る住所すらないのだが。

考えると悲しくなるので忘れよう。



 ◇◆◇



それから俺とフランは、『探査』に映る周辺情報を頼りに最短ルートを選びながら下層へ進んだ。


途中で何度かモンスターの群れに遭遇したものの、今は無理に戦う必要もない。


横道へ逃げたり、高い岩場を飛び越えたり、ときには壁を蹴って天井近くを抜けたりしながら、とにかく時間を優先する。


そうして、俺達は地下三十階層へとやってきた。



「よしっ!」



パァンッ!


俺は黒い覆面の上から自分の両頬を叩いた。



「あとちょっと。頑張るぞ!」



地下四十階まで残り十階層。


そして、今日の【一撃必死(マストダイ)】も、まだ三発残っている。

午前零時までに全部使い切らなければ、俺自身が爆発四散する。


最下層へ行くことばかり考えて、肝心のノルマを忘れていたら笑い話にもならない。



『そろそろ爆発の画が欲しいにゃ~』



フランがのんびりした声を出す。



『バカ先輩も生徒会のヤツらも追い抜いたし、ここまでかなり急いだにゃ。すぐには追いついてこねーにゃろ。ぼちぼち【一撃必死(マストダイ)】使ってくにゃ』


「それはいいけど、一発は残すからな」


『なんでにゃ』


「ボス用」



俺は即答した。



「何が起きるか分からないんだから、最後の一発だけは絶対に取っておく」


『まだビビッてんのかにゃ。このレベルのダンジョンにおみゃーを脅かす様なモンスターは出ねぇにゃ』


「そうだとしてもだよ。万が一、切り札を全部使ってから強いボス出てきたら嫌じゃん。念には念だ」


『まあ好きにするにゃ』



フランがスマートフォンを構える。

俺は一度深呼吸してから頷いた。



「じゃあ、配信再開しよう」


『ほいにゃ』



画面が切り替わる。

途端にコメント欄が猛烈な速度で流れ始めた。



「えー、おはダイナマーイト」


《おかえり》


《帰ってきた》


《おはダイナマイト》


《ちょいちょい配信切れるの何なん?》


《トイレ休憩?》


《ダンジョンでトイレ配信はやめろ》


《てか背景変わってね?》


《あれ?》


《もう30Fじゃね???》


《早くない?》


「…………」



流石は目の肥えた視聴者達だ。気づくの早いな。

俺は何事もなかったようにカメラへ向き直った。



「えー……ちょっとですね、諸事情により配信を止めてたわけですが」



何を喋ればいいんだろう。

未だに全然慣れない。



「ここからはですね。張り切って、モンスターを爆殺したりしていこうと思います」


《待ってました》


《それでこそダイナマイト練馬》


《爆発キター》


《「モンスターを爆殺したりしていこうと思います」》


《初めて聞く日本語》


《鬼みたいな強さからのクソみたいなトークスキル》


《戦闘100点 配信トーク2点》


(無茶苦茶言われてる……)



俺は一瞬コメント欄を見たあと、静かに視線を逸らした。

今日はこれを何回やればいいんだろう。


とにかく配信より、まず安全確認だ。



(フラン、近くに他の探索者はいない?)


『ちょい待ちにゃ』



フランが『探査』を展開する。

しばらくしてフランが念話を送ってくる。



『大丈夫にゃ。近くに人間の反応はねーにゃ。思う存分やってやれにゃ』


(了解)



そのまま通路を抜けると、前方に大きな広場が現れた。


そこには三体の巨大な亀型モンスターが、のそのそと歩き回っている。


さっき牧島先輩が戦ったグランドタートルほど巨大ではない。

それでも全長五メートル以上。

分厚い甲羅を背負い、太い四肢で地面を踏み鳴らしている。



(ケイブトータスか)



この辺りの階層に出現する通常モンスターらしい。

俺は三体の位置を確認した。



(フラン。二匹同時に爆破するから、念のため『人払い結界』お願い)


『まかせろにゃ』



フランの周囲から淡い魔力の波が広がっていく。



『その代わり、ここらでちょっと映えるバトル頼むにゃ。そろそろ視聴者にもサービスしてやるにゃ』


(俺、命のノルマ消化してるだけなんだけど……)



どうしていつの間にかエンタメ性まで要求されるようになったのか。


それでも俺はカメラへ向き直った。



「えー、それじゃあですね」



広場の三体を指差す。



「あのデカい亀たちを、爆破していきたいと思います」


《言い方軽すぎて草》


《亀逃げて》


《爆殺予告》


《待ってました》


「それじゃ、いきます」



地面を蹴った。


ドンッ!!


