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【25万PV感謝!】最強スキル【一撃必死】を授かったけど、一日五発撃たないと俺が死にます ~爆死回避のため、今日も現代ダンジョンに潜ります~  作者: 難波一@『真祖竜転生』発売中!
第四章 練馬区の先輩達

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52/65

第52話 UM戦:牧島丑雄vs. グランドタートル

練馬区第一ダンジョン、地下二十三階層。


巨大なリクガメ型ユニークモンスターと向かい合う牧島先輩を、俺とフランは広場の入口にある岩陰からこっそり見守っていた。


その頭上には、拳ほどの大きさをした黒い配信用ドローンが一機浮かんでいる。


ダンジョン配信用の通信チューナーを積んだタイプなのだろう。


カメラ部分を牧島先輩へ向けながら、一定の距離を保ってふわふわと追従している。



「おい、テメェらァ!!」



牧島先輩が突然、ドローンへ向かって拳を突き上げた。



「俺様の生き様、しっかり見とけやァ!!」



洞窟中へ響き渡る大声。

カメラの向こうで見てる視聴者に向けた檄だ。


巨大リクガメまで一瞬動きを止めた気がする。



(……牧島先輩も配信やってるんだ)


『そりゃやるにゃ』



フランが念話で返してくる。



『プロの専業探索者を目指してる学生なら、在学中から配信やってるヤツも珍しくねーにゃ。先に顔と名前を売っとけば、スポンサーも付きやすくなるし、卒業してからのスタートダッシュも全然違うにゃ』


(なるほど……)


『さっきの生徒会のヤツらは、一応学校の仕事中ってことで配信してなかっただけで、たぶんアイツらも普段はやってると思うにゃ』



言われてみれば、その通りだ。


探索者だって職業である以上、実力だけで全部が決まるわけではない。


企業から装備提供を受けたり、広告契約を結んだり、配信収益を得たり。


有名であること自体が、そのまま仕事に繋がる世界なのだろう。



(……相変わらず、人間社会のこと俺より詳しいな、この猫)


『聞こえてるにゃ』


(聞こえるように言ったからね)



そんなやり取りをしている間に、牧島先輩が両腕へ赤い魔力を集中させた。



「【赤腕百面相《ハンドレッド・レッドハンド》】!」



肩から先の腕の形が崩れ、赤い魔力の粒子へ変わる。


直後──

両腕が、複数の銃身を束ねた巨大なガトリングガンへ変形した。



「まずはブチ抜くッ!!」



銃口が一斉に火を噴く。


ダダダダダダダダダダッ!!


耳を塞ぎたくなるような轟音と共に、魔力弾の雨が巨大リクガメへ殺到した。


だが──



「ゴォォォォッ……!」



巨大リクガメは首を引っ込める。

続いて四肢。

尻尾まで完全に甲羅の中へ収納され、巨大な岩塊のような姿になった。


そこへ無数の魔力弾が着弾する。


カカカカカカカカンッ!!


火花が散る。だが、甲羅の表面が少しずつ削れていくものの、弾丸はほとんど弾き返されていた。



「チィッ!! 硬ェな……!」



牧島先輩が舌打ちする。

ガトリングを撃ち続けても、致命傷には到底届きそうにない。


すると巨大リクガメの甲羅が、不意に震え始めた。



「……ん?」



ゆっくりと、その場で回転する。


最初は大した速さではなかった。

だが一回転、二回転と加速し、やがて甲羅全体が輪郭すら霞むほど高速で回り始める。


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


地面を削りながら、巨大な甲羅が滑り出した。



(うわっ!?)



全長十メートル近い回転する岩盤が、そのまま牧島先輩へ突っ込んでいく。



(どっかのレースゲームで見たことある様な攻撃だな……)



ただしサイズが違いすぎる。


あんなものに轢かれたら、カートどころか人間なんて跡形も残らない。



「そんなモン、当たっかよォ!!」



牧島先輩が地面を蹴った。

横へ大きく跳び、巨大甲羅を紙一重で回避する。


回転するユニークモンスターはそのまま広場の壁へ激突した。


ドゴォォォンッ!!


魔晶石が砕け、岩の破片が飛び散る。

普通ならそこで止まりそうなものだが。


ゴゴゴゴゴ……!


甲羅は勢いをほとんど殺さなかった。


壁へぶつかった反動で軌道を変えると、今度は跳ね返るように牧島先輩の背後へ回り込む。



(後ろっ!!)



思わず岩陰から身を乗り出しかけた。

しかし──



『だから慌てんにゃ』



フランの声が飛んでくる。



(でも、あれ直撃したら……!)


『よく見ろにゃ。あのバカ先輩、何かする気にゃ』



言われて牧島先輩を見る。


いつの間にか、左腕だけが別の形へ変わっていた。


肘から先に巻き取り機構のような装置が現れ、その先端には鋭い三本爪のワイヤークローが取り付けられている。



「遅ェんだよ!!」



牧島先輩が左腕を天井へ向ける。


バシュンッ!!


ワイヤークローが射出された。

長い鋼線を引きながら一直線に飛び、天井から突き出した巨大な魔晶石へ食い込む。


ギャリリリリリッ!!


左腕のウィンチが高速で回転した。

ワイヤーが一気に巻き取られ、牧島先輩の身体が地面から跳ね上がる。



「うおおおおおッ!!」



凄い勢いで宙へ引っ張られ、直後。


回転する巨大甲羅が、その数メートル下を通過していった。



(すごっ……)



第二体育館での模擬戦でも見せていた動きだ。

壁や天井へ打ち込めば、自分自身を引っ張って三次元的に移動できる。


牧島先輩は天井付近まで上昇すると、今度は左腕のワイヤーを解除した。



「次はこいつだァ!!」



落下しながら右腕を変形させる。


巨大な筒状の装甲。

その中心から覗く、太い金属杭。



(パイルバンカー……!)



これも、模擬戦でも使おうとしてた武器だ。

使う前にフランの腹パンで気絶してたけど。


牧島先輩は身体を捻り、減速してきた巨大リクガメの甲羅目掛けて右腕を振り下ろした。



「喰らいやがれ、カメ公ォォォッ!!」



ドガァンッ!!


金属杭が撃ち出される。


凄まじい衝撃が甲羅全体へ伝わり、巨大リクガメの身体が地面へめり込んだ。



「ゴォォォォッ!!」



低い唸り声が響く。

だが──



「……なッ!?」



甲羅は割れていなかった。


表面には大きな亀裂こそ走っている。

しかし、パイルバンカーの一撃すら完全には貫通できていない。



(硬すぎない!?)



牧島先輩も予想外だったらしい。

わずかに目を見開く。


その瞬間──


甲羅の中から首と四肢が一斉に飛び出した。

続いて後方から、丸太のような太い尻尾が鞭のように振り抜かれる。


バゴォンッ!!



「ぐぉ……ッ!?」



牧島先輩の脇腹へ直撃した。



「が……ッ!!」



身体が吹き飛ぶ。

宙を十メートル近く飛ばされ、背中から洞窟の壁へ叩きつけられた。


ドガァンッ!!


壁面の岩が砕ける。



「牧島先輩……!」



思わず声が漏れそうになり、慌てて口を押さえた。



(あれ、さすがにヤバくない!?)


『……そうかもにゃ』



フランも今度は少し真面目な声になった。



『あのカメ、見た感じソロでやるならレベル二十三、四くらいは欲しい相手にゃ。バカ先輩は十八だったにゃろ?』


(えっ!?)


『相性も悪いにゃ。あの甲羅、物理攻撃に滅茶苦茶強ぇにゃ』


(じゃあマジで危ないじゃん!)



牧島先輩は壁際に倒れたまま、すぐには起き上がらない。


巨大リクガメは、ゆっくりとそちらへ身体を向け始めている。



(……しょうがない)



腹を括るしかない。


正体がバレる。

生徒会にまた面倒な説明をする羽目になる。

配信計画だって台無しになるかもしれない。


でも──



(だからって、目の前で死なれたら寝覚め悪すぎるし……!)



岩陰から飛び出そうと脚へ力を込めた。

その時。



「……おい」



牧島先輩が動いた。


片膝をつきながら立ち上がる。

口元から一筋の血を流し、それを親指で乱暴に拭った。



「テメェらァ!!」



ユニークモンスターではなく──

上空に浮かぶ配信用ドローンへ向かって、バッと手を伸ばした。



「まさかこの俺様が、このままくたばるとでも思ってんじゃあねェだろうなァ!? あァ!?」



大声が洞窟中へ響く。


牧島先輩は脇腹を押さえながら、それでもニヤリと牙を剥いた。



「俺様は……いずれ最強の探索者になる男だ!!」



巨大リクガメが地面を踏み鳴らす。

それでも牧島先輩は視線を逸らさない。



「こんなカメ公一匹、そこへ上がる踏み台の一段に過ぎねェ!!」



右手の親指で自分の胸を指す。



「テメェらは安心して、ポテチでも齧りながら見てやがれ!! 俺様が勝つところをよォ!!」


「…………」



何だろう。

……ヤバい。

ほんの少しだけ、凄いと思ってしまった。


もちろん無茶苦茶ではある。

普通なら逃げた方がいい。

というか本人のレベルを考えれば、間違いなく逃げるべきだ。


でも牧島先輩は、ただ死ぬ気で突っ込んでいるわけではない。


勝つ気だ。

最初から最後まで、徹頭徹尾。

自分が勝つ未来を、一度も疑っていない。



『へぇ~……』



フランが感心したように尻尾を揺らす。



『アイツ、意外と根性あるにゃ。ただのアホじゃねーのかもにゃ』


(……そうみたいだね)



俺たちがそんな会話をしている間に、牧島先輩は再び左腕をワイヤーアンカーへ変化させた。



「オラァァァッ!!」



バシュンッ!!