視界が一気に流れる。


三体のうち、手前にいる二体へ一瞬で接近。

俺は右手と左手、それぞれの人差し指を伸ばした。



「ほいっ!」



ドスッ! ドスッ!


二本の指を、それぞれのケイブトータスの首元、甲羅と皮膚の隙間へ突き刺す。



「ゴォッ!?」


「グォォッ!?」



二体が同時に首を伸ばした。

その時には、俺はもう十数メートル後方まで退避している。


カッ!!


二体の甲羅の隙間から、眩い光が漏れ出した。



「【一撃必死(マストダイ)】」



二匹を指差した直後。


ボガァァァァァァンッ!!


二つの爆発がほとんど同時に広場を呑み込んだ。


爆炎と衝撃波。

砕けた甲羅の破片が飛び散り、地面の魔晶石が激しく揺れる。



《うおおおおお》


《二体同時!?》


《ダブルマストダイ》


《これこれ》


《やっぱダイナマイト練馬は爆発してなんぼ》



何はともあれ、これで残り一発。



(よしっ)



予定通りだ。


そして爆心地のすぐそばにいた三体目のケイブトータスは、爆風をまともに受けていた。


幸いというべきか、甲羅に守られ、まだ生きている。

ただし身体は大きく吹き飛ばされ。


ゴロゴロゴロゴロッ!!


甲羅へ首と四肢を引っ込めたまま、高速回転していた。



(……またそれ!?)



地面を滑る巨大な甲羅が壁へ激突する。


ドガァンッ!!


そして跳ね返る。


ゴゴゴゴゴゴッ!!


今度はこちらへ向かって突っ込んできた。



《甲羅飛んできたw》


《避けろ!》


《ヒャッハー》


《これどっかで見たことある》



俺はその場で膝を曲げた。



「よっ!」



脚に力を入れて跳ぶ。

身体が一気に天井近くまで上昇した。

俺は空中で反転し、そのまま両足を天井へつける。


そして──

迫ってくる巨大な甲羅を見下ろした。


やるなら、確実に即死させねば。



「ダイナマイトォォ……!」



両脚へ力を込める。


ドンッ!!


天井を蹴った。

身体が一直線に落下する。

狙うのは、回転する甲羅のど真ん中。



「スタンプッ!!」



右足を突き出した。


バッキャァァァンッ!!


分厚い甲羅が、俺の足を中心に放射状へ砕け散った。

そのままケイブトータスの身体まで踏み抜き、勢いよく地面へ着地する。


ズドォンッ!!


大量の甲羅片が周囲へ降り注いだ。



「…………」



ちょっとやりすぎたかもしれない。



『討伐対象の所有権を確認しました』


『アイテムチェストの自動解体機能を実行します』



システム音声とともに、粉々になったケイブトータスの死骸が光へ変わって消えていく。



《ヒャッフー!!》


《マンマミーア!!》


《スタンプwww》


《ケイブトータスの甲羅踏み抜くとか意味分からん》


《レベルいくつだよコイツ》


《相変わらず意味不明に強くて草》


《ダイナマイトスタンプ流行りそう》


「…………」



また何か余計なものが流行りそうな気配がする。

考えないことにした。



(これで残り一発)



残すは最後の一回のみ。

あとは最下層まで行き、ボスへ使えば今日のノルマは終了。


我ながら完璧な計画だ。



『結界ももういらねーにゃ』



フランが『人払い結界』を解除する。



『地味に魔力食うし、先進むにゃ』


(うん。サッサと終わらせてネカフェ帰ろう)



俺がそう答えた、その時だった。



「いたぞォォォォッ!!」



背後から突然、大声が響いた。



「ダイナマイト練馬ァァァ!!」


「ひぇっ!?」



変な声が出た。

勢いよく振り返る。


広場の入口──そこに四人の探索者が立っていた。



「…………誰?」



知らない人たちだ。


先頭には、巨大な盾と全身鎧を身につけた大柄な男。

その隣には双剣を腰へ下げた細身の男。

さらに長い魔導杖を持ったローブ姿の女性と、白を基調とした装備の女性。


どこからどう見ても、タンク、アタッカー、魔導士、ヒーラー、という、教科書に載せても良さそうなくらいベタな四人パーティだった。


しかも四人の頭上には、一機の撮影用ドローンまで浮かんでいる。



(ちょ、ちょっとフラン!)


『にゃ?』


(誰か来ちゃったんだけど!?)