ワイヤークローが巨大リクガメへ向かって飛ぶ。


しかし──


巨大リクガメは今度は甲羅へ閉じこもらず、四肢を伸ばしたまま身体を持ち上げた。


ワイヤークローが前脚へ届く寸前、脚をひょいと持ち上げる。



(外した!?)



クローは脚の下をすり抜けていった。



『いや』



フランが目を細める。



『何か狙ってるにゃ』



その言葉通りだった。


ワイヤークローは巨大リクガメの股下を通過し、そのさらに奥。

地面から斜めに突き出していた巨大な魔晶石へ突き刺さる。


ガキィンッ!!



「へっ……!」



牧島先輩が笑った。



「そう来ると思ったぜェ!!」



ウィンチが唸る。


ギャリリリリリッ!!


ワイヤーが巻き取られ、牧島先輩の身体が前方へ勢いよく引っ張られた。


立ったままではない。

ほとんど地面へ寝そべるようなスライディングの姿勢で、そのまま砂煙を上げながら高速で滑っていく。


ザザザザザァァァッ!!


巨大リクガメの真正面。前脚の間。

そのまま首元の下へ滑り込む。



(そういうことか……!)



甲羅が硬い。

上から壊せない。

なら──



「甲羅が硬ェならよォ!!」



牧島先輩の右腕が、再び巨大なパイルバンカーへ変形する。


巨大リクガメが首を伸ばす。

目の前へ滑り込んできた人間を噛み砕こうと、大口を開いた。


その無防備な首元へ──



「柔らけェところをブチ抜きゃいいだけだろうがァ!!」



パイルバンカーの先端が突きつけられる。



「『暴君杭打機(ランページ・ステーク)』ッ!!」



ドヴンッ!!


腹の底まで震えるような轟音が響いた。

金属杭が撃ち出される。


首の下側から突き刺さり、そのまま硬い肉と骨をまとめて貫通した。



「ゴォ……ッ!?」



巨大リクガメの首が大きく仰け反る。

衝撃に耐えきれず、頭部が根元から弾け飛んだ。


巨体から離れた頭が血飛沫を引きながら宙を舞い、数メートル離れた地面へ転がる。


そのまま──


ズズズズズ……。


頭を失った巨体が傾いていく。


ズゥゥゥンッ!!


地響きと共に、大量の埃が広場いっぱいに舞い上がった。


その下──巨大リクガメの腹の下から、牧島先輩が勢いよく滑り出してくる。


ザザァァァッ!!


そのまま立ち上がり、両腕を元の姿へ戻す。


そして、背後で倒れ伏すユニークモンスターなど、最初から勝って当然だったとでも言うように──


上空のドローンへビシッと人差し指を突きつけた。



「見たかテメェらァァァ!!」



牙を剥き、胸を張る。



「これが……牧島丑雄(まきしまうしお)様じゃアアァァァァァッ!!」



反響した絶叫が、洞窟の奥まで消えていった。



「…………」



俺はしばらく何も言えなかった。

隣ではフランが、呆れたような感心したような顔で牧島先輩を見ている。



『……すげーにゃ、アイツ』


(……うん)


『すげーアホにゃ』


(そこは俺も否定できない)



強い。

それは認める。

戦い方も、思っていたよりずっと頭を使っていた。


遠距離ではガトリング。

移動にはワイヤー。

接近戦ではパイルバンカー。


敵の性質を見ながら、その場で攻め方まで変えている。


あれだけ何でも一人でこなせるなら、確かに単独で二十三階まで潜ってこられたのも納得できる。



(でも……)



ボロボロになるまで一人で潜って、

格上のユニークモンスターに遭遇して、

逃げるどころか笑って挑み、

負けそうになってもなお、視聴者へ「安心して見てろ」と言い切って勝つ。


やっぱり無茶苦茶だ。

俺とは真逆の人間。


たぶん牧島先輩は、この先も一生俺の理解から一番遠い種類の人間だと思う。


それでも──



「…………ふっ」



思わず、小さく笑ってしまった。


まあ……少なくとも。

今の牧島先輩を見て──



(カッコ悪いとは、思わなかったかな)



本人に言ったら確実に調子に乗りそうなので、絶対に口に出すことは今後もないだろうけど。

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