『……あ。撮影に集中しててミニマップ見るの忘れてたにゃ。メンゴメンゴにゃ』


(軽(か)っるぅ……)



さっきまで「プロデューサーとして撮れ高がどう」と偉そうに言っていた猫が、本業の索敵を忘れていた。



「ようやく追いついたぜ!!」



盾を持った男が勢いよくこちらへ指を向ける。



「俺たちは配信系A級探索者パーティ──"崩壊グラフィティ"!!」


「崩壊……?」



知らない。

全然知らない。



「噂のダイナマイト練馬が練馬第一ダンジョンに現れたって聞いてな!」



双剣の男がニカッと笑う。



「急いで追いかけてきたのさ!」


「さあ!!」



今度はローブ姿の女性がこちらへ身を乗り出した。



「江戸川朱里のピンチを救った謎の英雄! 今ネットで最も注目されている男! ぜひ我々"崩壊グラフィティ"とコラボ配信を!!」



撮影用ドローンのカメラが、こちらへグインと向けられた。



「えっ!? いや、あの……こ、困ります! 急に!」


「大丈夫大丈夫! 難しいことしないから!」


「一緒にちょっと喋って、軽くモンスター倒すだけ!」


「今なら絶対数字取れるって!」



怖い。

距離の詰め方が怖い。

陽の者の圧が凄い。

ナツミンさん達もそうだったが、嬉々として配信をする様な人種は、そもそも俺と相容れないのだ。



(フラン! どどどどうしよう!?)


『コイツら、たぶん地上でおみゃーの配信見て追いかけてきた連中にゃ』



フランだけは呑気だった。



『A級ってことは、生徒会の連中やバカ先輩よりずっと腕の立つベテラン探索者なんにゃろ。最短ルートを急いで降りてきて、ようやく追いついたってところにゃ』


(分析してないで助けてよ!)


『コラボしてやりゃいいにゃ』


(えぇ!?)


『A級の配信パーティなら、たぶんそれなりに有名にゃ。ダイナマイト練馬の知名度上げるために配信始めたんにゃから、むしろ都合いいにゃろ』


(いや、理屈ではそうだけど!)



分かる。分かるけど。



(俺にも心の準備ってものが……!)



見知らぬ配信者四人といきなりコラボ。

そんなの、つい数日前まで一般高校生だった俺には、ハードルが高すぎる。



「あの、まず自己紹介からでも──」



白い装備の女性が笑顔で一歩前へ出た。




──その時だった。




「…………え?」



俺は眉を寄せた。


彼女の足元。いや、"崩壊グラフィティ"四人の足元全体へ、淡い光が走っている。



(何だ……?)



複雑な幾何学模様。

何重にも重なる円。


見覚えがある魔法陣だった。



「おい、何だこれ?」


「私たちの誰かのスキル?」


「いや、違う……」


「えっ?」



四人も気づいた。



(……嫌な感じがする)



そう思った瞬間、意識が急激に研ぎ澄まされた。

周囲の動きがゆっくりになる。

高いINTによって知覚速度が跳ね上がり、世界そのものがスローモーションになったように感じられる。


そして──



(……っ!?)



俺の足元にも、同じ魔法陣が現れた。



「うわっ!!」



考えるより先に身体が動いた。

地面を蹴り、大きく後方へ飛ぶ。


俺が離れたあとも、魔法陣は元の場所に固定されたまま光り続け、やがて消えた。



(追ってはこない……!?)



次の瞬間。



「えっ?」


「あれ?」


「ちょ、これって──」



"崩壊グラフィティ"の四人を包む光が、一気に強くなった。



「待っ──」



声が途切れる。


シュンッ!!


四人の姿が消えた。



「…………」



誰もいなくなってしまった。


つい数秒前までA級探索者四人が立っていた場所に、光の粒だけが漂っている。



「…………え?」



俺は呆然と、その場所を見つめた。



「今の……転移魔法陣……?」



最下層のボス部屋にあるものとは違う。

誰かが踏んだわけでもない。


突然──本当に、突然。


何もない地面から勝手に現れた。



「いきなり……出てきた……?」



上空では、"崩壊グラフィティ"の撮影用ドローンだけが取り残されていた。


主人を失ったカメラが、何もない広場を映し続けている。



「…………」



さっきまで騒がしかった空気が、嘘のように静まり返った。


その時──

フランがスマートフォンを下ろした。


俺たちの配信画面が暗くなる。



『──ロミオ』



念話で呼ばれる。

いつもの軽い調子ではない。

「おみゃー」でもない。


俺はフランを見る。


アメリカンショートヘアの小さな身体。

だが、その翠の瞳からは完全にふざけた色が消えていた。



『予定変更にゃ』



フランは、四人が消えた場所をじっと見つめる。



『これは──マジの緊急事態にゃ』

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― 新着の感想 ―
>>やがて巨大な甲羅のそばへしゃがみ込み、慣れた手つきで素材の剥ぎ取りを始める。 つまり自動解体機能は主人公独自のスキルということです?(描写見落としだったらすみません)
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